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丸紅 柿木社長に聞く、株価・収益はまだ上がるか?
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2024年10月18日

2019年度は海外事業投資の減損から過去最大の赤字となった。だが、丸紅はそこからV字回復を果たした。2019年に社長に就任してからの具体的な取り組みと、今後の展望を丸紅の柿木社長に聞いた。 <ゲスト> 柿木真澄|丸紅社長 1957年、鹿児島県生まれ。80年東京大学法学部卒業、丸紅入社。主に電力事業...
丸紅・柿木社長、挑戦を促す経営哲学 「自由に失敗していい、でもチャレンジしない人はダメ」
丸紅の代表取締役社長・柿木真澄氏が語る経営改革と将来展望。2019年の大型減損を乗り越え、ROE15%を達成した丸紅は今、「ギアチェンジ」の時を迎えている。米国での事業展開や次世代事業への投資、そして社内文化の変革まで、総合商社のトップランナーとしての強さの秘密に迫る。

Q. 今の丸紅を一言で表すと何ですか?
「ギアチェンジ」だ。2019年度に大きな減損を出した後、体力回復に専念した期間があった。今は準利益も当時の倍以上出せるようになり、見える景色も変わってきた。ここで1つ上のやり方に突き進む時期が来たと考えている。
Q. 2019年の減損について、どのような背景があったのでしょうか?
2019年に社長に就任して間もなく、新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界経済が急激に落ち込んだ。数字の見直しをする中で、高値掴みした案件が多数あることが明らかになった。これを機に「大きな損を出し切る」という決断をした。過去からの重たい遺産を若い世代に背負わせたままでは先に進めないと考えた。
この決断の責任について、当時の担当者を問う声もあったが、「過去に遡るのは時間の無駄だ」と考えた。今この瞬間に経営を担っている者の責任として受け止め、将来の若い人たちに良い遺産を残すことが大切だと判断した。
Q. 減損処理後、どのような経営方針で立て直しを図ったのですか?
まずは「小さな柱をたくさん立てる」という方針を打ち出した。大型投資はできない状況だったので、手足を縛られた状態でも前に進めるよう、小規模な案件を積み上げていくアプローチを取った。
特に「本当に必要とされるビジネス」、つまり人間が生きていく上で必須となる食料関連や電力関連のビジネスに注力した。こうした「エッセンシャルビジネス」は、どんな状況でも需要が落ち込みにくい。総合商社の強みは、多様なビジネスを持つことによる「耐える力」にある。
Q. 脱炭素への取り組みはどのように進めていますか?
脱炭素は一夜にして実現できるものではない。現実的なアプローチとして、石炭火力から天然ガス発電へのシフトを進めている。新規の石炭火力開発は完全に停止し、既存の設備についても早期に閉鎖できるよう取り組んでいる。
再生可能エネルギーも重要だが、発電のタイミングをコントロールできないという課題がある。将来的には原子力発電が重要な役割を果たすと考えている。小型の原子炉など安全面も改善する技術が進んでおり、こうした技術への理解を深めることが必要だ。
Q. 電力ビジネスの変革についてはどうお考えですか?
かつて私自身が電力部門の担当だった頃は、大きな資金を投入して薄い利益を長期間にわたって得るビジネスモデルだった。今はより効率的な資本投資が求められている。
電力ビジネスも変化している。発電だけでなく、電力サービスや小売りなど、資金をあまり使わないビジネスモデルへのシフトを進めている。例えばイギリスでは「スマートエスエナジー」という事業を展開し、再生可能エネルギーの集約や法人向け販売で大きな成果を上げている。
Q. 米国事業の強みと今後の見通しは?
丸紅の純利益の約3割を米国で稼いでいる。米国事業の強みは、国内の大衆を対象としたビジネスが多く、特に「エッセンシャルビジネス」に特化していることだ。そのため、景気変動の影響を受けにくい。
具体的には、農業・食料ビジネス、自動車販売金融、航空機リースなどを手がけている。特に自動車は米国では必需品で、広大な国土では移動手段として欠かせない。こうした生活に密着したビジネスは景気に左右されにくく、安定した収益を上げている。
Q. 若い世代の挑戦を促すためにどのような取り組みを行っていますか?
「次世代事業開発」という部門を設け、新しい領域への挑戦を促している。この部門には一定の投資枠を与え、経営陣からの介入を最小限にして自由に活動できるようにしている。
重要なのは、その活動を「ガラス張り」にして社内に共有することだ。定期的にセミナーを開催し、現在取り組んでいる内容や直面している課題を発表してもらう。これにより他部署の若手にも良い影響を与え、チャレンジする風土を作り上げることができる。
また、2022年には「新世代コーポレート・デベロップメント」という新たな本部も作った。こちらはM&Aを中心に、より大きな規模の新規事業に取り組んでいる。
Q. 社内でのコミュニケーションはどのように行っていますか?
「オピニオンボックス」という仕組みを導入している。社員向けに定期的に動画で情報発信し、それに対して社員が意見を送ることができる。これまでに約1600件の意見に直接回答してきた。
特に印象的だったのは、女性の活躍に関する意見や職種区分の撤廃に関する意見だ。以前は「一般職」と「総合職」という区分があったが、それを撤廃した際には様々な反応があった。目的は一般職の方々の可能性を広げ、チャレンジしてもらうためだ。
Q. 経営者として大切にしていることは何ですか?
「最初に喋らない」ことを心がけている。トップが最初に発言すると、周囲はそれを忖度してしまう。まずは周りの意見をよく聞き、その後で発言するよう心がけている。
特に総合商社の場合、予算の取り合いや案件の通りやすさなどで不満が溜まりやすい組織構造がある。そうした無駄なエネルギーを溜め込まないためにも、社員が言いたいことを言える環境を作ることが重要だ。
失敗することを恐れず、チャレンジする風土を作ることも大切にしている。チャレンジする人は必ず失敗する。全てを成功させられる人はいない。重要なのは、失敗を恐れずにチャレンジし続けること。逆に「チャレンジしない人はダメ」という明確なメッセージを出している。