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多国籍チームはメンター制で束ねよ
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2023年10月13日

Video Podcast番組「PIVOT SESSION」。 元ラグビー日本代表キャプテン 廣瀬俊朗氏が、ブリヂストン社員の「チームビルディング」に関する悩みに回答します。 世界で戦うチームを作る「メンター制度」とは? 【SPONSORED】 <ゲスト> 廣瀬俊朗/ 元ラグビー日本代表主将、株式...
「普通」が阻むチームの一体感を醸成する秘訣
現代ビジネスにおいて、多様な人材が真に力を発揮するためには、単なる「仲良しグループ」ではない強固なチームビルディングが不可欠だ。特に、働き方や価値観の多様化が進む今、「一体感のある職場作り」は多くの企業にとって喫緊の課題となっている。
本記事では、ラグビー日本代表という極めて多様なバックグラウンドを持つチームをまとめた経験を持つ元主将の広瀬氏と、企業の現場で日々チームビルディングに頭を悩ませるブリヂストンの鳥山氏の議論を通じ、「一体感のある職場作り」の真髄を明らかにする。
Q. 多様な意見を引き出し、チームの一体感を醸成するには何が必要か?
多くの職場で見られる悩みが、マジョリティが無自覚に使う「普通」という言葉が、マイノリティや異なる視点を持つメンバーの発言を躊躇させてしまう点である。ラグビー日本代表チームでも、海外出身選手はマイノリティになりがちであったと広瀬氏は語る。こうした状況を打開する第一歩は、マイノリティがストレスを感じない環境を意識的に構築することだ。
例えば、異なる言語を話す選手に対し、その国の言葉で挨拶を交わすといった行動は、彼らが「仲間として受け入れられている」と感じる上で非常に有効であった。また、全員で日本の国歌を練習したり、互いの国の料理や文化を知る努力をしたりすることも、共通の理解を深めるきっかけとなる。これらは、「どちらが偉い」といった優劣を排除し、全員が共に何かを創り上げていく場を作る上で不可欠な要素である。
Q. メンバーが積極的に発言できる環境はどのようにして築けるのか?
日本人が意見を表明することに慣れていない現状を認識し、段階的なアプローチで心理的安全性を醸成することが重要である。エディー・ジョーンズヘッドコーチのもと、かつてラグビー日本代表では、ミーティングで発言せず、後から個人的な不満を漏らす傾向が見られた。これに対し、広瀬氏が導入したのが「メンター制度」である。
まず二人一組のペアを作り、互いに何を言っても許され、意見を聞いてもらえる環境を設定した。これにより、メンバーは「意見を言う」ことに慣れる訓練を積むことができる。この小さな単位から始め、徐々に四人組、八人組とグループの規模を拡大していくことで、心理的ハードルを下げ、チーム全体として意見を表明しやすい文化を築いていくのだ。
Q. 言葉にならない思考を可視化し、共通認識を生む方法は?
メンター制度で話し合った内容を、Evernoteのような共通プラットフォームに記録し、思考を言語化・可視化する取り組みは、チームに大きなメリットをもたらす。この実践により、メンバーは他の誰が何を考え、どのように思考が変化してきたかを理解できる。さらに、こうした明文化は「普通とは何か」「良い練習とは何か」といった抽象的な概念の共通認識形成に役立つ。
例えば、練習後に各メンバーが10点満点で今日の練習に点数を付け、その点数の根拠を記述するプロセスを設けた。もし5点と評価した場合、なぜその点数なのか、次回どう改善したいのかを言葉にするよう促すことで、自身の意見を明確にし、アウトプットする機会を創出した。これは、思考の透明性を高め、チーム全体のパフォーマンス向上に直結する有効な手段である。
Q. 意見を聞く際にリーダーが取るべき最も重要な姿勢とは何か?
メンバーの意見を引き出す上で、リーダーの態度は決定的に重要だ。広瀬氏は、最も大事なことは「まず聞く」ことであり、「良い」「悪い」といった判断をせず、フラットな姿勢で意見を受け止めることだと強調する。聞かれた意見をすぐに評価したり、表情で良し悪しを示したりすると、発言者はそれ以上の発言を控えてしまう。「言ってくれてありがとう」という感謝の気持ちを伝えることが、発言すること自体が歓迎される文化を醸成し、心理的安全性を高めるのだ。
意見がチームにとって有益かどうかは、その後で冷静に検討すればよい。この二段階のアプローチ、すなわち「まず聞く」「それから評価する」が不可欠である。また、リーダーは日頃から「この組織の存在意義は何なのか」「その目標達成後にどのような未来が待っているのか」といった根本的な問いをメンバーと共有し、対話を重ねることが重要だ。目の前のタスクだけでなく、より上位の目的意識を共有することで、多様な意見が意味を持つ羅針盤となる。
Q. 「雑談は無駄」と考えるメンバーとの一体感はどうすれば生まれるのか?
雑談の捉え方には、「有益」と考える者と「雑音」と捉える者の間で大きな隔たりがある。これは、多くの場合「雑談」という言葉に対する定義のずれに起因すると考えられる。広瀬氏は、まずは「我々にとっての雑談とは何か?」をチーム内で問いかけ、その意味をすり合わせることから始めるべきだと提言する。
リーダーが「この雑談にはどんな意味がある」と明文化することで、認識のギャップを埋めるきっかけとなり、互いの価値観を理解することにつながるだろう。また、チームの一体感は必ずしも画一的な行動や見た目に集約されるものではない。一匹狼タイプの「職人肌」のメンバーも、その役割と仕事に対するプライドを尊重し、「ありがとう」「良い働きだった」と適切に感謝を伝えることが、彼らをチームの一員として機能させる上で重要である。多様な働き方や価値観を受け入れることが、真のチームビルディングへの道となる。
Q. 心理的安全性を高め、フラットな対話を促す具体的な環境設定とは?
心理的安全性の構築には、物理的な環境設定も大きな影響を与える。例えば、ラグビー日本代表チームが実践した「靴磨きミーティング」のように、全員が輪になって座ることは非常に有効な手法であった。円卓を囲むことで、役職による上下関係がなくなり、全員の顔が見えることで自然と会話がしやすくなる。日本の伝統的な会議でありがちな、最も偉い人が中央に座り、序列が明確になる配置とは対照的だ。
また、リーダー自身が意識的な行動を取り続けることも不可欠である。広瀬氏は、キャプテン時代に「一日一言、全員に声をかける」ことを目標としていた。これは、完全に毎日達成できたわけではないが、この試みにより各メンバーの状況を把握し、細かな変化や問題を察知することにつながった。こうした小さなコミュニケーションが、メンバーの孤立を防ぎ、チーム全体のつながりを強化していくのだ。
Q. チームの変革はどのように段階的に進めるべきか?
チーム全体の変革を一気に実現することは難しい。大切なのは「小さくても少しずつ」アクションを起こし続けることである。目の前の大きな壁に圧倒されるのではなく、まず自分が手が届く範囲から改善を試み、そのプロセス自体を前進と捉える視点が求められる。
行動がすぐに目に見える成果に結びつかなくても、その挑戦と努力のプロセスは決して無駄ではない。行動そのものが周囲にポジティブな影響を与え、やがて大きな変化へとつながる土台となるのだ。仮説を立て、まずは行動に移し、そこから得られるフィードバックをもとに再構築するという試行錯誤を繰り返すことが重要である。動いてみて初めて理解できることが多く、プロセスを重視する姿勢がチームを持続的な成長へと導く。