KUROFUNE
円安・円高時代のキャリアサバイバル術
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2024年9月20日

日本に住む外国人が、「ニッポン」の文化や経済をテーマに議論。どうすれば日本がもっと良くなるか?を考えていく番組。
ビジネスパーソンのための円高・円安時代のキャリアサバイバル術
今、為替も株価も激しく変動している。2024年に入って一時は1ドル160円台を記録した円安が、8月には140円台に戻るなど、まさにジェットコースターのような展開が続いている。こうした中、ビジネスパーソンは円高・円安の波をどう乗り切ればいいのか?経済アナリストのジョセフ・クラフト氏とロイター通信のティム・ケリー氏に聞いた。


Q. ビジネスパーソンにとって円高と円安、どちらがメリットがあるのか?
単純に「どちらがいい」とは言えない。労働力という観点から考えると、賃金においては円安の方がプラスだ。大企業や輸出企業の多くが収益面でメリットを得られ、それを賃金に還元できる可能性が高まる。ただし、大企業から中小企業へと利益が還元される仕組みが確保できないと、賃金効果は広がらない。
一方、労働力の確保という点では円高の方がメリットがある。現在の日本は労働力不足なので、海外からの労働力を取り入れることが重要だが、円安だと日本の賃金が海外から見て魅力的に映らなくなってしまう。
ただし、為替相場の変動スピードの方が実は大きな問題だ。急激に円高になったり円安になったりすると、企業は調整に迫られるが、それには時間がかかる。激しく動くこと自体が大きなデメリットとなる。
Q. 適正な為替レートとは?過度な円安・円高はどうなのか?
過度な円安、過度な円高は問題だ。例えば160円程度の円安になると、輸出企業にとってもメリットが減少する。輸入コストが増加した分、収益は増えても利益が減少するからだ。日本全体にとっては160円以上の円安はあまり良くない。
一方で100円以下の円高も、日本がかつて経験した「円高不況」のように問題がある。極端な円安でも極端な円高でもメリットはない。
現在の145円程度は、「円高」と言われることもあるが、昔と比べれば十分円安の水準だ。この水準であれば、輸出企業にとっては十分な利益が確保できる。ただ、160円に慣れてしまうと円高に感じてしまうのだろう。
企業にとって最も重要なのは、為替相場の安定だ。145円でも160円でも一定水準で安定すれば、企業は安心して事業を進めることができる。為替のボラティリティ(変動性)が低いことが非常に重要である。
Q. 日本銀行の金融政策はどう評価すべきか?
上田日銀総裁の金融政策の方向性は評価できる。これまで10年間続いた過度なマイナス金利からの脱却プロセスは重要だ。しかし問題は、市場とのコミュニケーションがうまくいっていないことだ。
アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は事前に市場に情報を与え、サプライズがないようにコミュニケーションを取っている。しかし日銀はまだその点がうまくできていないため、市場の混乱を招いている面がある。
7月の利上げは多くの市場参加者が予想していなかったため、一定の混乱があった。とはいえ、先日の株価下落は日銀の利上げが原因というわけではない。市場は利上げの有無にかかわらず下落傾向にあったのだ。
Q. 新NISAを始めたビジネスパーソンは、最近の株価変動をどう捉えるべきか?
NISAは長期的な貯蓄手段なので、短期的な株価変動に一喜一憂する必要はない。自分に問いかけるべきは「10年後、20年後の株式市場はどうなっているか」ということだ。
もし将来の株価が現在より上がると考えるなら、今は大きなチャンスだ。逆に下がると思うなら、株式投資はやめた方がいい。特に積立NISAであれば心配する必要はなく、淡々と毎月積み立てていけばよい。
日本経済が2%のインフレ率と1〜2%のGDP成長率を持続的に達成できれば、日経平均株価は必然的に上昇していくだろう。5年以内に6万円に到達する可能性も十分にある。
興味深いことに、大幅な株価下落があった直後の街頭インタビューでは、多くの人があまり心配していなかった。「長い目で見れば問題ない」「経済が成長すれば株も上がる」という意見が多かった。
