Deep Interview
玉木雄一郎、熱弁75分。手取りを増やす「4つの経済政策」
(45)
7,690回視聴
2024年11月2日

総選挙で躍進し、キャスティングボートを握った国民民主党。「手取りを増やす」ためにどんな経済政策を考えているのか?基礎控除の引き上げは、財源も含めて現実的なのか?手取りを増やす「4つの経済政策」を玉木雄一郎代表に詳しく語ってもらった。 <ゲスト> 玉木雄一郎|国民民主党代表/衆議院議員 1969年香...
国民民主党が掲げる「手取りを増やす」経済政策とは?玉木代表が基礎控除引き上げの意味を解説
国民民主党の玉木雄一郎代表に、同党が掲げる経済政策について詳しく聞いた。とりわけ注目を集める「基礎控除の引き上げ」については、若者や現役世代の手取りを増やし経済循環を促進するという狙いがあるという。また、教育への投資についても独自の見解を示した。

Q. 「ハングパラメント」と呼ばれる今の国会状況は日本政治にどんな変化をもたらすのか
ハングパラメント(どの党も過半数を取れない状態)は、比例代表制を採用するヨーロッパでは一般的な現象です。多様な民意を受け止めて合意形成していく必要があります。
これまでの日本では、自民党と公明党の承認さえあれば法案が通る状況でした。そのため、事前審査が重視され、国会審議は形骸化する傾向がありました。しかし今回、与党が単独で過半数を取れなかったことで、より多様な意見を聞くことが求められるようになっています。
この変化は与党だけでなく野党にも責任をもたらしています。単に反対するだけでなく、建設的な議論への参加や提案を出していくことが大切になっています。国民民主党が「対決より解決」「政策本位」を掲げて議席を4倍に増やせたのは、このような政治姿勢を選んだ有権者がいるからです。
特に20代、30代の若者からの支持が大きく、自民党を超えて1位になったこともあります。これは若者の不安の現れでもあり、現役世代や若者を重視する政治への期待の表れだと考えています。
Q. 「103万円の壁」を178万円に引き上げる政策の意図は何か
基礎控除の引き上げは、単に「壁」を上げるだけの政策ではありません。そもそも基礎控除は「健康で文化的な最低限の暮らしを保障する」という憲法25条の理念に基づいています。生きるために必要な最低限の所得には税金をかけないという考え方です。
1995年までは物価上昇に合わせて基礎控除も引き上げられてきましたが、デフレの時代になってからは30年近く凍結されたままです。いま物価も賃金も上がり始め、株価も4万円を超えるなど経済環境が変化している中で、この凍結された基礎控除を見直す提案は極めて合理的です。
アメリカやオーストラリアでは、インフレ調整として基礎控除を定期的に見直していますが、日本はそれをしていません。その結果、いくら賃上げしても手元に残るお金が減り、実質所得が減少する事態が起きています。
高所得者に有利という批判もありますが、実際には所得に占める減税比率は低所得者の方が大きくなります。例えば年収200万円の人は8.6万円(4.5%)の減税、1000万円の人は22万円(2.2%)の減税になります。今非課税の103万円の人は1.7倍の所得まで働けるようになるので、むしろ低所得者にとって意味が大きい政策です。
Q. 消費税の減税政策についてはどう考えているか
国民民主党は「物価上昇プラス2%の名目賃金上昇率」、つまり実質賃金が安定的にプラスになるまで、積極財政と金融緩和を行うという経済政策の柱を掲げています。
消費税については「実質賃金が持続的にプラスになるまで一律5%に減税し、インボイスも廃止する」という政策を提案しています。現在、実質賃金は6-7月にプラスになったものの、8月には再びマイナスになっています。もし今政権を担うことになれば、もう1年ほど消費税減税を行い、すべての品目を軽減税率の対象として5%にすることを考えています。
消費税の減税には「店頭価格の変更が大変」という反論もありますが、現在の消費税は法人税的な性質を持っており、納税義務者は事業者です。そのため店頭価格を変更せずとも、納税時の計算で税率を変更することは十分可能です。
