KUROFUNE
アジア版NATOをアメリカは許さない
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2024年10月24日

日本に住む外国人が、 「ニッポン」の文化や経済をテーマに議論。 今回のテーマは「日米新リーダー」 <ゲスト> 三牧聖子|国際政治学者/同志社大学大学院 准教授 東京大学大学院で博士号取得後、 イェール大学や早稲田大学、 ハーバード大学など 国内外さまざまな大学でアメリカ政治外交や国際関係を専門に研...
「石破さんは防衛にはオタク、リーダーとしてはまだまだ」〜専門家が語る日米リーダーシップの課題
日本では石破茂新総裁が誕生し、アメリカでは大統領選挙が迫っている。日米両国の新しいリーダーシップに関する専門家の見解を、わかりやすく質問形式でまとめた。

Q. 石破氏の「アジア版NATO」発言について、国際社会はどう反応したのか?
A. アジア版NATOという構想は、インドをはじめ多くの国から批判を受けている。同志社大学准教授の三牧聖子氏によれば、「インドは戦略的自立性を大事にしているため、いきなりアジア版NATOと言われても反発する」という。また東南アジア諸国も中国とアメリカの間で繊細なバランスを取っているため、このような踏み絵を踏ませるような外交アイデアに衝撃を持っている。
経済アナリストのジョセフ・クラフト氏は「一政治家の思想としては良いが、一国の総理がこういう思想を総裁選直前に出すのは問題がある」と指摘。また、ドイツ出身エコノミストのイェスパー・コール氏も「全く根回しをしていない。これはリーダーらしくない」と批判している。
Q. 石破氏の防衛政策と外交はどう評価されている?
A. 石破氏は防衛が強いと言われているが、三牧氏によれば「防衛に強い石破とよく言うが、実はオタクであり、リーダーとしてはまだまだ」という評価だ。また「10年前から進められてきたクアッド(日米豪印の枠組み)が現実的な外交、防衛戦略である」と指摘する。
クラフト氏は「アメリカの反応は歓迎よりは警戒」と述べ、「まず日本として集団的自衛権ができるのかというところから始めるべき」と提言。また石破氏の気候文(ハドソン研究所に掲載された文書)について「中国を排除するものではないと言いながら、実際には中国を排除している」と矛盾を指摘した。
Q. 石破内閣の経済政策はどうなっていくのか?
A. イェスパー氏は「石破本人よりTEAM石破が作り上げてから前向きに行くだろう」と述べ、「加藤勝信財務大臣がしっかりした人なので、経済政策のボラティリティに対してはあまり心配していない」と語る。
一方、クラフト氏は「海外投資家は困惑している」と指摘。「総裁選の時には金融所得課税や法人税引き上げを主張していたが、今は全くない。アベノミクスを否定するとも継続するとも言っている」と批判した。さらに「日銀総裁は正常化を進めると発言した後に、石破氏が利上げする環境ではないと否定し、マーケットが4円も円安に動いた」ことに触れ、政府と日銀の混乱を懸念している。
Q. アメリカ大統領選挙の情勢はどうなっているか?
A. 三牧氏によると「現在、大接戦」となっている。「ハリス氏は8月に正式に民主党候補になり、その後支持率が上がったが、経済と不法移民対策という有権者の二大関心事では一貫してトランプ氏が信頼されている」という。
特に注目すべきは、民主党の支持基盤である黒人票やヒスパニック票の変化だ。「民主党にとって黒人票は岩盤と言われてきたが、無視できない割合でトランプ支持も出ている。特に黒人男性にその傾向が見られる」と三牧氏は指摘する。
Q. トランプ支持が広がっている理由は?
A. イェスパー氏は「アイデンティティポリティクス(共通するアイデンティティを持つ人々が政治的に結束すること)が男性から反感を買っている」と分析。三牧氏も「Z世代(若年層)男性がリパブリカン(共和党)支持なのは、女性の社会進出は男性の犠牲になってしまうと考える子が多い」と説明する。
また、クラフト氏は「民主党は黒人のために、生活のために具体的に語ってくれない」と述べ、「アメリカでもっとも失業率が高いグループは黒人男性。この不満がトランプに向かっている」と分析している。
Q. 中東情勢は選挙にどう影響するか?
A. 三牧氏によれば「中東情勢が緊迫するなか、ハリス氏にとってペンシルベニア州やミシガン州は落とせないが、アラブ系が怒っている」という状況だ。「バイデン政権はイスラエルに爆弾を送り続けてきた一方、トランプは『自分だったら、こんな軍事行動をイスラエルに許さなかった』と主張している」と説明する。
また「2023年のギャラップの世論調査で、ここ20年くらいで初めて民主党支持者の中でパレスチナ支持者が上回った」と指摘。「ハリスはガザの問題を玉虫色にして乗り切りたかったが、レバノンにも軍事行動が拡大し、中東問題が避けられなくなっている」と分析している。
Q. 大統領選の結果は経済にどう影響するか?
A. イェスパー氏は「トランプになるとやはり保護主義が強まる。大幅関税が対中国だけでなく対ヨーロッパ、対日本にも及ぶリスクが高い」と懸念する。「そうするとアメリカ国内のインフレが復活し、FRB(連邦準備制度理事会)は利下げできなくなる。トランプになるとウォールストリートは10%ダウンするリスクがある」と予測する。
円相場については、クラフト氏が「トランプになれば年末には175円、ハリスになったら145円」と予測。また「議会がねじれると大きな経済政策は打てないので低迷する不安がある」と述べている。