
小泉進次郎氏に聞く、労働市場改革の全貌
労働市場改革の真意、国家観への批判、そして自分らしい生き方
自民党総裁選の候補者である小泉進次郎氏が、労働市場改革への思い、ライドシェア解禁、そして「保守」の在り方について語った。自由と選択肢の拡大を重視し、「新時代の扉を開ける」決意を示した。

Q. なぜ労働市場改革を最優先テーマとして掲げたのか?
長年議論ばかりで答えを出せていない課題に決着をつけたいという思いがある。過去30年間、世界の賃金が上がる中で日本だけ賃金が上がらず、その最大の理由は生産性の低さだ。歴代政権も必要性を認識し、リスキリングやジョブ型雇用促進などに取り組んできたが、政治の改革スピードと世の中の変化の速さ、そして日本の人口減少と働き手不足のスピードが予想以上に速く、今までのペースでは追いつかない。
昭和時代に決まった判例に基づく働き方のルールを、令和の時代に合わせる必要がある。単に組織内の配置転換だけではなく、成長分野に人材を移動させるために、企業に再就職支援とリスキリングの取り組みを義務付け、労働市場全体で誰一人取り残さない社会を目指している。
Q. 整理解雇の要件見直しは「クビし放題」になるという批判にどう答えるか?
全くの誤解だ。今回の提案は、整理解雇の4要件のうち、「解雇回避努力義務の履行」という項目に、従来の社内配置転換に加えて、「リスキリング・再就職支援」という新たな選択肢を法律で位置づけるというもの。これによって、業績悪化時に単なる失業ではなく、成長分野への移動を支援する仕組みを作る。
特に若い世代は転職が当たり前の時代になってきており、朝日新聞の調査では18〜29歳の6割が労働市場改革に賛成している。時代の変化を反映した結果だと考えている。
Q. 中高年層の不安にどう対応するのか?
大前提として、求められている分野がたくさんあることを丁寧に伝えていく必要がある。また、リスキリングの機会提供や再就職支援を企業に義務付けることで、個人のリスクを下げる効果がある。
人生100年時代において、働く意欲がある方が長く働けるようにすることが重要だ。ただし、フルタイムだけでなく、パートタイム、短時間正社員、ライドシェアなど、多様な働き方の選択肢を整えていくことで、年齢に関わらず社会との接点を持ち続けられる社会を目指している。
Q. リスキリングの教育の質や予算についてどう考えているか?
大学を学び直しの場として活用していくことが一つの方向性だ。また、高専など若いうちから専門分野を極める道も広げていきたい。
リスキリングには時間と予算が必要であり、国と企業が支援して、利用者はコスト負担を心配せずに受けられる環境を作っていく。ただし単に予算を上げるだけでなく、クオリティの高い教育を提供できるかという点が重要だ。日本の職業訓練への予算は他国に比べて低いため、質を重視しながら大幅に増額する必要がある。
Q. 残業規制をどう変えるのか?
安倍政権から続けてきた働き方改革を逆戻りさせることは全く考えていない。働く人の健康管理を第一に考えるべきだが、もっと働きたい、稼ぎたいという声もある。
例えば農業分野では、天候に左右される作業に対して硬直的な労働時間規制が合わないケースもある。ただし、すべての残業時間規制を緩和するのではなく、専門家による検討を経て、懸念のない形で選択肢を増やしていきたい。
Q. なぜライドシェアの全面解禁が進まないのか?
これは自民党の限界の一つの現れだ。抵抗する業界団体があり、賛成派が少なく、反対派の声が大きい。このような状況を突破するには官邸のリーダーシップが重要だ。農業改革の時も党内は反対派が多かったが、安倍首相、菅官房長官、齋藤農水大臣と私(当時農林部会長)の体制で実現できた。
ライドシェアについての反対論の多くは事実と異なる認識に基づいている。例えば「タクシーは安全、ライドシェアは危険」という主張は全く逆で、ライドシェアはドライバーの情報が透明で、安全管理の仕組みも充実している。
バスやタクシー、電車の便数が減少している中で、新しい移動手段の選択肢を増やすことは不可欠だ。タクシー会社だけでなく、安全運行管理の責任が果たせる事業者であれば参入を認めるべきだ。
Q. どうすれば1年以内に改革を実現できるのか?
総理になったら、できる限り早い時期に解散し、総裁選で掲げた政策を国民に問う。その結果として選ばれた新たな自民党メンバーと一緒に政策を進めていく。
政治と金の問題で国民の信頼を失った今、政策についても国民の意思のもとで進めることが当然だ。自民党内だけの論理で進めると、業界と既得権益の側が許容する範囲内での改革しかできない。圧倒的なスピード感と政策の強度を実現するには、国民の支持を背景にすることが必要だ。
Q. 国家観が見えないという批判にどう答えるか?
私の国家観の根底には、生まれ育った町への強い愛がある。故郷への思いが日本に対する思いや日本人としての自信と誇りにつながっている。
保守とは誰かを排除したり、あるべき姿を押し付けるものではなく、時代の流れと伝統・文化を守りながら、新しい選択肢を求める人たちの声にも応える「寛容で包容力ある保守」が私の考えだ。例えば選択的夫婦別姓の導入は、誰かの権利を奪うものではなく、選択肢を増やすだけのこと。
私が目指すのは「誰もが自分らしい生き方ができる国」だ。日本の伝統や文化に対する誇りと信頼があるからこそ、選択肢を増やしても日本の価値が損なわれることはないと確信している。
Q. 改革のリスクをどう捉えているか?
みんなが賛成するということは、何も変わらないということだ。今のままで平時なら問題ないが、世の中はどんどん変化している。ハレーションが起きるのは不可避だが、丁寧な対話とコミュニケーションを通じて理解を求めていく。
自民党には最後は政策の違いを大きな懐で受け止め、決めたらみんなで進むという文化がある。シュレーダーのように改革に成功しても選挙で負ける可能性はあるが、歴史的評価は後世に委ねるしかない。批判や評価に一喜一憂せず、自分の信じる道を進む覚悟がある。