業界超分析
【業界超分析:半導体】日本企業7社の年収・働き方・社風
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2024年8月4日

人気業界と、そのトップ企業をよく知る専門家が、元社員と共に徹底分析していく。今回は「半導体」。後編では日本の半導体企業7社の年収・働き方・社風を解説。 <ゲスト> 長内 厚 早稲田大学商学学術院経営管理研究科 教授 大山 聡 東京エレクトロン出身 / グロスバーグ 代表 大澤陽樹 OpenWork...
半導体企業の年収や働き方は?東京エレクトロンに子供を入社させた元社員も登場
ソニーと東京エレクトロンは「超優良企業」、ルネサスは復活中、でも信越化学工業は社員の満足度が低め。半導体業界のプロたちが、日本の半導体企業の給与や働き方について語りました。
Q. 日本の主要半導体企業の現状は?
日本の半導体産業は1980年代後半に世界シェアの50%超を占めていましたが、現在は低迷状態です。しかし、コロナ禍の特需や人工知能関連のニーズ増加によって、一部企業は好調を維持しています。
主要企業を売上高で見ると、信越化学工業が2.4兆円と圧倒的で、東京エレクトロンが1.8兆円、ルネサスエレクトロニクス、ソニーセミコンダクタソリューションズと続きます。収益面では明暗が分かれており、レゾナックホールディングスは2023年12月期で営業赤字、東芝デバイス&ストレージも37億円と低迷しています。一方、ロームは売上は小さめながら営業利益率は約10%を確保しています。
組織面での評価は売上高とは異なる順位となっています。OpenWorkのデータによると、ソニーセミコンダクタソリューションズが1位、東京エレクトロンが2位で、これらは4点台に近い超優良企業です。3位から6位は東芝デバイス&ストレージ、ルネサスエレクトロニクス、レゾナック、ロームで、3点台前半とまずまずの評価です。最下位は信越化学工業で2.90点と日本企業の平均レベルとなっています。
Q. 半導体業界の給与水準はどうなっている?
OpenWorkに投稿されたデータによると、ソニーセミコンダクタソリューションズが最も高く、東京エレクトロン、東芝デバイス&ストレージ、ルネサスエレクトロニクスと続き、おおよそ800〜900万円の水準です。レゾナックは659万円、ロームは645万円、信越化学工業は623万円となっています。
ただし、半導体業界は離職率が極めて低いため(東京エレクトロンは約3%)、シニア層の高給与者も多く、会社全体の平均年収はこれより高い可能性があります。また、東京エレクトロンは最近新卒初任給を8万円引き上げるなど、給与体系の改善が進んでいます。
ソニーセミコンダクタソリューションズでは、30歳で1000万円に到達する人もいる一方、800万円程度で頭打ちになる場合もあり、実力が反映される傾向があります。東京エレクトロンはボーナスランキングで上位に入ることも多く、三菱商事と並んで高水準の報酬を提供しています。
ルネサスエレクトロニクスには家賃補助があり、旧来の日本企業の福利厚生の要素も残っています。レゾナックではジョブ型雇用を導入し、課長で1000万円を超える水準です。信越化学工業は年功序列色が強く、50代以降は報われる一方、中堅層の報酬は見直しの余地があります。
Q. ルネサスエレクトロニクスはどのように復活したの?
ルネサスエレクトロニクスは、かつての日立、三菱電機、NECの半導体事業部を統合した企業です。当初は従業員が4.7万人いましたが、リストラにより2万人弱まで削減しました。
さらに追い打ちをかけるように、東日本大震災でメイン工場が被災し、生産ができなくなるという大打撃を受けました。その後、産業革新機構の資金援助を得て立て直しを図り、現在の状態にまで回復しました。
経営戦略として重要だったのは、バラバラだった3社を真に1つの会社にしたことです。また、リストラを経て人員を適正化し、明確なビジネス戦略を打ち出したことが復活の鍵となりました。さらに、外資の買収も積極的に行い、古い日本企業の体質を払拭して企業文化も変革しつつあります。