この政策の財源については、短期的な経済政策として国債発行で対応することを想定しています。ただし、経済状況を見ながら判断する必要があると考えています。
Q. 金融政策についてはどのような考えか
金融政策の目標として大切なのは、何のために金融政策を行うのかという点です。日本銀行と政府の間で2%のインフレ目標が共有されていますが、重要なのは単なる物価上昇ではなく、国民の暮らしの向上です。
国民民主党が政策目標として掲げているのは「物価上昇プラス2%の名目賃金上昇率」です。アメリカの中央銀行FRBは物価安定に加えて「雇用の最大化」という二重の目的を持っていますが、日本の場合は雇用ではなく「名目賃金上昇率」を政策目標に置くべきだと考えています。
例えば現在2.6%程度の物価上昇なら、4.6%程度の安定的な名目賃金上昇率が達成されれば、特別な経済刺激策は不要になります。大企業では5%を超える賃上げが実現していますが、中小企業ではまだ4.4〜4.5%程度であり、目標には届いていません。
そのため、金融政策は慎重に変更していくべきです。特に為替相場は一国だけでコントロールできるものではなく、日銀だけに責任を押し付けるのは適切ではありません。労働組合や企業など、それぞれの立場で責任を果たし、日本経済を次のステージに押し上げていく必要があります。
Q. 教育への投資をどのように考えているか
教育は投資であり、必ずリターンがあります。例えば、子どもが一人生まれて良い教育を受ければ、将来的に国に1億円以上の税収をもたらす可能性があります。そのために5000万円使っても十分ペイするし、1億円使っても回収できます。
教育投資の方法として重視しているのは「需要側の支援」です。大学までの全ての段階で無償化するという考え方には反対です。特に高等教育については、質を担保するためにも、供給側(大学等)ではなく需要側(学生)を支援する方が効果的です。
具体的には、所得制限のない給付型奨学金の拡充や、卒業後の返済免除制度の充実などを考えています。また、大学に進学しない若者に対しては「若者免税」として30歳以下の所得税・住民税免除なども検討しています。
教育の質を高める取り組みも重要です。例えば、全国から最も上手に教える先生を選び、その授業を動画撮影してオンラインで共有するという方法が考えられます。これにより不登校の子どもも学習できますし、AIを活用して個別最適な学習支援も可能になります。中国ではすでに同様の取り組みが成果を上げています。
教育投資のための財源として、「教育国債」の発行も検討しています。財政法4条の公債発行対象経費として、教育や子育て、科学技術といった分野への投資を正面から認めるべきです。これは将来への投資であり、高齢者世代にも協力してもらうことで世代間の支え合いにもつながります。
Q. 社会保険料の軽減についてはどのような提案か
現在の社会保険制度では、現役世代の保険料の半分以上が自分たちの医療費ではなく、後期高齢者医療制度への拠出金として使われています。この構造は持続可能とは言えません。
保険の本来の考え方は、様々なリスクを持つ人々が集まってリスクを分散することですが、後期高齢者医療制度は高リスク者だけを集めた制度となっています。そのため、公費(税金)の投入を増やし、社会保険料の負担を減らす方向に転換すべきです。
また、年齢ではなく負担能力に応じた負担のあり方に変えていくことも重要です。現在75歳以上の窓口負担は原則1割ですが、これを原則2割にし、現役並みの所得がある方は3割負担にするべきです。その際、年金や就労所得だけでなく金融所得や金融資産も考慮して負担能力を判断することが望ましいです。
財源については、消費税か資産課税が考えられます。所得課税は基本的に現役世代が負担するため適切ではありません。資産課税については、例えば個人金融資産2000兆円に0.5%課税すれば10兆円の財源が生まれます。
日本はストック(資産)が豊かで、特に65歳以上の高齢者に金融資産の半分以上が集中しています。「動的減税、静的増税」の考え方で、消費や投資などのフローには減税で応援し、動かずに溜まっているストックには適切に課税していく方向性が考えられます。