ECONOMICS101
前編:日本経済が直面するリスク
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2024年10月26日

世界情勢が大きく動く中、日本経済はどのようなリスクに直面する可能性があるのか。エコノミストのエミン・ユルマズ氏と永濱利廣氏に、日本経済の展望を聞いた。 <ゲスト> エミン・ユルマズ|エコノミスト トルコ・イスタンブール出身。16歳で国際生物学オリンピックの世界チャンピオンに。1997年に日本に留学...
【Q&A】世界インフレはどうなる?エコノミスト対談「円安」の真相と今後の見通し
日本経済が直面するリスクについて、専門家が語る「世界インフレ」「エブリシングバブル崩壊」「アメリカ新大統領と第三次世界大戦」。特に気になる円安の真相とは?

Q. 世界インフレの現状はどうなっていますか?
世界インフレは、コロナ禍とそれに続くロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされました。ロシアとウクライナは重要な資源・穀物の供給国であり、戦争による経済制裁の発動で食料・エネルギー価格が上昇し、世界的なインフレが発生しました。
これに対して各国の中央銀行が急速な利上げを実施し、原油価格も少し落ち着いてきたことから、インフレ率は以前に比べて落ち着きを見せています。そのため、各国は現在、利下げサイクルに入り始めています。
しかし、今後の展開次第では再びインフレがぶり返すリスクも否定できません。特に最近の懸念点として、アメリカが0.5%利下げした後に、矛盾するように長期金利が0.5%上昇している状況があります。これは長期的な期待インフレ率が高くなっていることを示しています。
Q. 利上げと円安の関係はどうなっていますか?
利上げと円安は密接に関連しています。2022年初めには1ドル110円程度でしたが、ロシアのウクライナ侵攻により各国が利上げ期待を強めたことで円安が進行しました。
為替レートには金利差による短期的な影響と、貿易収支などの実需による影響があります。現在の円安圧力として最も大きいのは、日本から海外への直接投資の増加です。ロシアのウクライナ侵攻直後は実需の要因が説明力を持っていましたが、最近は短期的な動きの影響が大きくなっています。
一部の見方では、日本は意図的に「隠れ切り下げ」を行い、1ドル150円程度を新たな基準にしているのではないかという意見もあります。これには製造業の競争力向上という狙いがあり、また世界最大の債権国である日本は円安によって含み益を出しています。
Q. 円安は日本経済にどのような影響を与えていますか?
アメリカのインフレが落ち着かないことで金利が下がりにくく、金利差を通じて円安が進行しています。円安には良い面と悪い面があり、行き過ぎると庶民の生活を圧迫する側面があります。
一方で、円安には製造業の競争力向上という恩恵もあります。また、日本企業や年金機関は為替差益で多くの含み益を出しています。もしこの利益が国内に再投資される形で還元されれば、経済に良い影響をもたらす可能性があります。
さらに、経済安全保障の観点から見ると、アメリカは中国を排除して新しいサプライチェーンを再構築しようとしています。台湾有事のリスクなども考慮すると、アメリカも同盟国である日本に生産拠点を移すことを推奨したい面があり、円安を容認している側面もあるのです。
Q. アメリカの財政赤字の拡大は世界経済にどのような影響を与えますか?
アメリカの債務拡大により、ドルの信用が低下しています。これは金の価格上昇からも見て取れます。ロシアとウクライナの戦争をきっかけに、BRICS諸国を中心にドルの代替やアメリカの決済システムに代わるものの模索も始まっています。
すぐにドルの覇権が揺らぐことはないものの、いずれ影響が出てくる可能性があります。日本はアメリカの債券を最も多く保有する国であり、ドルの価値下落は懸念材料です。しかし、日本円の価値保証もアメリカ国債に支えられている面があり、通貨全体が紙幣化していく過程にあるとも言えます。
これはコロナ禍が「小さな政府」という発想を壊してしまったことも一因です。パンデミックは一種の戦争のようなもので、ワクチン供給や給付金配布など、大きな政府の必要性を示しました。しかし、政府の無駄遣いも多く、財政規律を回復させる必要があります。
Q. 今後の円安はどのような推移をたどると予想されますか?
円安の見通しは、アメリカの大統領選の結果によっても変わってきます。トランプ候補ならインフレ加速的、ハリス候補ならインフレ抑制的になる可能性があります。
ハリス候補が当選し、インフレ抑制的に進み、アメリカが緩やかに利下げをしていくシナリオなら、日銀も再来年にかけて半年おきくらいに利上げをして1%程度にすると予想されます。その場合、再来年頃には1ドル130円が中心レンジになると見られています。
しかし、1ドル100〜110円という水準には戻らないという見方が強いです。これは「水準訂正」が起きており、製造業にとっては140〜150円が居心地の良い水準だからです。望ましいのは、円安を利用して日本に生産拠点が戻り、日本が再び貿易黒字国になって「良い意味での円高」に向かうことでしょう。
Q. 2%のインフレ目標について世界的な考え方はどうなっていますか?
2%のインフレ目標は先進国の標準となっていますが、理屈上は「完全雇用のもとでの最低のインフレ率」が望ましいとされています。これは働きたい人が皆働け、需要不足が完全に解消している状態です。
これ以上経済を刺激すると、失業率は下がらず物価だけが上昇してしまいます。しかし、本当に2%が適切かどうかは議論の余地があり、実証されているわけではありません。
円安の影響に加え、海外のインフレ率が高いため輸入品の値上げも重なり、国民が感じる実感インフレ率は14〜15%程度と非常に高くなっています。これが選挙での争点にもなっています。
経済学はエグザクトサイエンス(厳密な科学)ではなく、状況に応じて試行錯誤しながら進めていくものです。特に財政政策の概念自体も歴史的に見れば新しいものです。政治家は増税や財政規律の強化を行うと不人気になるため、ばらまきを選びがちですが、それがインフレという形で問題になっています。