企業超分析
【企業超分析:ユニクロ】柳井正の頭の中/「世界一」から逆算/破壊と進化
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2024年10月8日

人気の企業をよく知る専門家が、元社員と共に徹底分析していく「企業超分析」。就活に、転職に、さらに投資に役立つ情報をお届けする。今回は「ユニクロ」。世界一を目指す柳井正氏の思考を紐解く。 <ゲスト> 楠木 建 一橋ビジネススクール 特任教授 杉本貴司 『ユニクロ』著者 / 日本経済新聞編集委員 堀...
ユニクロはなぜ世界で勝ち続けるのか?柳井正の経営哲学と成長戦略
立ち止まることなく進化し続けるユニクロ。創業から40年を経て、今や世界的アパレル企業に成長したその秘密に迫る。「世界一を目指す」と掲げた小さな紳士服店は、どのようにして売上高2.76兆円、営業利益3810億円の巨大企業に成長したのか。


Q. ユニクロ(ファーストリテイリング)の現在の企業規模はどのくらい?
ファーストリテイリングの売上高は2.76兆円、営業利益は3800億円を超える規模に成長している。国内アパレル業界では圧倒的な1位であり、2位の島村、3位のアダストリアと比較しても数倍の売上高と営業利益率を誇る。
世界に目を向けると、現在は第3位のポジションを確保している。トップはザラを運営するインディテックス(売上高5.46兆円)、2位はH&Mを運営するヘネス&マウリッツだが、ファーストリテイリングは営業利益では既に世界2位の座を獲得している。2013年頃はまだ4位でギャップの後ろにいたが、その後急速に成長して3位に浮上した。
Q. ユニクロとザラやH&Mなどのファストファッションとの違いは?
ユニクロは同じアパレル業界でも、ザラやH&Mとは全く異なるポジションを確立している。ザラやH&Mはファストファッションと呼ばれ、流行に合わせて頻繁に商品を変え、多品種少量生産が特徴だ。一方、ユニクロは「ライフウェア」という独自のポジションを確立している。
ライフウェアとは、生活をより快適・便利にする「部品」や「道具」として服を捉える考え方だ。洋服で個性を発揮するのではなく、日常生活の質を高める機能性に重点を置いている。ユニクロは少品種大量生産により、高品質な商品を手頃な価格で提供することを可能にしている。
楠木建氏は両者の違いを競馬に例えて説明する。「ファストファッションはレースが始まった後、第3コーナーで『この馬が来ている』と判断して馬券を買うようなもの。一方、ユニクロは牧場に行き、絶対に勝てる馬を自分たちで育てる。時間はかかるが、勝てる馬を作り出す」という違いがある。
Q. ユニクロはどのように成長してきたのか?
ユニクロの歴史は、「破壊と創造」の連続だった。創業者の柳井正氏は、山口県宇部市の小さな紳士服店から始め、様々な転機で大胆な決断を下してきた。
最初の12年間は模索の時期だった。1972年に紳士服店を事実上引き継いだ柳井氏は、「どうすれば成功できるか」を考え続け、1984年に広島で初のユニクロ店舗をオープンした。ユニクロはもともとカジュアルウェアの倉庫のような業態だったが、わずか2年後には大きな転換を行う。他社から仕入れた服を売るモデルから、自社でデザインし海外の工場で生産するSPA(製造小売業)モデルへと変更した。
その後も「世界一を目指す」という壮大な目標を掲げ、1998年に東京(原宿)への出店を果たし、わずか3年後の2001年には海外進出を開始した。これは1991年、わずか23店舗しかなかった時点で描いた「世界一になる」というビジョンに基づいたものだった。
2000年代にはフリースブームで大躍進を果たすが、同時に「ユニバレ」(みんなユニクロを着ている状態)という逆風も経験。その後も海外での失敗や物流の混乱、ブラック企業批判など様々な困難に直面しながらも、そのたびに自己改革を続けてきた。
Q. 柳井正氏はどのような経営者なのか?
柳井氏は「アスリートタイプ」の経営者と評される。仕事に全てを捧げ、朝6時過ぎから働き、帰宅後は休息以外に何もしない徹底ぶりだ。酒を飲まず、夜の付き合いもなく、健康的な生活を送っている。
経営哲学の特徴は「失敗を恐れない」精神にある。柳井氏は社内文書で「ほとんど失敗する」と率直に認めつつも、失敗を恐れず挑戦し続けることの重要性を説いている。これは「本は最初から読むが、商売はエンディングから」という彼の言葉に象徴される。最終的にどうなりたいかを明確にし、そこから逆算して戦略を立てるアプローチだ。
また、柳井氏は「ひょっとしたら」という言葉をよく使う。「ひょっとしたら世界一になれる」という可能性が0%ではないなら挑戦する価値があるという考え方だ。この確率は当初は1%未満だったが、現在では「時間の問題」と言うほどの確信に変わっている。
Q. ユニクロの商品開発の特徴は?
ユニクロの商品開発は「スーパープロダクトアウト」と呼ばれる。これは市場の流行を追うのではなく、世の中にない製品を自ら創造するアプローチだ。フリース、ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウンなど、ユニクロのヒット商品は全て「なかったもの」を生み出している。
この方法を可能にしているのが、大量生産による規模の経済だ。例えば中国の生産工場を訪れた際、「30万着作れます」と言われた柳井氏は「300万着の間違いではないか」と返した。この大量発注により、工場は設備投資ができ、素材の購入条件も良くなる。結果として高品質の商品を安価で提供できる仕組みが構築されている。
また、ユニクロは定番商品を少しずつアップデートしていく戦略も取っている。例えばTシャツの襟の開き具合を時代の空気に合わせてミリ単位で調整するなど、細部にこだわりながら進化させている。これが顧客の「買い替え需要」を生み出す要因となっている。
Q. ユニクロが直面する課題は?
ユニクロが直面する主な課題は3つある。
1. 米中対立:ユニクロの売上構成では、国内に次いで中国を含むグレーターチャイナが約3割を占め、北米は7%程度。2021年には新疆ウイグル自治区の綿花問題で輸入差し止めを経験するなど、地政学的リスクが存在する。
2. 後継者問題:75歳となった柳井氏の後継者問題が注目されている。2023年には塚越氏がユニクロの社長に就任したが、まだ「有資格者」という位置づけで、正式な後継者は明言されていない。柳井氏自身も「後継者は育てられないかもしれない」と述べており、選定は慎重に進められている。
3. 情報製造工業への転換:柳井氏が掲げる「情報製造工業」への転換はまだ道半ばだ。eコマースの比率は15%程度にとどまっており、情報技術を活用した需要予測や顧客体験の向上など、さらなる進化が求められている。
Q. ユニクロは10兆円企業になれるか?
柳井氏は10兆円企業を目指すと明言している。これは現在の約3兆円から7兆円以上の上積みが必要だが、専門家は達成可能とみている。
その理由として、ユニクロと正面から戦う競合がまだ現れていないこと、アメリカや他の地域での展開余地が大きいこと、さらにGUなど他ブランドの世界展開の可能性などが挙げられる。また、実店舗の体験価値も強みとなっている。
ユニクロの成長確率について、柳井氏自身の見方も変化している。かつては「ひょっとしたら」と1%以下の可能性を語っていたが、現在では「時間の問題」と自信を深めている。
ユニクロが成功した最大の理由は、誰も手をつけなかった「ライフウェア」という独自のポジションを確立し、それを一貫して追求してきたことにある。この独自性が、これからも成長を支える原動力となりそうだ。