Q. 日本の賃金はなぜ低いままなのか?賃上げの展望は?
日本の最低賃金は世界的に見て低い水準にある。例えばアメリカでは最低賃金が2400円程度なのに対し、平均賃金は5500円程度だ。つまり、最低賃金を上げても平均賃金への影響は限定的である。
一方、日本では平均賃金が1300円程度と最低賃金に近い。このため、最低賃金を引き上げることで平均賃金も上昇するという効果が期待できる。
しかし春闘の「満額回答」は実は大きな問題だ。本来、労働組合は高い要求をして交渉の余地を残すべきだが、低い要求をして満額回答を得たことで企業側に有利な結果となってしまった。実際、大手企業の経営者の中には「もっと高い賃金を払えた」と話す人もいる。
今後重要なのは、毎年の交渉でインフレ率を上回る賃上げを継続していくことだ。賃上げが続くという自信が持てれば、消費も増え、少子化対策にもつながる。ただし、そうした意識の変化には2〜3年、あるいは5年ほどかかるだろう。
Q. 日本人のデフレマインドはなぜ根強いのか?
日本は30年近くデフレが続いており、特に若い世代はデフレ以外の経済環境を知らない。「できるだけ安く」という考え方や100円ショップの普及など、デフレマインドが深く根付いている。
デフレとインフレの違いは「守り」と「攻め」の違いとも言える。インフレ環境では、インフレに追いつくために付加価値を生み出したりイノベーションを起こしたりする必要がある。つまり「攻め」の姿勢が求められる。
一方、デフレ環境では何もしなくても生活水準は維持される。成長はないものの、一定の生活レベルが確保されるため、いわゆる「ぬるま湯」状態になりがちだ。これがデフレマインドの本質である。
しかし、最近は変化の兆しも見られる。NISAの普及など、お金の運用や「攻め」の姿勢が少しずつ広がっている。低インフレが続き、それを上回る賃上げがあれば、デフレマインドからの脱却は可能だろう。
Q. 若い世代のキャリア形成と海外志向についてどう考えるか?
労働者にとって選択肢が増えることは良いことだ。以前は国内でしか働けなかったが、今は海外という選択肢もある。賃金だけでなく、職種や責任の範囲、ベンチャー企業での機会など、様々な選択肢が広がっている。
こうした流れは企業側にも影響を与える。人材を引き留めるためには賃金を上げたり、海外から人材を補充したりする必要が出てくる。これによって労使間に健全な緊張関係が生まれ、日本の労働環境も欧米に近づいていくだろう。
ただし、日本人が海外で活躍するためには、コミュニケーション力と成果を出す能力が重要だ。自分の考えをしっかり伝え、成果を上げることで主張ができる。デフレマインドで「静かに仕事していればいい」と思っていた人がインフレ環境の海外に行くと大きなショックを受けるかもしれない。
興味深いのは、アメリカなどの大学への日本人留学生が韓国人や中国人に比べて少ないことだ。海外に出ることへの緊張感が強いのかもしれない。
Q. 今後のビジネスパーソンのキャリアサバイバル術は?
円安と円高、それぞれのメリットとデメリットを理解し、状況に応じて柔軟に対応することが重要だ。円安の時は円安のメリットを最大限に活かしながらデメリットを最小限に抑える。円高になったら円高のメリットを活かす。
例えば、円安時には日本の農産物や日本酒などの輸出拡大のチャンスがある。香港からは日本のフルーツを食べに来るツアーが組まれるほど人気だ。こうした日本ブランドの強みを生かすべきだ。
ただし、円安は永遠に続くわけではない。いつか円高に転じる可能性も視野に入れて準備しておく必要がある。
今は変化の時期であり、不安を感じる人も多いだろう。しかし、その中にもチャンスがある。日本には世界に貢献できることがたくさんあり、世界はそれを待っている。ポジティブなマインドセットを持ち、攻めの姿勢でキャリアを展開していくことが大切だ。