
2023/01/24
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――第1話では、Gaudiyの給与の決め方と、目標設定のユニークな仕組みについて聞きました。上司部下というピラミッドはないわけですね。どんな組織なんでしょうか。
石川裕也CEO(以下同)もともとは完全にフラットな組織でしたが、会社が大きくなり、チームごとにリーダーは必要だということで、投票でリーダーを決める仕組みにしました。2022年11月に入れたばかりです。

リーダーには「縦軸」と「横軸」があります。
横軸は、フィーチャーチーム。開発機能ごとに小さなスタートアップがたくさんあるとイメージしてください。PdMがCEOのような存在で、UIデザイナー、UXデザイナー、スクラムマスターなどのメンバーが含まれます。PdMはチームの投票で選ばれ、成果に責任を持ちます。

PdMはビジネス畑の人がやって、技術系の人はやらないという習慣は嫌なんですよね。この仕組みなら、UIデザイナーやエンジニアがリーダーになれるのがいい。
縦軸は、エンジニアやUIデザイナーなど、職能ごとのグループです。つまり、エンジニアという職能のリーダーはいわゆるCTOの役割です。
これも投票で決まります。職能のリーダーは、その職能の人が最大限のパフォーマンスを発揮するための教育と人事に責任を持ち、各フィーチャーチームの人事異動も随時行えます。采配がうまくいった結果プロジェクトで成果が出たら、職能のリーダーも評価されます。

上を騙す人じゃなくて、チームのなかで信頼される人がリーダーになる。自分たちが選んだ人の意思決定は尊重する、そんな組織です。
――投票だと、みんなにとって優しい人が選ばれませんか。それでもいいですかね。
いや、そうはならないですよ。リーダーには、目標達成(Performance)と、集団維持(Maintenance)の2つの能力があるというPM理論に基づくと、両方のバランスがいい人が選ばれます。年齢が高くて経験豊富な人が選ばれやすいということもないです。
――PdMが人事権を持たないのはなぜですか。
PdMは成果を出すために強いメンバーがほしい。人事権を持ったら取り合いでギスギスすることもあるでしょう。でも、職能ごとのリーダーはすべてのプロジェクトの事情を鑑みて全体最適を考える。均衡が保たれます。
さらに3期連続(1期3カ月程度)でリーダーを務めたら強制的に変えて、循環させる仕組みも考えています。いろいろな人にチャンスが来て、リーダーを経験するほうが目線が上がりますから。
――ますます斬新ですね……。リーダーになりたくないという人が選ばれたらどうなりますか。
「やりたくないならやらなくていい」という考え方には、僕は明確にNOと言います。あなたがリーダーに適していると、チームが期待した結果を「個人プレーが好きで」と、自己の利益を追求するのは違います。それに、幸福は頼り頼られることで生まれますよ。リーダーに向いていないなんて、勝手に思い込んでいるだけです。
CEOも投票で決まります。他に選ばれる人がいたら、交代しますよ。CEOだけは除外したらという意見もありましたが、フェアじゃない。投資家に言うと「変わらないでね」と苦笑いされますが……。
――徹底的にフェアですね。斬新な仕組みに納得する、カルチャーフィットした人ばかりを採用できるのはなぜですか。ひとりくらい、「投票なんてやってられない、社長が決めろ」と言い出しそうですが……。
「お試し入社」の仕組みのおかげだと思います。Gaudiyは入社後1〜3カ月後に、「この人と一緒に働き続けたいか」を全員で投票します。ひとりでも×をつけたら、働き続けることはできません。
全員に、一緒に働く人に対してコミットしてほしいからです。よくある会社のもめごとで、「なんであの人採用したんだ」というやつ、僕は嫌いなんです。この言い訳が一切でない組織にしたかった。
これも、合理的に考えた結果です。もちろん、面接でもお互いに合うかを確認しますが、「面接で人を見極めるのは難しい」とみんな思っていますよね。それなら「3カ月も一緒に働いたら分かるでしょ」と、シンプルに考えただけです。
――実際、×がついて辞めた人はいるんですか。
会社から×がついた、または本人から退職の意向があり、お試し期間で終了する人は2割弱います。その際は2つ選択肢があり、ひとつは転職先が決まるまで給与を払い続けます。もうひとつは、その時点で仕事は辞めて、2カ月分の給与を受け取れます。
僕らが見極めるだけでなく、入社した人もGaudiyが自分に合うかを見極める期間。入ってみないと分からないことはあります。例えば、Gaudiyはスーパーフレックス制度の会社で、働き方は完全に自由。でも、実際はみんなハードワークです。他人と自分の働き方の差が気になる人にとっては、居心地が悪いかもしれません。
――これも愚問な気がしてきましたが、好き嫌いで×をつける人はいないんでしょうか。もしくは誰しも欠点があって、それがだんだん目につき、みんな×がついてしまうとか……。
好き嫌いで×つける人はいないですよ、全員この仕組みで入社していますから。つけたら理由を聞きますし。そんな人がいたら、僕は「面白い、こんな行動する人なんだ」と思います。意外にみんないい人です(笑)。
ちょっとでも欠点があったら×つけてやろうなんて、それは自分へのブーメランです。僕も含めて欠点がある人しかいません。欠点も含めて一緒に働きたいか、欠点を上回るポテンシャルがあるかを考えて、それでも×をつけるなら何か理由があるはずです。
それと、この仕組みはスタートアップでよくあるハレーションを防げます。
最近は、すごいバックグラウンドを持つ優秀な人も多く入ってくれるようになりました。自分の型を持っていて、会社の課題も分かる。すると往々にして、早くパフォーマンスを出したいと、ギアが入って空回りしている状態になります。「こんなやり方ダメだ」と、従来を否定するとか。
成果を出したいのは当たり前。でも、他の人を傷つけてまで成果を出すなんて、焦る必要は全くないんです。3カ月後に全員の投票があるから、まずカルチャーフィットだけを考えてと言うことで、ハレーションはなくなります。
カルチャーフィットしない人は残らない仕組みなので、斬新な人事制度も「やってみたい」とワクワクする人がほとんど。Gaudiyは実験組織であると考えており、ユニークな人事施策もすべて実験です。そういうカルチャーがなくなり、変更しないことを望む人が増えたらこのやり方は崩壊すると思います。
――給料は自己申告で上げられる、優しい会社だと思っていましたが、リーダーの決め方、お試し入社の仕組みも含めて、厳しさも感じました。
厳しいですよ。Gaudiyで最近始めた仕組みに、「蟲毒」があります。新しい制度や企画を通す際、複数のメンバーがそれぞれのプランを完璧に仕上げてプレゼンするという、意思決定のプロセスです。お互いに、嫌な質問をするのがルール。たたき台を持ってきた、というのは許されません。

