PIVOT TALK BUSINESS
ROAでビジネスを見極める
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2024年8月6日

「投資家の思考法 実践編」として、実際に企業分析をしながら投資・投資用語への理解を深めていく番組。カリスマファンドマネージャーの奥野一成氏に投資に必須の知識を学ぶ。今回はソフトバンクを事例に学ぶROE(自己資本利益率)。
「ROA」こそ企業の実力を見抜く鍵!投資プロが教える"儲かるビジネス"の見極め方
投資家の視点で企業を分析する際、最も重要な指標の一つが「ROA(Return On Asset)」です。この指標を理解すれば、ビジネスの本質や将来性を見抜けるようになります。今回は、ビジネスの収益性を正確に評価するためのROAの見方と活用法について解説します。
Q. ROAとは何ですか?またなぜ重要なのですか?
ROA(Return On Asset)は、総資産利益率と呼ばれ、企業が保有する総資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標です。計算式は「営業利益÷総資産」となります。
この指標が重要な理由は、企業のビジネスモデルの本質を映し出すからです。ROEが株主にとっての収益性を示すのに対し、ROAは企業全体の収益力を表します。つまり、自己資本(株主資本)だけでなく、借入金などの他人資本も含めた全ての資産を使ってどれだけ稼げているかを測る物差しになります。
Q. ROAとROEの違いは何ですか?
ROA(総資産利益率)とROE(自己資本利益率)の最大の違いは「誰の視点で利益を見るか」です。
ROAは分母に総資産、分子に営業利益を使用します。営業利益は会社全体の稼ぐ力を表し、すべてのステークホルダー(利害関係者)にとっての利益です。
一方、ROEは分母に自己資本(株主資本)、分子に純利益を使用します。純利益は借入金の利息など他の費用を差し引いた後の、株主にとっての最終的な利益です。
つまり、ROAは企業全体の収益性、ROEは株主にとっての収益性を示す指標なのです。
Q. ROAはどのように分解して分析できますか?
ROAは以下のように2つの要素に分解できます:
ROA = 営業利益率 × 総資産回転率
= (営業利益÷売上高) × (売上高÷総資産)
この分解によって、企業がどのような戦略で収益を上げているかが見えてきます:
1. 営業利益率:売上に対してどれだけ利益を確保できているか(利益率)
2. 総資産回転率:資産をどれだけ効率的に使って売上を生み出しているか(回転率)
企業によっては利益率重視型、回転率重視型、またはその中間型など、様々な戦略があります。
Q. ROAを時系列で見ることの重要性は?
企業分析において、ROAを単年度だけで評価するのではなく、時系列で見ることが非常に重要です。
時系列分析では主に以下の3つの視点で見ます:
1. レベル:ROAの水準が高いか低いか
2. ボラティリティ:数値のブレが大きいか小さいか
3. トレンド:上昇傾向か下降傾向か
例えば、通信業界の主要3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)のROAを時系列で見ると、全社とも下降トレンドにあることがわかります。これは業界全体として競争が激化し、かつてのような高収益構造が徐々に崩れていることを示唆しています。
このように時系列分析を行うことで、「今は利益が出ていても3年後はどうなるか」という将来予測の視点が得られます。
Q. 「フレンチレストラン」と「餃子屋」のどちらが儲かるビジネスなのでしょうか?
この質問は古典的なビジネスモデル比較として知られています。ROAの観点から見ると、実は両者に優劣はありません。
フレンチレストランの場合:
営業利益率:20%(高級店なので1回あたりの利益率が高い)
総資産回転率:0.5倍(立地が良い場所に店を構え、客の回転も遅い)
ROA:20% × 0.5 = 10%
餃子屋の場合:
営業利益率:5%(低価格なので1回あたりの利益率は低い)
総資産回転率:2.0倍(比較的低コストで開業でき、客の回転も速い)
ROA:5% × 2.0 = 10%
このように、ビジネスモデルは全く異なりますが、ROAで見ると同じ10%となります。つまり、資産に対する収益性という観点では同等のビジネスなのです。どちらが「良い」ということではなく、どちらの戦略を取るかは経営者の選択や市場環境によります。
Q. ディズニーランドとラウンド1のビジネスモデルの違いは?
オリエンタルランド(ディズニーランド)とラウンド1を比較すると、ROAは同程度でも、その内訳は大きく異なります。
オリエンタルランド:
営業利益率が非常に高い(チケット価格が高く、30年間で約3倍に値上げ)
総資産回転率は比較的低い
ラウンド1:
営業利益率は低い(料金が比較的安い)
総資産回転率が非常に高い(多くの顧客を回転させる)
一般的には、オリエンタルランドの方が「儲かっている」というイメージがありますが、それは営業利益率の高さによるもので、総資産に対する収益性(ROA)では両社に大きな差はありません。
これは、ビジネスモデルの違いであり、どちらが「良い」というわけではなく、それぞれが異なる戦略で同等の資産効率を実現しています。
Q. ROAに類似する指標はありますか?
ROAに類似する指標として「ROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率)」があります。
ROICは「投下資本(自己資本+有利子負債)に対する収益性」を測る指標で、ROAと近い概念です。近年ではROAよりもROICを重視する投資家も増えていますが、基本的な考え方は同じで、ビジネスの本質を理解するという点ではROAで十分です。
Q. 投資判断においてROAをどう活用すべきか?
投資判断においては、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)だけでなく、ROAを見ることが重要です。なぜなら、企業の真の収益力を測るのはROAだからです。
例えば通信業界のように、ROAが長期的に下降トレンドにある業界は、将来的な収益性の低下が予想されます。このような業界の企業に投資する際は、現在の業績だけでなく、将来の収益構造の変化も考慮する必要があります。
投資家としては、「PR・PBR・ROA」の3つの指標をセットで見ることで、より正確な企業価値評価ができます。そして最終的には、ROAを通じてそのビジネスの本質を理解することが、長期的な投資成功の鍵となります。