
【ブンデスリーガ展望】バイエルンの革命。日本人14選手の展望
バイエルン独走?新生ブンデスリーガを紐解く今季の展望と日本人選手たちの挑戦
ブンデスリーガ2024-2025シーズンは、バイエルン・ミュンヘンのリーグ優勝がすでに確実視される異例の状況で開幕した。ブックメーカーのオッズも彼らの圧倒的優位を示しており、ドイツ国内での覇権争いは例年になく単調に思えるかもしれない。
しかし、ピッチ上の戦術革命や欧州リーグ全体の政治経済学、そして日本人選手たちの進出と奮闘が複雑に絡み合い、今シーズンのブンデスリーガは戦術的にもビジネス的にも、かつてないほどの高解像度な見どころを秘めている。
この記事では、動画で語られた専門家たちの知見を基に、バイエルンの最先端戦術からドルトムントの若手育成、フランクフルトの内情、そして最多記録を更新した日本人選手たちのサバイバルに至るまで、2024-2025シーズンのブンデスリーガを多角的に分析する。

Q. バイエルンのリーグ優勝は確実視されているが、今シーズンのブンデスリーガの見どころは何か?
開幕前の優勝オッズではバイエルンが1.08倍という「賭けとして成立しない」ほどの圧倒的本命となった。彼らが今シーズン最も強力なスクアッドを持つことは疑いようがない。しかし、真の見どころは、ブンデスリーガがプレミアリーグの過度なフィジカル化に対するカウンターとしての魅力を持っている点にある。イングランドでは「うまい選手がプレミアリーグに来なくなるのではないか」という指摘がなされているが、ブンデスリーガでは依然として創造性やテクニックが重視される環境が保たれている。
また、コンパニー監督率いるバイエルンが「欧州チャンピオンズリーグで革命を起こせるか」も焦点である。そのためには、国内の他チームがバイエルンを徹底的に苦しめ、戦術的な弱点をあぶり出し、常に成長を促すような切磋琢磨が不可欠だとされる。ブンデスリーガの個性を守りつつ、欧州の頂点を狙うという挑戦が、今季のドイツサッカーの根幹をなしていると言えるだろう。
Q. バイエルンが推進する「ハリケーンフットボール」とはどのような戦術で、その核となる選手は誰か?

バイエルンが展開する戦術は「ハリケーンフットボール」と呼ばれ、全ての選手に徹底したハードワークと走力が義務付けられる極端なアグレッシブさが特徴だ。彼らはボール支配率と走行距離の両方でリーグトップを記録しており、従来の「ボールを持つチームは走らない」という常識を覆している。この戦術の核心は、ハリー・ケインを中心に選手たちが極めて流動的にポジションチェンジを繰り返すことにある。ケインが時に最終ラインまで下がり、他の選手が空いたスペースを狙うことで、相手守備陣に「カオス」と呼べる状況を発生させる。
特に新加入のブラウンがこの戦術で輝きを見せている。サイドバックが主戦場だったブラウンがトップ下に配されることで、万能性の高さから予測不能な動きを見せ、前線に捕まえどころのないカオスをもたらす。絶対的エースであるムシアラが不在の場合でも、ケインの自由な動きとカオス的な連動性が最大限に生かされるという逆説的な状況も存在する。しかし、守備面ではオールコートマンツーマンがセンターバックに大きな負担をかけ、負傷リスクや選手層の薄さが懸念されている。欧州制覇を目指す上で、このリスクをどう管理するかが重要である。
Q. ドルトムントの若手育成戦略は、どのように変化しているのか?
ドルトムントは「ジェネレーション・ベリンガム」をテーマに、次世代のスターを育成する戦略を明確に打ち出している。以前はイングランドから多くの若手選手を獲得していたが、ブレグジット(英国のEU離脱)によって18歳未満のイングランド人選手の獲得が難しくなった。これを受け、ドルトムントは新たなタレント発掘の場としてイタリアに注目した。
イタリアのセリエAは若手が活躍しにくい環境にあるため、ドルトムントはレジャーニ、マネ、イナシオといった若いイタリア人タレントを積極的に獲得した。さらに、単に安く買い叩くだけではなく、才能のある若手選手には惜しみなく巨額の移籍金を支払い、クラブOBのスカウトネットワークも活用している。また、ピッチ外での選手の生活ケアにも力を入れ、私生活の不安を取り除く専門スタッフをユース部門に増員するなど、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整備している。注目株の一人であるカレツァスのような、トリッキーな発想と個の力を持つ選手を重視する姿勢が窺える。これにより、高年俸のベテラン選手を放出しつつも、未来の覇権を見据えた投資を続けている。
Q. フランクフルトにおける日本人選手の状況と、クラブの内情にはどのような課題があるか?