考え抜いたプランでないと、ボロボロに突っ込まれて泣きそうになります。どれを土台にすべきか皆に選んでもらい、さらにGaudiyらしいか、思考と理論武装をよりできているかなどの指標を加え、いずれかを採用します。
人事評価には関係ありません、でも、負けたくないですよね。若手は嬉々として力を試し、ベテランも負けられないから必死で考えてきます。
一つの案のやるかやらないかを議論した場合、CEOやCOOでも50%以上間違った選択をする、でも、異なる選択肢があれば、判断を間違える可能性は32%に下がるという研究があります。圧倒的に企画の質と意思決定スピードが上がりました。「たたき台をもとに話し合う」というのでは遅いんです。
「つべこべ言うならお前がやれよ」という文句もなくなります。みんながプランを出すので。戦略を立てるタイプじゃないと思っていた人が思わぬ力を見せることもあります。僕もプランをしょっちゅう出しています。負けず嫌いなので、必死に考えていますよ。
――人事評価と給与を結び付けなくていいという証左かもしれませんね。フェアであろうとする、大事なことを投票で決めるという文化は、Gaudiyの事業でDAO(分散型自立組織)を大事にすることと関係がありますか。
ありますね。「コンウェイの法則」でもわかるように、開発組織の形は、そのままプロダクトの性質につながります。僕たちがつくるプロダクトは、ユーザーのコミュニティを大事にして、ユーザーも運営に参加するといったDAOの要素が強く、ピラミッド型の組織ではそれはつくれません。

本来、株式会社ってこうあるべきだと思うんですよ。トップダウンで、「企画通したいから、社長が好きそうな案にしよう」とみんなが思っている会社なんて、まったく本質からずれているじゃないですか。
僕はCEOとして「正しいと思うこと」は言いますが、「自分が正しいとは限らない」ことも知っています。自分の意見ではなくみんなの判断に従った結果、うまくいった例なんてざらにあります。
人事制度も、間違ったと思ったらすぐに変えます。ひとり離職者が出たときに、目標設定の仕組みを入れたように、「何か悪い方向に行っている」と気づくのは早いです。