日本再興ラストチャンス
後編:幻想のリスキリング
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2024年2月4日

【collaborated with 経済同友会】 日本再興ラストチャンス。日本が失われた30年を経て、これからどのように経済を再興するべきなのか。経営者と有識者と対談を通じて、日本再興に向けた具体的なアクションプランを発信していく。 【Sponsored】
年功序列の終焉とAI時代のキャリア:変革期の日本企業と個人の指針
賃上げ、内部留保、リスキリング、プロ経営者の育成、そして女性活躍推進。現代の日本経済を巡るこれらのキーワードは、どれも激動の時代における企業と個人のあり方を問うものばかりだ。変化の速度が増す今、私たちは何を考え、どのように行動すべきか。経済界のトップランナーが示す新たなビジネスの視点を紹介する。
Q. 日本企業における年功序列制度は今後どう変化するだろうか?
過去30年とは全く異なる未来が訪れる。企業が優秀な人材を引き留めるためには、年功序列の慣習を打ち破り、成果に見合った賃上げを断行する必要がある。転職市場が活発化し、個人の市場価値が可視化される中で、年功序列に固執する企業は優れた人材から見放されることになる。この人材流出は、特に大企業にとって喫緊の課題であり、その変革スピードは想像以上に速いと予測する。
この変化は避けられない。これまで「動かざる」と思われた大企業も、人がいなければ事業が立ち行かなくなるという現実を突きつけられれば、一斉に改革へと舵を切るだろう。それは日本企業の良い側面であり、悪い側面でもある「右へ倣え」の特性が、ここでは良い方向に作用する可能性がある。
Q. なぜ多くの日本企業は膨大な内部留保を抱え込んでいるのだろうか?
日本企業の内部留保は2022年に過去最高の555兆円を記録した。この巨額の資金の多くは、単に眠っている現預金ではなく、様々な形で資産として投資されている。しかし問題なのは、バブル崩壊時の資金繰りの苦労が「負の伝承」として経営層に引き継がれ、投資をせず現預金を貯め込むことに美徳を見出す経営スタイルが根付いた点だ。これは成長を阻害する大きな要因となっている。
企業が現預金をため込む背景には、万が一に備える「バッファー」として確保する側面と、国内外への戦略的な投資による資産形成という二つの側面が混在する。前者のような、ただ漠然と貯蓄するだけの企業は、今後の厳しい競争を生き残れないだろう。人材、R&D、生産設備、サービスといった多岐にわたる分野へ積極的に投資する企業こそが、次の30年で勝ち残れるのである。
Q. リスキリングによって本当に個人の給料は上がるのか?
「リスキリング」という言葉の解釈には注意が必要だ。これは二つの異なるタイプに大別できる。一つは、業務で使うアプリケーションやシステムが進化する中で、常に学び続け、スキルをアップデートする「歯磨き型リスキリング」だ。これは現代社会を生きる誰もが実践すべき当たり前の習慣である。もう一つは、キャリアを劇的に転換するために全く新しいスキルを習得する「キャリア転換型リスキリング」である。
後者のキャリア転換型には落とし穴がある。かつて「これからはプログラミングだ」「英語ができれば有利だ」と言われ、多くの人が時間と費用を投じたが、生成AIの登場により、それらのスキルは短期間で陳腐化する可能性が指摘されている。トレンドを追うだけの安易なキャリアチェンジは、むしろ危険な「夢物語」に終わるリスクが高い。
Q. AIが進化する時代において、私たちは何のために働くべきか?
AIの進化が加速する今、個人は「何のために生きるのか」という哲学的な問いと向き合うことが一層重要となる。リスキリングで新しいスキルを習得する前に、自身の「パーパス(目的)」を明確にしなければ、獲得するスキルも空虚なものになりがちである。賃上げや給料そのものは生活の手段であり、人生の最終目的ではないことを認識する必要がある。
日本はこれまで、経済成長率や企業の時価総額といった海外から輸入された「物差し」で自らの価値を測ってきた。他者の作ったゲームのルールに則って戦うのではなく、自分たちにとって何が価値あるものなのかを独自に定義し、それを言語化、さらには数値化する努力が求められている。これができない限り、真の豊かさを追求することは難しいだろう。
Q. 日本ではなぜプロの経営者が育ちにくいのだろうか?
プロの経営者とは、製造やマーケティングといった特定の専門分野に長けているだけでは務まらない。組織全体を俯瞰し、異なる事業や部門を横断して経験するジェネラリストとしての能力が不可欠である。しかし日本では、同一企業内でキャリアを積み上げ、専門分野からトップに上り詰めるケースが多く、多様な経験を持つ真のプロ経営者が育ちにくい傾向にある。
外部からの視点が不足し、執行役員が皆似たようなキャリアパスを辿っている同質的な組織では、ダイバーシティに欠け、大きな変革を起こすことが難しい。若者がプロ経営者を目指すのであれば、まず人に投資し、多くの面白い仕事を任せてくれる企業を選び、そこで3年から5年間徹底的に仕事と向き合うべきだ。そこで得た経験と思考力をもとに、次なるステップ、すなわち起業や他社でのキャリアアップを主体的に考えることが、成功への道となるだろう。
Q. 企業が推進する女性活躍の真の目的は何を意味するのか?
女性活躍推進の真の本質は、企業の「評判作り」や「数合わせ」ではない。多様な視点、すなわち異なるバックグラウンドを持つ人々が意思決定に加わることで、新たな発想やイノベーションが生まれることにこそ最大の価値がある。日本企業にとって、これまで十分に活用されてこなかった女性人材は、組織変革の大きな可能性を秘めたリソースなのだ。
企業は、ダイバーシティを進めることで生まれるイノベーションという本質的な目的を見据え、形式的な議論に終わらず、多様な人材が真に活躍し、本質的な議論ができる環境を整備していく必要がある。それこそが、これからの企業成長に不可欠な要素だ。