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最新分析・中国減速の深層
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2024年10月20日

2024年7〜9月期のGDPが5%を下回った中国経済。なぜ中国経済は減速しているのか?不動産市場に回復の芽はあるのか?今後の成長率はどう推移するのか?大阪経済大学の福本智之氏に分析してもらった。 <ゲスト> 福本智之|大阪経済大学経済学部教授 1989年京都大学法学部卒業、同年日本銀行入行。200...
「中国経済は弱い」〜消費は低迷、貯蓄率は上昇。日本のバブル崩壊後と類似点も

Q. 最新の中国経済の現状をどう捉えていますか?
中国経済は非常に弱い状況にある。最新のGDP統計を見ると、2024年第1四半期に5.3%、第2四半期に4.7%、第3四半期に4.6%と成長率は徐々に下がっている。実は第1四半期の5.3%という数字も課題評価の可能性があり、うるう年で1日多かったことを考慮すると、実態としては5%を下回っていたと考えられる。
特に6月頃から消費の弱さが一層顕著になっている。例えば6月18日のJD.comのオンラインセール日は例年盛り上がるイベントだが、今年は非常に振るわず、一部では「6.18ショック」とも呼ばれるほど消費が落ち込んだ。その後も7月以降、消費の弱さは続いている。
Q. 経済指標から見える特徴的な傾向はありますか?
消費の弱さが最も顕著だ。第2四半期には消費が大きく落ち込み、第3四半期も小売売上高の伸びは前年比3.2%増とさほど高くない。一方で生産の伸びは消費を上回っており、供給過剰の状態になっている。これが一部では「デフレの輸出」とも言われる状況を生み出している。
特徴的なのは地域別の消費格差だ。不動産価格の高い沿海部の大都市では消費が特に弱く、北京や上海では年初来累計の小売売上高が前年比でマイナスになっている。特に上海では6月、7月に-9%、-6%という大幅な落ち込みを記録した。一方、内陸部の湖北省や湖南省などでは5-6%の伸びを維持しており、地域差が顕著になっている。
Q. 消費が減少している理由は何でしょうか?
主な理由は住宅価格の下落と将来不安だ。特に北京や上海などの大都市では住宅価格が高く、個人の資産に占める住宅資産の割合が非常に高い。全国平均で住宅価格はピークから約3割下落しており、この資産価値の下落が消費に大きな影響を与えている。
また、所得の伸びも鈍化しており、前年比5.2%増にとどまっている。これはコロナ前の2019年の8.9%から明らかに低下している。さらに、家計調査によれば将来の収入に対する自信も低下しており、これが家計の消費を慎重にさせている。一部では賃下げも起きており、厳しい状況だ。
Q. 貯蓄率はどうなっていますか?
貯蓄は大幅に増えている。2019年から2021年までは年間約10兆元の増加だったが、2022年には18兆元に跳ね上がり、2023年もほぼ同水準で推移した。2024年も9月までに11.9兆元増加しており、年間では前年を上回るペースだ。
これは住宅資産価値の下落や所得の伸び悩みにより、人々が将来に備えて貯蓄に走っている結果だと考えられる。同時に企業の借入意欲も低下しており、貸出の伸びは昨年末の10.5%から足元では8%程度まで低下している。この状況は日本のバブル崩壊後の状況に似ている面がある。
Q. 若年層の失業問題はどうなっていますか?
16歳から24歳の若年層の失業率は2024年8月時点で18.8%と極めて高い水準にある。これは卒業シーズンの影響もあるが、産業構造のミスマッチも大きな要因だ。中国では大学および専門学校への進学率が約6割と日本並みに高いが、産業構造としてはまだ製造業が強く、ブルーカラー労働者が多い。そのため、ホワイトカラー志向の若者と労働市場にミスマッチが生じている。
また、プラットフォーマーや不動産企業など、従来大卒者の就職先だった業界が苦境に立たされており、さらに塾講師など代替的な就職先も規制強化で縮小している。現在の大卒者の就職率は約5割とも言われており、厳しい状況が続いている。
Q. 不動産市場の現状はどうなっていますか?
不動産市場は1年以上前から状況が変わらないどころか、さらに深刻化している。不動産販売面積は前年比2割弱の減少、不動産開発投資は約10%の減少、着工面積は2割以上の減少と、あらゆる指標が悪化している。
価格面では、新築価格よりも中古価格の方が実態を表すと言われているが、全国平均で見るとピークから15%程度下落している。ただし、民間の調査会社のデータによれば、実際には3割近く下落していると見られる。
不動産市場の見通しについても、現地のアナリストや業界関係者は今年も来年も回復は見込めず、早くても再来年に価格が底打ちすれば良いという見方をしている。しかし、その根拠も薄く、建設中の住宅在庫は約50億平方メートルあり、年間販売量が9.5億平方メートル程度であることを考えると、5年以上の在庫があることになる。
Q. なぜ中国政府は不動産問題に対して大胆な対策を取らないのですか?
中国政府は小規模な対策を徐々に打ち出してはいるものの、抜本的な解決策には至っていない。例えば、今年5月には完成済み在庫住宅を地方政府系国有企業に買い取らせ、保障性住宅(日本のUR賃貸住宅のようなもの)に転換する政策を発表した。
しかし、地方政府は債務拡大を懸念して慎重になっており、国有銀行も不良債権を増やさないよう慎重だ。不動産デベロッパーも安価での売却に抵抗している。結果として、中央銀行が提供した3000億元の資金のうち、6月までに実行されたのはわずか120億元に過ぎない。
このような対応の遅れには、日本のバブル崩壊後の対応と似た面がある。政府は需要喚起策(住宅ローン金利引き下げや頭金規制緩和など)で市場が自然回復することを期待し続けており、また不動産バブルを引き起こした企業への救済によるモラルハザードへの懸念もある。
Q. 中国経済の今後の見通しはどうでしょうか?
9月末から中国人民銀行をはじめとする金融当局が包括的な緩和策を打ち出し、政府の姿勢に変化が見られる。それまでは「古い経済の原動力から新しい経済の原動力への転換の陣痛期」として積極的な介入を避けていたが、経済の弱さが顕著になり、政策シフトが起きた。
しかし、今後の成長見通しは楽観できない。現在のベースラインシナリオでは、2028年頃に成長率が3.5%程度まで低下すると予想される。これはIMFの中期見通しとほぼ一致している。さらに、不動産市場の問題が解決されなければ、デフレが長期化し、さらに成長率が下振れするリスクもある。
Q. 中国経済の低迷は日本にとってどのような意味を持ちますか?
基本的には、最大貿易相手国である中国経済の低迷は日本にとってネガティブだ。日本の対中輸出比率は2割程度あり、また多くの製品を中国から輸入している。
一方で、安全保障上の懸念から生じているリショアリング(国内回帰)の動き、例えば台湾企業が半導体工場を日本に設置するといった動きはポジティブだ。また、投資資金が中国から日本に流れるという面もある。
こうした安全保障に関連するポジティブな動きは、中国経済の状況に関わらず続く可能性が高い。しかし全体としては、中国経済が大きく失速しないことが日本にとっても望ましい。