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2023年11月14日

Video Podcast番組「PIVOT SESSION」。 株式会社Nint エンタープライズディビジョン マネージャー 川島 和弘さんに「EC売上最大化のためのデータ分析」について聞きました。 【SPONSORED】 <目次> 03:20 メーカーが抱えるEC事業拡大を阻む3つの課題 12:...
日本はアジアやアメリカと比較してECの可能性を活かしきれていないと指摘される。かつての流通が複雑化し、消費者行動が多岐にわたる現代において、ECで成功する企業とそうでない企業の二極化が鮮明だ。このような状況を乗り切るためには、勘に頼らないデータに基づいた戦略的な意思決定が不可欠である。
本稿では、ニントの川島氏が語るEC事業拡大における3つの課題、そしてデータ分析を「比較と因数分解」と捉える具体的な手法に迫る。
日本企業は長らくオフライン販売におけるPOSデータ活用が進んできたが、ECデータに対する理解や活用は発展途上にある。多くの企業にとって「データドリブン」という言葉が持つ難解なイメージが障壁となっている側面があるのだ。
しかし、オンラインシフトと流通の複雑化により、消費者の購買行動は劇的に変化した。もはや「勘と経験」に頼る時代ではない。データに基づき現状を正確に分析し、具体的なアクションに繋げる企業だけが、EC市場で勝ち残ることができるのである。
メーカーが直面する3つの課題は「流通の複雑化」「最終消費者の不可視化(セルアウト問題)」「OMO戦略の欠如」である。かつてはメーカーから販売店、そして消費者へと流れるシンプルな構造であった流通は、オンラインの登場により激変した。メーカー自身がオンラインで直接販売するD2Cの出現、さらに意図しない二次流通(現金問屋、せどりなど)の増加により、自社製品が誰の手に、どのようなルートで渡っているのかが見えにくくなったのである。
この把握不能な状態は、価格戦略、在庫管理、ブランドイメージ構築といった事業戦略全体に悪影響を及ぼす。メーカーは自社の製品が市場でどのように動いているかを正確に捉えることができず、的確な意思決定が難しくなるのだ。
消費者行動は「ショールーミング」に代表されるように、オンラインとオフラインを自由に横断するよう変化している。店舗で商品を見てオンラインで購入する、あるいはオンラインで探して実店舗で確認するといった行動が常態化した。
しかし、多くの企業ではEC部門と店舗部門が縦割りになっており、このような消費行動は社内での「縄張り争い」を引き起こす要因となる。例えば、店舗スタッフの丁寧な接客がオンラインでの購入に繋がった場合、その売上は誰の功績になるのか不明確になるのだ。
この問題を解消するためには、経営トップが顧客視点で事業全体の戦略を再構築し、組織や評価制度の最適化が必要である。ユニクロが店舗には置かない大きいサイズの衣料品をEC限定で販売するような、オンラインとオフラインそれぞれの強みを活かした戦略的な品揃えと役割分担が、OMO戦略成功の鍵を握るだろう。
データ分析は決して難解なものではなく、シンプルに「比較」と「因数分解」に集約される。企業は往々にして自社のデータのみを見て一喜一憂しがちだが、これは鏡に映った自分だけを見ているようなものであり、客観的な評価が不可能だ。
自社のデータを、競合他社、市場トレンド、ジャンル全体と比較することで、初めて自社の立ち位置を正しく把握できる。例えば、自社の売上が20%伸びても、市場全体が50%成長していればそれは「負け」と捉えるべきだ。逆に市場が縮小する中で5%でも成長していれば「大成功」と評価できる。
まずは自身の商品が属するジャンル全体、さらにはより上位のカテゴリ(ファッション全体など)から視野を広げ、市場の動向を俯瞰するファネル分析の視点を持つことが重要である。この「比較」なくして正確な現状把握と次の一手は導き出せない。
ECの売上は「品揃え × 閲覧数 × 転換率 × 単価」という4つの要素に因数分解できる。この方程式においてニントが最大の特徴とするのが、あらゆる施策の起点に「品揃え」を置いている点だ。
オフラインの小売店がチャネルによって品揃えを変えるように、オンラインのECモール(Amazon、楽天、Yahoo!など)でもそれぞれ顧客層が異なるため、最適な品揃えが求められる。各モールの特性に合わせて商品構成を最適化する戦略こそが、売上向上への第一歩である。
また「値引き」は一時的な「転換率向上」のための広告施策と位置付け、「単価」はメーカーが利益を確保し、次なる研究開発へ投資するための「本来売りたい価格」と明確に区別すべきである。この2つを混同すると安売り競争に陥り、企業の持続的な成長を阻害しかねない。
ニントのデータは、楽天、Amazon、Yahoo!といった主要ECモールの公開情報を独自にクローリングし、これに独自の推計テクノロジーを組み合わせることで、商品単位の売上データまで算出する「推計データ」である。日本のEC市場の約7割をカバーしており、特定のモールに偏らない公平で客観的な市場分析が可能だ。
このデータツールを用いることで、特定のECジャンルの市場規模、月次の売上トレンド、価格帯ごとの競合シェアといったマクロな視点から、個別のメーカーやショップ、さらには特定商品の販売実績までを可視化できる。
これにより、企業は市場全体の中での自社の位置付けを正確に理解し、クリスマス商戦やブラックフライデーといったイベント時期に合わせた在庫・販売戦略を策定できる。さらに、オフラインでの知名度に関わらずオンラインで高い実績を上げる「隠れた有力プレイヤー」を発掘し、新たなアライアンスやパートナーシップ構築にも繋げることが可能である。
日本のオンライン市場は、コロナ禍を経て約14兆円規模に成長し、コンビニエンスストア市場をも超えるまでに拡大した。しかし、そのポテンシャルはまだ十分に発揮されていない「伸びしろしかない」状態だと考えられている。
データ活用は、日本の素晴らしい商品を持つメーカーが、その価値を正しく顧客に届けるための強力な羅針盤となるだろう。勘や経験に頼っていた意思決定プロセスにデータが加わることで、ケルヒャー社のように意思決定のスピードと精度が飛躍的に向上する事例も生まれている。
オンラインとオフラインの連携を強化し、隠れた有能な販売者と共に市場を活性化することで、日本のEC市場はさらなる成長を遂げ、経済全体に大きな恩恵をもたらす可能性がある。データドリブンなアプローチが、日本のビジネスの新たなフェーズを切り開く原動力となるだろう。