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日本の「外資コンサル依存」は大問題だ
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2024年8月5日

デジタル赤字、コンサル赤字が急速に拡大するなど、日本のプロダクト開発には多くの課題がある。シリコンバレーから見た、日本のおかしな常識は何か?どうすればプロダクト開発を成功に導けるのか?LinkedIn本社でシニアプロダクトマネジャーを務める曽根原春樹氏に聞いた。 <ゲスト> 曽根原春樹(X:@Ha...
Q&A:シリコンバレーから見た日本企業のIT活用とプロダクト開発の課題
シリコンバレーで活躍するリンクトイン本社のシニアプロダクトマネージャー、曽根原春樹氏が語る日本企業の課題と解決策について。「コンサルに任せるのではなく、自分たちで考える力を取り戻すべき」と指摘する彼の視点から、日本企業の未来を探る。
Q. なぜ日本企業は外部コンサルタントに頼りすぎるのか?
日本では「外資系コンサルに任せれば安心」という考え方が広まっていますが、これは裏返すと「自分たちで考える力を失った」ということと同義です。これは過去25年間における日本の最大の損失かもしれません。
経営コンサルティングそのものにはいくつかの限界があります。まず「スコープの狭さ」です。コンサルティングは基本的に企業が抱える特定の課題に対して、3〜6ヶ月という短期間で解決策を提案するものです。次に「組織文化の影響」があります。優秀なコンサルタントが提案を行っても、企業の組織文化がそれを実行できなければ意味がありません。また「短期的視点」の問題もあります。GDPを上げるには長期的な視野で人材や競争力に投資し続ける必要がありますが、経営コンサルティングのアプローチでは短期的なスコープにとどまってしまいます。
シリコンバレーの企業ではコンサルタントが入ってくることはほとんどありません。例えばリンクトインでは、ビジネスモデルの本質や提供している価値に対する深い理解があり、プロダクトマネージャーのスキルも高いため、コンサルタントを必要とする場面がそもそも少ないのです。
Q. 日本企業のIT投資はどのような問題を抱えているのか?
日本情報システム・ユーザー協会の調査によると、日本企業のIT予算の約8割が運用保守に使われ、新しい価値を生み出すバリューアップには2割程度しか使われていません。この割合は過去10年以上ほとんど変わっていません。一方、アメリカ企業では徐々にバリューアップの比率が高まっており、運用保守6:バリューアップ4の割合になっています。
また、日本企業のDX推進の最重要目的として「コスト削減」を掲げる企業が最も多く、新規領域への展開を目的とする企業は比較的少ない状況です。DXという言葉が使われていても、新しいテクノロジーを自社のビジネスとどう掛け合わせて新しい価値を作るかではなく、既存プロセスのコスト削減のために使おうとする傾向があります。
このような状況が続く背景には、過去25年間にわたる日本社会の需要不足があります。日銀のレポートによれば、日本には潜在成長率と実際のGDP成長率の間にギャップがあり、本来は成長できるはずなのに実際はそうなっていない状態が長く続いています。この状況に企業が慣れてしまい、新しい製品やサービスを創出するよりもコスト削減に注力する経営スタイルが定着してしまったのです。
Q. シリコンバレー企業と日本企業の経営者の違いは何か?
日本の経営者に対して株主は甘いと言えるでしょう。アメリカでは2期連続で売上が上がらなければCEOは解任されることが多く、収益を上げて価値を作ることに対する厳しさは日本の100倍、1000倍あるとさえ感じます。このような環境の中で、シリコンバレーの経営者は常に厳しいプレッシャーにさらされています。
また、Googleのサンダー・ピチャイCEO、Microsoftのサティア・ナデラCEO、リンクトインのライアン・ロザンスキーCEOなど、シリコンバレーの大企業CEOの多くはプロダクトマネージャー出身です。彼らはテクノロジーを使って価値を生み出すことが自社の競争力だと理解しています。
一方、日本企業の経営者は内部から昇進した人が多く、営業部門や財務部門出身者がCEOになるケースが一般的です。そのため、特にソフトウェアを活用したビジネスにおいて、テクノロジーへの理解が不足したままトップに立つことがリスクとなっています。
シリコンバレーの経営者はテクノロジーを使ってビジネスを動かした経験を持っているため、テクノロジーの活用方法や方針について明確なビジョンを示すことができます。例えばリンクトインでは2週間に1度全社ミーティングが行われ、CEOは会社の方向性や戦略について理路整然と説明します。このような形で、経営陣からテクノロジーの活用方針が明確に示されることが重要です。
Q. プロダクトマネージャーに必要なスキルとは?
シリコンバレーのプロダクトマネージャーは、多様なバックグラウンドを持ちながらも共通して「自分の得意技に依存しない」ことを理解しています。エンジニア出身であればコードばかり書くのではなく、ビジネスのことも学ばなければなりません。コンサルタント出身であれば、デザインや技術的な知識も身につける必要があります。
プロダクトマネージャーの役割において重要なのは、「計画的にリスクを冒す」姿勢です。シリコンバレーではリスクを冒さないことが無能とみなされる一方で、闇雲にリスクを取るわけでもありません。リスクを最小化するための前提条件を整理し、必要な投資や段階的なアプローチを計画します。
日本人とシリコンバレーの人ではリスクに対する感覚が異なります。シリコンバレーでは、リスクを取る際にそのリスクをどう最小化するかを論理的に考える訓練が行き届いています。プロダクトマネージャーは経営者と同じような感覚で物事を見たり、数字を解釈したり、仮説を考えたりする必要があります。
また、シリコンバレーのプロダクト開発では、「プロダクトビジョン」を最初に作ります。これは新しいプロダクトや価値が世の中に広がった時に、どんな人にどのような変化をもたらすのかを言語化するものです。企業のビジョンであると同時に、プロダクトのビジョンでもあり、これを基にプロダクト開発が進められます。
Q. 日本企業が変わるためには何が必要か?
まず、人材への投資を増やすべきです。シリコンバレーの企業では、従業員が学びたいことに対して会社がお金を出す文化があります。例えば年間5000ドル程度の学習予算が従業員に与えられ、大学の授業やオンラインコースなどに自由に使えます。こうした制度により、従業員は新しいスキルを獲得して仕事に活かす好循環が生まれています。
日本企業も「人的資本経営」や「リスキリング」という言葉が登場してきましたが、これまでの25年間でなぜこれを実行してこなかったのかという疑問が残ります。日本企業は内部留保をたくさん貯めていますが、それを人材に投資することで変化の原動力が生まれるでしょう。
また、ITへの投資においても、運用保守だけでなくバリューアップに使う予算の割合を増やすべきです。アメリカ企業はクラウドサービスへの移行などによって運用保守コストを削減し、より多くの予算をバリューアップに投資できる環境を作っています。
さらに、経営者自身のリスキリングも必要です。リスキリングは従業員だけでなく、経営者にこそ必要なのです。世界の最先端の動きを理解し、自社を変革する意識が経営層に求められています。
日本社会は変化に対してゆっくりであることは否定できませんが、それは悪いことではありません。しかし、歩みを止めることが問題なのです。変化のスピードはゆっくりでも構いませんが、継続的に前進し続けることが重要です。