ECONOMICS101
金利の基礎知識(後編)
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2024年10月19日

銀行の預金金利や住宅ローンなど、日銀が行う政策金利の調整は、生活に直結している。しかし、金利には種類が多く、わかりづらい。SMBC日興証券のリーフマーケットエコノミストの丸山義正氏に話を聞いた。 <ゲスト> 丸山義正|SMBC 日興証券 チーフマーケットエコノミスト 1995年日本興業銀行(現みず...
「金利とインフレの関係」総まとめ〜デフレマインドはなぜ抜けないのか
金利とインフレは経済の重要な指標であり、両者の関係を理解することは経済動向を読み解く上で不可欠です。日本銀行の金融政策や私たちの生活への影響も大きいこれらの概念について、専門家の解説をもとに解説します。

Q. 金利とインフレの基本的な関係とは?
金利とインフレには密接な関係があります。金利が上がると住宅ローンなどの借入コストが上昇し、人々は住宅購入などの大きな買い物を控えるようになります。その結果、景気が悪化し、失業率が上昇することで、インフレ率は下がる傾向があります。
逆に、金利が下がると借入コストが減少するため住宅などが買いやすくなり、景気が良くなります。雇用が増え、失業率が下がることで、インフレ率は上昇する傾向があります。
この関係は直接的なものではなく、「金利→景気→インフレ」という経路を通じて影響します。日本銀行は景気とインフレのバランスを見ながら政策金利をコントロールしているのです。
Q. 日本銀行が2023年7月に政策金利を0.25%上げた理由は?
日本銀行には二つの大きな目標があります。一つは景気をある程度良好に維持すること、もう一つは物価上昇率(インフレ率)を2%程度に保つことです。
景気を良くするためには金利を低くして借り入れしやすくするのが有効ですが、景気が良くなりすぎるとインフレ率が目標以上に上昇してしまう恐れがあります。
2023年7月の利上げは、日本経済がある程度回復し、インフレ傾向が見られる中で、適切な金利水準に近づけるための調整だと考えられます。日本銀行は「程よい経済」と「程よいインフレ」のバランスをとるために、徐々に金利を正常化させようとしているのです。
Q. 「インフレでそこまで持続的には下がってないが、完全デフレ脱却はしていない」とはどういう意味?
この言葉は、現在の日本経済の微妙な状況を表しています。物価は確かに上昇していますが、それに見合った収入の増加がないため、持続的なインフレと言えない状況です。わかりやすく言えば、実質賃金がマイナスになっている状態です。
直近では実質賃金がプラスになった月もありますが、これが一時的なボーナスによるものなのか、持続的な傾向なのかはまだ判断できません。物価と賃金の好循環が確立されていない現状では、デフレではないものの、完全にデフレを脱却したとも言えないのです。
日本銀行が見ているのは、外的要因(為替やエネルギー価格など)による一時的なインフレではなく、国内需要に基づく持続的な2%程度のインフレです。その状態が実現し、賃金も適切に上昇する経済環境がまだ確立されていないということです。
Q. デフレマインドとは何か?なぜ日本ではそれが抜けないのか?
デフレマインドとは、物価が上昇しないことが当たり前と考える心理状態のことです。本来なら物価が上昇するなら「値上がりする前に買った方が得」と考えるはずですが、日本ではそうした行動があまり見られません。
企業側はすでにデフレマインドから抜け出し、積極的に値上げを行っていますが、消費者側はまだデフレマインドから完全に脱却できていません。これは日本が約20年もの長期にわたってデフレを経験してきたことが大きな要因です。
デフレが長く続くと、企業は値上げに慎重になり、消費者も「待てば値下がりする」と考えるようになります。日本企業は「企業努力」という名のもとに値上げを避け、その分を人件費抑制などで吸収してきましたが、最近の人手不足で人件費抑制が難しくなり、値上げせざるを得なくなってきました。
Q. 日本が金利をあまり上げてこなかったことがデフレの原因なのか?
いいえ、むしろ逆です。日本がバブル崩壊後に金融緩和(金利引き下げ)を遅らせたことがデフレを引き起こした可能性が高いとされています。
バブル崩壊(1989年末の日経平均株価のピーク)から日本が0%金利政策を導入するまで9年もかかりました。その間にデフレが定着してしまったのです。
対照的に、アメリカはリーマンショック後、すぐに金利をゼロまで下げ、さらに量的緩和政策(中央銀行が市場から金融商品を購入してマネーを供給する政策)も実施しました。これは「日本のようにデフレになると取り返しがつかない」という教訓からでした。
Q. なぜアメリカと日本では金利政策の「動きの大きさ」が違うのか?
アメリカではインフレ率が大きく変動するため、それに対応して金利政策も大きく動かす必要があります。実際、アメリカのインフレ率は一時8%を超えるほど上昇し、それに対応するために政策金利を5%程度まで引き上げました。その結果、現在はインフレ率が2%台まで低下しています。
一方、日本ではデフレ経験が長く、企業が値上げに慎重なため、インフレ率の変動が小さい傾向があります。そのため、金利政策も小幅な調整にとどまっています。
また、消費者マインドの違いも大きいです。アメリカではインフレを経験していない分、物価上昇時には「値上がりする前に買おう」という行動が自然に起きますが、日本ではそうした反応が鈍い状況です。
Q. 今後の日本の金利政策で注目すべきポイントは?
今後の日本の金利政策では、10月の日銀金融政策決定会合が重要です。特に「展望レポート」で日銀がアメリカ経済をどう評価するかが注目点となります。
日本の長期金利は海外、特にアメリカの金利動向に影響されます。実際、日本が利上げをしても長期金利が下がる場面があるのは、アメリカの利下げ期待による米国債金利の低下が影響しているためです。
上田日銀総裁もアメリカ経済のソフトランディング(景気の軟着陸)を最大の注目点としており、日銀の政策は日本経済だけでなく、アメリカ経済の動向にも左右される可能性が高いです。
アメリカ経済が想定外の動きをすれば、日本の金融政策も計画通りに進まない可能性があります。そのため、アメリカの経済指標(特に雇用統計)も重要な注目ポイントとなるでしょう。
Q. 金利を理解する上での基本的なポイントは?
金利を理解する基本は「中央銀行が決める政策金利が基準になる」ということです。預金金利や住宅ローン金利など私たちの身近な金利は、この政策金利を基に決まってきます。
また、金利は「今のお金と将来のお金のどちらを重視するか」という人々の心理とも関係しています。将来のお金を重視する人が多ければ金利は上がりにくく、今のお金を重視する人が多ければ金利は上がりやすい傾向があります。
現在の日本では多くの人が「今よりも将来のお金の方が大事」と考えているため、アメリカほど金利が上がりにくい状況にあります。これは日本人の貯蓄志向や将来不安の表れとも言えるでしょう。
現在の日本は、企業側はデフレマインドから抜け出し、物価と賃金の好循環が始まるかどうかの瀬戸際にあります。この動向が今後の日本経済と金利政策の行方を左右するでしょう。