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自然体験は高級品
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2024年10月11日

幼児教育、習い事、受験、進学、留学… 選択肢が広がり、価値観が多様化する中、 親にはますます子育てのスキルセットが必要になる。そんな「子育てスキル」を鍛えるためのノウハウを各分野のプロが伝授! <ゲスト> 今井悠介/公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事 小学生の時に阪神淡路大震災を経験...
子供の「体験格差」を考える Q&A - 親の体験がない場合、子供の体験も0になるリスク
子供たちの将来を左右する要素として「体験」の重要性が注目されています。しかし、家庭の経済状況や親の価値観によって、子供が経験できる体験の量と質に大きな差が生まれています。この「体験格差」は、子供の成長にどのような影響を与えるのでしょうか?

Q. 体験格差とは何ですか?
体験格差とは、家庭の経済状況や親の価値観の違いによって、子供が経験できる課外活動やスポーツ、文化的な体験の量と質に差が生じることを指します。調査結果によると、世帯年収600万円以上の家庭では約7割の子供が何らかの課外活動に参加している一方、300万円未満の家庭では約半分の参加率にとどまっています。
この格差は単に経済的な問題だけでなく、親自身が子供時代にどのような体験をしてきたかにも大きく影響されます。親に体験がある場合、子供の体験が0である割合は約1割程度ですが、親自身に体験がない場合、子供の体験が0になる割合は50%を超えるというデータもあります。
Q. なぜ子供は「やりたいこと」を言い出せないのでしょうか?
経済的に厳しい家庭環境にある子供たちは、親の苦労を敏感に感じ取っています。あるシングルマザー家庭の例では、小学生の息子が「泣きながらサッカーがしたい」と言い出したケースがありました。母親は「やりたいことはやっていいよ」と言っていたにもかかわらず、子供は週1回3000円の費用や、送迎によって母親の仕事に影響が出ることを心配して、長い間願望を言い出せずにいたのです。
子供たちは親が服を買い替えるのを我慢していることや、食事は子供を優先して自分は残りものを食べていることなど、日々の生活の中での親の我慢や苦労を見ています。そのため「やりたい」と言うことに勇気が必要になり、「できなかった」経験を繰り返すうちに、最終的には自分の中に留めておこうと思うようになってしまいます。これがチャレンジする前に諦める習慣につながっていきます。
Q. 地方の子供は自然に囲まれているから、自然体験の機会は多いのでは?
一般的に、地方の子供の方が自然に触れる機会が多いと思われがちですが、データで見るとそうとは言えません。自然体験への参加率は、地方(28.0%)よりも都市部(30.7%)の方がむしろ高いという結果が出ています。
これには様々な理由が考えられます。現代では場所を問わずゲームなどの室内活動が普及しており、自然に触れるには意図的な働きかけが必要です。また安全面の懸念から、川や海などの自然環境に子供だけで行かせることが難しくなっていることも影響しています。
一方で、都市部の高所得層(年収600万円以上)は、自然体験に対して特に多くのお金を使う傾向があります。自然が身近にないからこそ、意識的に機会を作ろうとする行動が見られるのです。
Q. 体験の種類によって格差の現れ方に違いはありますか?
体験の種類によって格差の現れ方には特徴があります。例えば、スポーツ系の体験では、年収600万円以上の家庭では約3割が水泳を習っています。水泳は親の当番がなく、送迎バスがあるケースも多いため、働く親にとって管理しやすい習い事として選ばれる傾向があります。
文化系では、ピアノなどの音楽教室は家庭の経済状況による差が大きいです。家で練習するためにはピアノを所有する必要があり、これは大きな初期投資となります。電子ピアノという選択肢もありますが、家庭環境の差が直接反映されやすい分野です。
また、体験の格差は小さな部分にも表れます。例えば、サッカー部に入っても、みんながベンチコートを着ている中で自分だけないという状況や、高校の陸上部に入っても遠征費が払えず一度も試合に参加できないといったケースもあります。
Q. 親の体験と子供の体験にはどのような関係がありますか?
調査によると、親自身が子供時代に体験があった場合、その子供の体験が0になる割合は約1割程度ですが、親に体験がなかった場合は子供の体験が0になる割合が50%を超えることがわかっています。
この傾向は、世帯年収によらず同じパターンを示しています。例えば、年収300万円未満の世帯でも、親自身に体験があるかないかによって、子供の体験機会に大きな差が生じています。
これは、親の価値観や生活に対する期待値に関係しています。親自身がいろいろな体験をしてきた場合、子供にも同様の機会を提供したいと考える傾向があります。逆に、親自身が体験していないと、その価値がわからず、仮に支援や資金があったとしても「別のことに使いたい」と考えることもあるのです。
Q. 体験格差の解消のためにはどのような取り組みが考えられますか?
体験格差の解消には、大きく分けて3つのアプローチが考えられます。
1. 経済的支援の充実:全ての小学生に一定の体験費用を補助するという案があります。試算では、全小学生に5000円を補助する場合、約3600億円の予算が必要とされています。これは高校無償化政策(約4000億円)に近い金額で、国として本気で取り組むなら実現可能な数字です。
2. 子供たちと体験をつなぐ支援:長野市では「長野未来発見プロジェクト」として、小中学生全員に体験で使えるクーポンを配布し、さらに「地域コーディネーター」を配置して子供と体験機会をつなぐ取り組みを行っています。このコーディネーターは子供と体験の橋渡しをするだけでなく、新しい体験機会の担い手を発掘する役割も担っています。
3. 体験の場となる公共施設の維持・活用:過去25年間で児童館や公民館などの施設は全国で約450施設減少しています。こうした公共インフラの減少は活動場所の減少につながり、残った施設への集中や価格高騰を招きます。廃校になった学校のグラウンドなど、地域に眠っている場所を活用していくことも重要です。
Q. 親はどのような視点を持つべきでしょうか?
自分の子供に何かしてあげたいという気持ちは自然なものですが、その中で少しでも社会に目を向けていくことが大切です。それは体験格差をなくす取り組みを応援することかもしれませんし、そうした取り組みを推進しようとする政治家に投票することかもしれません。
また、子供と接する機会を通じて、「自分の子供」という感覚から「地域の子供」へと視点を広げていくことも重要です。保育園の友達や同じマンションの子供など、自分の子供の範囲を少しずつ広げていくことで、社会全体で子供を支える意識が育まれます。
個人としては、自分にできることから始めることが大切です。例えば、マンションの1階で一人でいる子供に「どうしたの?」と声をかけられるような関係性を築いていくことも、子供の体験を豊かにする一歩となるでしょう。
Q. 学校と地域社会はどのように連携すべきですか?
従来の政策は学校を中心に考えられてきましたが、子供を中心に考えると、学校はあくまで子供が過ごす一つの場所に過ぎません。より広く子供の体験をどう充実させるかという視点で考えることが重要です。
学校の人間関係とは別の場所で自分を表現できる機会を持つことは、子供にとって大きな意味があります。部活動は学校の人間関係の延長線上にあることが多いですが、地域の活動であれば違う自分でいられる可能性があります。
ただし、これを「勝手にやってください」と放置するのではなく、政策的にどう補助し、サポートしていくかが課題です。子供を中心に、家庭(親)、体験の担い手(民間事業者、地域のサッカークラブ、NPOなど)、社会(行政やNPO)の三者がどう連携していくかが鍵となります。