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政党から読み解く世界のニュース
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2024年11月1日

2024年米大統領選はどうなるのか。どのような影響があるのか。それを読み解くために知っておきたい「政党」の知識。共和党と民主党の違いは何なのか?リベラルと保守は何が違うのか?元外交官で著述家の山中俊之氏に話を聞いた。 <ゲスト> 山中 俊之/元外交官・著述家 1968年兵庫県生まれ。東京大学法学部...
政党理解のカギ:アメリカ大統領選を読み解く
「政党の違いを理解することで、世界情勢とビジネスの関係がより鮮明に見えてくる」
複雑化する世界情勢において、政党を理解することはニュースを深く読み解く上で非常に重要です。特に2024年は世界中で重要な選挙が行われ、政治関連のニュースが絶えません。その中でも特に注目すべきはアメリカ大統領選挙です。この記事では、元外交官の山中俊之氏に政党の見方と今回のアメリカ大統領選についてお聞きしました。

Q. 政党を理解する上で重要な指標は何ですか?
政党を読み解く上で重要な指標が2つあります。1つ目は「大きな政府か小さな政府か」という軸です。これは政府がどれだけ予算を使って経済活動に介入するか、あるいは規制を少なくして自由度を高めるかという違いです。2つ目は「国際協調か自己中心的か」という軸です。どの国も基本的には自国の利益を優先しますが、世界情勢も見て国際社会に貢献しようとする政党と、自国第一を全面に出す政党では大きな違いがあります。
これらの指標を組み合わせると、大きな政府で国際協調的な場合は「リベラル」、小さい政府で自国中心的な場合は「保守」という分類になりますが、実際には重なる部分も多くあります。例えば日本の自民党はこの両方を網羅するような大きな政党となっています。そのため政権交代が起きにくいという側面もあるのです。
Q. なぜ今、政党に着目すべきなのでしょうか?
近年注目されている地政学は、地理と政治を結びつけて考える学問ですが、そこには国民の様々な考え方や経済格差、宗教、地域ごとの文化の違いといった細かな要素が見えにくくなることがあります。地政学では主に「国」が主体となりますが、国は一言で語れるほど単純ではありません。
政権と国民は異なり、政権内部にも様々な考え方があります。国民の意見はさらに多様です。これらを一つ一つ分析することは難しいですが、政党という視点で見ることで、ある程度整理することができます。政党は政治的考え方や特定の階層、宗教、地域などを体現しているからです。
ビジネスの観点からも重要です。例えば脱炭素政策は政党によって考え方が大きく異なり、ビジネスにも大きな影響があります。ヨーロッパやアメリカで脱炭素を強く推進する政党が強くなれば、現地でのビジネスのやり方も変わってきます。
Q. 政党を考える上での前提知識は何ですか?
政党とは、同じ政治的考え方を持つ集まりであり、議会や大統領選挙などを通じて政権を目指すものです。単なる市民活動や政治に関心のある学者のグループではなく、自分たちが政治家となって政権を目指す点が重要です。
また、政党は基本的に国家機関ではないため、法律や憲法の規制をある程度受けますが、自由度も高いという特徴があります。例えば日本の自民党総裁選挙は公職選挙法の対象外であり、党内のルールで決まります。
政党を考える際の重要な前提として「民主主義」があります。民主主義の対極にあるのは「権威主義」ですが、その境界は曖昧で、形式的に選挙を行っていても実質的に権威主義である国も少なくありません。民主主義の中にも様々なレベルがあり、誰でも立候補でき、当選した場合に実際に政権を取れる国は意外と多くないのが現状です。
Q. アメリカの政党はどのような特徴がありますか?
アメリカの民主党と共和党は、メディアなどで伝えられるほど極端に異なるわけではありません。外交問題などでは共通点も多く、例えば冷戦時代はソ連に対して、現在は中国に対して両党とも厳しい態度を取っています。ヨーロッパのように社会主義や共産主義を掲げる政党が議会で大きな勢力を持つこともありません。
しかし、民主党はダイバーシティや人権問題、中絶の権利などについてリベラルな立場を取る傾向があります。一方の共和党、特にトランプ支持者は自国中心主義を前面に出し、伝統的な共和党よりも白人労働者層への訴求が強いという特徴があります。
アメリカの政党の変化は歴史的にも見られます。例えば、現在は民主党がリベラル、共和党が保守というイメージですが、フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策以前は逆でした。奴隷制廃止を推進したリンカーン大統領は共和党であり, 当時は人種問題に積極的だったのは共和党、そうでなかったのが民主党だったのです。
Q. アメリカ大統領選挙はどのような流れで行われますか?
アメリカ大統領選挙は4年に1回行われます。1月には各州で予備選挙や党員集会が行われ、夏頃には全国大会で正式に候補者が決定します。日本の自民党総裁選挙に近い形ですが、全国大会では候補者の家族もスピーチするなど、日本とは異なる点もあります。
11月には国民による投票が行われますが、直接大統領を選ぶわけではなく、各州に割り当てられた選挙人を選ぶ形になります。州ごとに選挙人の数が異なり、カリフォルニア州は55人、ワシントンDCは3人などと決まっています。多くの州では「勝者総取り方式」を採用しており、州で最も多くの票を獲得した候補者がその州の選挙人票を全て獲得します。
この仕組みのため、全国での得票数では負けていても選挙人票では勝つという「逆転現象」が起こることがあります。過去20年余りでも、ヒラリー・クリントンとアル・ゴアの2人がこの現象で敗北しています。世界の民主主義国の中で、最多得票者が当選しないという仕組みを持つのはアメリカだけという特徴があります。
Q. 今回のアメリカ大統領選の争点は何ですか?
今回の大統領選の主要争点の一つは移民問題です。トランプ氏は不法移民を厳しく取り締まり、送還すべきだと主張しています。一方、ハリス氏も不法移民には反対していますが、相対的には緩やかな姿勢と見られています。テキサス州などの国境地域では、不法移民をニューヨークなど他の州に送り出す動きもあり、大きな社会問題となっています。
もう一つの重要な争点はイスラエル問題です。アメリカは歴史的にイスラエルとの関係が非常に近く、国際紛争でもイスラエルを支持してきました。この背景には、アメリカの政治世界におけるユダヤ系アメリカ人の影響力や、ホロコーストの歴史的影響があります。
特にトランプ政権時代には、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転するなど、イスラエル寄りの政策を強く打ち出しました。これには福音派と呼ばれるキリスト教プロテスタントの一派の影響が大きく、彼らは聖書の記述を重視し、パレスチナの地はユダヤ人のものだという考え方を持っています。バイデン政権もイスラエルを支持していますが、最近のガザ情勢を受けて、特にアラブ系アメリカ人の間でハリス氏への支持が低下する可能性もあります。
Q. 今回の大統領選の行方は?
トランプ氏が予想以上に強い勢いを見せています。もしトランプ氏が当選した場合、世界に大きな影響を与えるでしょう。トランプ氏はビジネスパーソンとしてのディール(取引)を重視する傾向があり、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席とも何らかの取引をする可能性があります。
一方、ハリス氏が当選した場合、基本的にはバイデン政権の政策を継続すると予想されます。ただし、彼女がインド系アメリカ人であることから、インドとの関係が強化される可能性もあり、世界最大の人口国と経済大国の関係に変化が生じるかもしれません。