フランクフルトはかつてフリーで獲得したコロ・ムアニを約170億円で売却するなど、卓越した手腕でクラブに巨額の利益をもたらしたクレッシェGMが退任危機に直面しており、クラブ内部が大きく動揺している。退任の背景には、リエラ監督の招請失敗(堂安律に対するパワハラ的な言動、若手への罵倒、メディアへのプライベートな情報リークなど)、GM自身のミラン移籍画策、そして新ヒュッター監督との確執などが挙げられる。
この内部の混乱は日本人選手の去就にも影響を及ぼした。特に堂安律のサウジアラビア移籍が土壇場で破談となったケースはその典型だ。個人合意には至っていたものの、アル・イテハド側がフランクフルトとの移籍金交渉で出し渋りを見せた結果、堂安本人が自身の価値への敬意の欠如を感じて翻意した可能性が推測される。さらにリエラ監督による私生活の暴露など、フランクフルトでの不愉快な経験も少なからず影響したのかもしれない。新監督ヒュッターの「4-2-2-2」戦術に若手の小杉選手が適応し、主力として台頭しているものの、クラブを取り巻く環境は不安定である。
Q. ブンデスリーガで活躍する日本人選手たちの現状と、今後の展望は?

今シーズン、ブンデスリーガでは外国人選手の中で日本人が3番目に多く、これは過去最多の数字である。その背景には、デュッセルドルフを中心とした日本企業のスポンサーマネーを狙った各クラブのビジネス戦略があるとも指摘される。日本人選手たちの状況は多様であり、それぞれの場所で奮闘を続けている。
バイエルンの伊藤洋輝は、高いレベルでの左センターバックの控えとして厳しいポジション争いに身を置く。クラブはアカデミー出身者重視の方針転換もあり、移籍も容認する姿勢だが、本人は残留を希望している。一方、マインツの佐野航大は日本人最高額となる約90億円という高額な市場価値が設定され、移籍が難航した。これはJリーグから直接5大リーグに移籍する選手がクラブ側に高額な移籍解除金を設定され、後のステップアップが阻害される「交渉の罠」が存在することを示唆している。
ボルシアMGは、板倉滉をはじめとして橋岡、宇野、町野の日本人選手4名を擁し、日本人ネットワークを駆使した「対日本ビジネス」を強化している。中でも鈴木唯人(フライブルク)は開幕戦ハットトリックという衝撃的な活躍で「絶対的な王様」として君臨、日本代表の新たなトップ下候補としてのポテンシャルも示す。フライブルクには他にも後藤や山本がおり、チーム内で日本人選手同士の激しいポジション争いが展開され、欧州カップ戦での活躍にも期待がかかる。
2部のシャルケでは田中がレギュラーとして奮闘し、ホッフェンハイムの町田は怪我からの完全復活を目指している。ヴォルフスブルクの町野は2部での戦いを強いられるが、かつて本田圭佑がオランダ2部で苦難を乗り越え飛躍したように、ここでの経験が自身のキャリアを形成する重要な一年となると見られている。