Q. 東京エレクトロンとソニーの企業文化は?
東京エレクトロンの企業文化は「ベンチャーっぽい」と表現されます。特に部長職は責任が重く、若手が何をやってくるか分からない状況で全責任を負わされる立場にあります。
一方、自由度が高い環境でもあり、できる人に仕事が集中する傾向があります。「急ぎの仕事は忙しい人に頼め」という言葉があるほどで、忙しい人がさらに忙しくなる状況も生まれます。これを楽しめるかどうかが適性の分かれ目になります。
ソニーセミコンダクタソリューションズも東京エレクトロンと似た特徴があり、全体的に高評価ですが、人材の長期育成面ではやや評価が低めです。これは「ほったらかし」な面があり、良く言えば自由、悪く言えば放任という状況を反映しています。
両社とも年功序列よりも実力主義の傾向が強く、役職と実質的な影響力が必ずしも一致しない場合もあります。「公式の組織ではこの人が偉いけれど、実質的な中心人物は別の人」という状況が生まれることも珍しくありません。
Q. 半導体業界はどんな人に向いているの?
半導体業界、特に東京エレクトロンやソニーセミコンダクタソリューションズのような企業は、安定志向よりもチャレンジ精神のある人に向いています。技術の変化が激しく、新しいことに挑戦していくタイプの人が適性があります。
特に川下の業界になるほど市場の不確実性が高まるため、変化に対応できる人材が求められます。半導体業界は「狩猟民族」的なビジネス環境と言えるでしょう。
ただし、ロームやレゾナックのような化学系の要素が強い企業では、コツコツと研究を続ける「農耕民族」的な性格の人も活躍できます。会社によって文化や制度が異なるため、自分に合った企業を選ぶことが重要です。
Q. 半導体業界の転職事情は?
半導体業界は全体的に離職率が低く、多くの社員が1社に長く勤める傾向があります。これは専門性の高さが一因と考えられ、同業他社なら転職も可能ですが、異業種への転出は専門性を活かしにくいため少ない傾向にあります。
また、半導体業界の中でも各社の事業内容が異なるため、企業間での転職もしにくい面があります。ただし、近年は東京エレクトロンのような高給与企業の存在により、業界内での転職の動きも少しずつ出てきています。
半導体分析のエキスパートである大山氏は、東京エレクトロンから調査会社、証券会社へと転職した経験を持ちますが、これはスカウトがきっかけでした。その後、富士通に戻り、再び調査会社に移るなど、計8社を経験しています。
Q. 新卒者に半導体業界はおすすめ?
専門家たちは、現在の半導体業界は新卒者にとって大きなチャンスだと考えています。業界が大きく変化している時期であり、若いうちに面白い経験ができる貴重な機会です。
もし22歳で半導体企業に入るとしたら、専門家たちは東京エレクトロン、ソニーセミコンダクタソリューションズ、新興企業のラピダスを推薦しています。実際に東京エレクトロンの元社員は自分の娘にも同社を勧め、現在娘は東京エレクトロンのロンドン支社で働いているとのことです。
ただし、女性の働きやすさについては「まだまだ」という評価もあり、日本の半導体企業には変革の余地が残されています。グローバルで見れば、台湾のAMDの社長は女性であり、日本企業は多様性の面でさらなる進化が求められます。
Q. 日本の半導体産業は復活できる?
日本の半導体産業の復活可能性について、専門家は「技術力はある」と評価しています。あとはビジネス力をどれだけつけられるかが課題で、技術とビジネスで「5分5分」の勝負だと考えられています。
復活のためには、優秀な人材を世界中から集めることが重要です。ただし、スタンフォード大学の学部卒の新卒が年収2000万〜3000万円という状況の中、日本企業の給与水準では国際的な人材獲得競争に勝てない面もあります。
この問題の解決策としては、日本企業の給与水準を全体的に引き上げることが必要だと専門家たちは口を揃えています。技術力を活かし、グローバル人材を惹きつける魅力的な環境を整えることが、日本の半導体産業復活の鍵となるでしょう。