PIVOT TALK BUSINESS
ホワイトカラー消滅。サラリーマン階級の崩壊
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2024年10月23日

「AIの進化などにより、8割のホワイトカラーがいらなくなる」と語るIGPIグループ会長の冨山和彦氏。なぜホワイトカラーは消滅するのか?今後、なぜ現場人材、ローカル人材の需要が高まるのか?サラリーマン階級崩壊後の日本の姿を語る。 <ゲスト> 冨山和彦|経営共創基盤 IGPIグループ会長 1960年生...
Q. ホワイトカラーが消滅すると言われていますが、将来の仕事はどう変わるのでしょうか?
中間管理職がなくなる。平均的なホワイトカラーの仕事も置き換わる。営業もこれからなくなるだろう。会社のホワイトカラーデスクワーカー的な販売管理系の人件費は、ほとんど価値を生んでいない。

Q. AIの普及で、どのような職種が最も影響を受けますか?
AIの影響は大きい。特に管理職の仕事、サラリーマン全般のデスクワークは書類作成や決裁、調整業務が中心だが、これらはほぼAIが確実にこなせる。中間管理職の仕事も調整業務なので、ITの進化で必要性が減っている。日本だけが異常に中間管理職が多い国だ。
Q. 営業職も本当になくなるのでしょうか?
営業職が存在する理由は、情報の非対称性やコミュニケーションの非対称性を埋めるためだった。しかし現在はメールで直接やり取りできるし、顧客はネットで情報を調べられる。営業の説明は会社側に有利なバイアスがかかっているが、ユーザー情報が豊富な現代では不要だ。営業は値引きしてしまう傾向があり、むしろ価値を壊してしまうケースも少なくない。
Q. AIは顧客対応などの業務をどこまで代替できるのでしょうか?
AIはユーザークレームにも完璧に対応するようになる。AIは疲れを知らず、24時間働き続け、どんな面倒な質問にも淡々と答え続ける。人間的なつながりを求める意見もあるが、そうした関係を持ちたい相手は限られる。
Q. 将来生き残る仕事とは何でしょうか?
現場の仕事は必須だ。製造現場、お客さんとの接点でのメンテナンス、クレーム対応で現場に飛んでいく人たちは実際に価値を生み出している。一方、間接部門は半分に減らしても影響がないケースが多い。これが日本企業の大きな塊になっており、収益率が上がらない原因になっている。
Q. 現代の若者は既にこの変化に気づいているのでしょうか?
若い人は状況を理解している。医学部が人気なのは、将来的に現場仕事の時代が来ることを察知しているから。現場技能を持つ人が生き残る時代であり、万全とホワイトカラーが最も危ういことを多くの人が理解している。
Q. この変化は歴史的に見て何に似ていますか?
この状況は明治時代の武士消滅と似ている。当時、国の統治機構だった武家・武士が明治維新で一斉に「失業」した。当時の武士は人口の約10%を占めていたが、現在のホワイトカラーの割合に近い。武士たちは商人になったり、北海道に開拓に行ったり、勉強し直して近代的な軍隊の士官になったりと、それぞれに生きる道を見つけていった。まさにリスキリングを行ったのだ。
Q. 労働人口減少は雇用にどのような影響を与えますか?
労働人口減少はある意味救いになる。ホワイトカラーの仕事がなくなっても、日本には膨大な仕事がある。少子高齢化で生産年齢人口が激減する一方、高齢者は長生きするため、エッセンシャルワーカー(医療介護、観光、宿泊業、物流、運輸、建設など)が激烈に不足している。現場人材へのニーズは高まり、その結果として賃金も上昇している。
Q. 日本経済の構造はどう変化していくのでしょうか?
日本経済のGDPのうち、グローバル産業(グローバル金融機関、自動車、電気、素材など)が生み出しているのは全体の3割に過ぎない。残り7割はローカル産業(医療介護、宿泊、観光、物流運輸など)だ。先進国共通の傾向として、グローバル産業の比率は減少し続けている。人件費上昇や環境規制強化など、先進国はグローバル産業の立地として好ましくなくなり、新興国に生産拠点が移っていく。
Q. 将来の雇用はどこに生まれるのでしょうか?
雇用はローカル産業にシフトしていく。グローバル企業のホワイトカラーも今後ますます必要なくなる。経済の主役はローカル産業になり、雇用も圧倒的にこちらに移行する。半導体工場のような先端製造業は確かに先進国に立地する余地があるが、雇用をあまり生まない。現代の半導体工場は人間がほとんどいない自動化された施設だ。
Q. 日本の労働生産性を上げるためには何が必要ですか?
労働生産性向上が鍵だ。労働生産性とは「付加価値額÷労働投入量」で、1時間あたりどれだけ付加価値を生み出しているかを示す。付加価値額を上げるには、価格転嫁力(良い価格で売る)と差別化能力が重要。労働投入量を減らすには自動化や見える化(効率化)が必要。人口減少期に入り、大量生産・大量販売が必要なくなったことで、付加価値を上げるチャンスが生まれている。
Q. 「失われた30年」の間、日本企業はどのような選択をしてきたのでしょうか?
日本は企業の新陳代謝を抑えてきた。これには良い面と悪い面がある。産業構造をありのままにし、変化を止めることで、今ある働き方や技能が守られた。一方、グローバル化とデジタル化による産業構造の劇的な変化に対応できなかった。日本は安定を選び、成長はしなかったが大きな混乱も起きなかった。リーマンショック、東日本大震災、原発事故、コロナなどの危機も加わり、安定志向が強まった。
Q. これからの時代に必要な人材とは?
アドバンスト現場人材になるべきだ。例えば医師やパイロットなどは非デスクワーカーだが給料は高い。AIの時代には、AIを道具として使いこなせる人はより効率的に仕事ができる。AIと競争するのではなく、AIを道具として活用する。現場の仕事ではAIは代替というより補完的役割を果たすため、生産性向上と賃金上昇が期待できる。
Q. 今後の日本にとって希望はあるのでしょうか?
日本の状況は明るい。労働供給制約の経済になっており、これは生産的な強みになる。働き手が余っている時代に生産性を上げると失業が発生するが、人手不足の時代には失業問題が起きない。労働生産性を上げることで賃金も上がり、景気も良くなる。日本はよくも悪くも大量の移民を入れてこなかったため、労働不足が続き、賃金上昇と生産性向上の圧力が働く状況にある。