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FBIも採用する親の聴く技術
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2024年8月20日

「子育てスキル」を鍛えるためのノウハウを各分野のプロが伝授。 児童発達研究者の島村華子が「聴き方」について解説。 <ゲスト> 島村 華子 モンテッソーリ教育・レッジョエミリア教育を知り尽くした オックスフォード児童発達学研究者 上智大学卒業後、カナダのバンクーバーに渡り モンテッソーリ国際協会(...
FBIも採用する「アクティブリスニング」で子どもとの絆を深める
モンテッソーリ教育の専門家である島村華子氏によると、中高生を対象にしたアンケート調査では、子どもの34%しか「お母さんに話しかけやすい」と感じていないという。一方で、母親側は48%が「話しかけやすい存在だ」と思っており、親子間の認識にギャップがあることがわかった。なぜ親は子どもの話を上手く聞けないのか?その原因と解決法を探る。
Q. 「アクティブリスニング」とは何ですか?
「アクティブリスニング」は日本語では「積極的傾聴」と呼ばれています。ただ「うん、うん」と聞くだけでなく、質問したり、言い換えたり、反復したりして、相手と同じ温度感で話を理解するよう努める聞き方です。
子どもとの信頼関係を築くためには、何を話しても一旦受け入れてもらえるという心理的安全性が大切です。アクティブリスニングはその基盤となる重要なスキルなのです。
Q. FBIでもアクティブリスニングを採用しているのは本当ですか?
はい、実際にFBIは誘拐事件の交渉などでアクティブリスニングを活用しています。イギリスの研究によると、アクティブリスニングを使う交渉官の方が誘拐犯との交渉の成功率が高いことが明らかになっています。
もちろん子育てと犯罪交渉は異なりますが、人と人との信頼関係を構築するという点では共通しています。
Q. なぜ大人は子どもの話をきちんと聞けないのでしょうか?
大きく分けて4つの理由があります。
1. 決めつけ:関係が近ければ近いほど「この子はこういう子だから」と決めつけてしまい、実際に言いたいことに耳を傾けられなくなります。実験でも、赤の他人より近しい関係の方が理解度が低いという結果が出ています。
2. 問題の同一化:子どもの問題なのに、親が自分の問題として捉えてしまうこと。愛情ゆえに「かわいそう」「何とかしてあげなきゃ」と先回りして介入し、子どもが本当に望んでいることを聞かなくなります。
3. 忙しさとストレス:共働き家庭が増える中、家事の時間も増加し、子どもとゆっくり向き合う時間的余裕がありません。6歳未満の子どもがいる世帯では、父親の育児時間は25分から1時間5分に増加しましたが、母親は3時間以上と3倍の差があります。
4. デジタル機器の弊害:ファーストフード店での観察研究では、親子で来店した80%の親が携帯を見て、子どもとほとんど会話していなかったという結果もあります。
Q. 「自分の子どもだから」という強い愛情が逆効果になることもあるのでしょうか?
その通りです。自分の子どもへの強い愛情があるからこそ、「こうした方が絶対いい」という思いが強くなり、子どもの意見を聞く前に親の考えを押し付けてしまいがちです。
頭では「子どもは自分とは違う人格を持つ個人」だとわかっていても、目の前にすると自分の分身のように考えてしまうのは自然なことです。しかし、子どもには自分の人生を歩む権利があると常に意識することが大切です。
Q. アクティブリスニングを実践するにはどうすればいいですか?
アクティブリスニングを実践するためのポイントをいくつか紹介します。
1. 自分の癖を理解する:「〜すべき」「違う」などの言葉癖や、すぐにアドバイスをしたくなる傾向に気づきましょう。パートナーに自分の聞き方の癖を教えてもらうのも効果的です。
2. 裁判官ではなく探偵になる:善悪で判断するのではなく、「なぜそうしたかったのか」という好奇心を持って子どもの行動の背景を探りましょう。
3. 聞くための妨げを取り除く:食事中はスマホをカバンにしまうなど、デジタルデバイスのない時間を意識的に作りましょう。
4. 心理的安全性を確保する:子どもが何を話しても一旦は受け止めてもらえるという安心感を作ることが大切です。
Q. 子どもが不適切なことを言った時はどう対応すればいいですか?
アクティブリスニングは「同意する」ことではなく、相手の考えを知る方法です。例えば、子どもが肌の色が違う人について不適切な発言をした場合、「あなたはそう思ったんだね」と受け止めつつも、「でもね、そういう言い方は相手を傷つけることになるからやめようね」と境界線を示すことが大切です。
子どもの気持ちを否定せずに受け止めながらも、親として正しい道しるべを示すというバランスが重要です。
Q. 忙しい時でもアクティブリスニングはできますか?
完璧を目指す必要はありません。毎日忙しい中で、常にアクティブリスニングを実践するのは現実的ではないでしょう。お風呂の時間や寝る前の数分など、短い時間でも目を合わせて子どもに向き合う時間を作れば十分です。
「できる時にできるだけ」というスタンスで、自分自身にも過度な負担をかけないことが長続きのコツです。
Q. 「すごいね!」と褒めるのはダメなのでしょうか?
過剰な褒め方には注意が必要です。何でも「すごい!」「天才!」と褒めすぎると、子どもは「褒められジャンキー」になってしまう恐れがあります。外部からの評価がないと自分の行動が正しいのか不安になり、自立心が育ちにくくなります。
子どもの行動に対して、具体的に「どこが」「なぜ」良かったのかを伝えることで、内発的動機付けを育てましょう。
Q. アクティブリスニングのゴールは何ですか?
科学的根拠に基づいて親子の絆を深めることがゴールです。完全に相手を理解することは難しくても、どれだけ近い温度感で理解できるかを目指す努力が大切です。
親子であっても異なる人格を持つ二人の人間です。完璧な理解を目指すのではなく、お互いに歩み寄る努力を続けることで、より深い信頼関係を築くことができます。
Q. 昔の小さな傷つき体験が親子関係に影響することもあるのでしょうか?
子どもの頃の小さな出来事が、大人になっても心に残ることがあります。例えば、いじめられていると打ち明けた時に「気のせいよ」と母親に言われた経験から、その後一切心の内を打ち明けなくなったという大人の例もあります。
また、小学生の頃に服装の相談をした際に「どっちでもいい」と言われて怒った経験など、親にとっては些細なことでも、子どもにとっては大きな問題であることを理解することが大切です。
Q. 最後に伝えたいことはありますか?
アクティブリスニングは非常に疲れる作業です。相手の話を本当に理解しようとするのは、頭をフルで使う必要があるからです。
しかし、その努力は必ず親子関係に良い影響をもたらします。完璧を目指すのではなく、子どもとの関係をより良くしたいという思いを持って、できる範囲で実践していきましょう。