
2022年12月15日
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新規参入やサービスの拡充によって、HR施策として導入企業が増えているコーチング。
ただし、せっかく導入しても定着しなければ意味がない。
定着し、継続的に効果を生むための「コーチング導入のコツ」とは何か。
SAP人事コンサルティング事業の北アジアトップ、江崎グリコ執行役員グループ人事部長を経て、現在は人事戦略アドバイザーとして活躍するWake Consulting代表の南和気氏は、「まずは目的の明確化が不可欠」と強調する。

「コーチングは日本の企業社会では新しい人材育成の手法であり、受けた経験のあるビジネスパーソンは少数派です。また、組織での階層が上がるほど、『人に何か言われて、自分を変えるつもりはない』と拒否感を抱く方も少なくありません。
だからこそ、コーチングを受けることでどんな変化、進化を手にできるのか、イメージを描いて共有する努力が必要です」
重要なのは受ける本人の動機付けなのだが、常に成果を出し続けて昇進してきたリーダーは、コーチングを受ける必要性を感じにくいというジレンマがある。
しかしながら、過去の成功則が通用しない今の時代においては、多様な価値観や新しい理論、発想法を吸収し、意思決定の精度を高めなければならない。
「自分一人だけではたどり着けない気づきや発見を得られるメリットを実感してもらうことが、導入の第一歩になる」

そのために、南氏が勧めるのが「短く始めて、長く続ける」というアプローチ。
「例えば、1カ月だけ試しに体験してみるなど、効果をチェックする期間を設けてみるといいと思います。
正しく効果測定するためには、『どんな変化を期待するのか』のゴール設定を事前にすり合わせることがポイントです。
試してみて期待を満たすだけの効果を、本人と会社が合意できたら継続を決めることができるでしょう」
もちろん、コーチとの相性の問題もある。
優れたコーチを見極めるコツとして、南氏は「特にエグゼクティブ層に向けたコーチングを設定する場合、対象者と同等かそれに近い実務経験のあるコーチを指名したほうがいい」とアドバイスする。
状況の理解や共感ができるコーチのほうが、信頼関係を築きやすいからだという。「大企業の経営者が本当に心を開いて自分を預けられるエグゼクティブコーチは、日本に数人しかいない」とも。

ミドル層に向けて設定する場合には、一定の人数が同時期に受けられるキャパシティも重要になる。複数のコーチングサービスを比較し、頻度や回数の制限、コーチの国籍・言語の選択肢などの使いやすさも判断基準になる。
「どのようなメニューでコーチングを進めるのか、基本のフォーマットをヒアリングした上で、まずは人事担当者が実際に受けてみるのがいい。やはり、コーチングの効果は自分が体験しないと分からない」
かくいう南氏もまた、30代のマネジャー時代に初めてコーチングを受け、「劇的な変化」を体験した一人である。
「部下に対するコミュニケーションスタイルが180度変わったんです。周りの人から『まるで別人になった』と驚かれたほどです」

リーダーが陥りがちなのが「マジョリティの錯覚」。自分が権力者であることを忘れ、無意識に相手に恐れや不安を抱かせる振る舞いをしてしまうことがある。
当時、コーチと対話をする中で、「南さんの今の言い方は、こんなふうに聞こえました」と予想外の感想を返されたことで、南氏は自らの振る舞いを省みるきっかけになったという。
特に怒っているわけではないのに、相手を緊張させてしまう。問い詰めているつもりはないのに、相手を萎縮させてしまう。
そんな傾向を自覚した南氏は、コミュニケーションスタイルを少しずつ修正していったという。例えば、会議を始める第一声は努めて「笑顔」を心がける。そんな小さな行動をトライしていった。結果、何が起きたか。
「自分が変わったことで、チームメンバーとの関係性が急速に改善されていったんです」

会議で発言するメンバーが増え、新しいアイディアが活発に提案されるようになった。同じような変化が、南氏自身が現在コーチを務める他の企業でも見られるという。
「リーダーが自ら変わる必要性に気づき、行動をすると、チームが活性化する。結果、イノベーションが開花する環境へと近づいていく。コーチングの最大の効果は『変革』だと私は思います」
人事戦略に長く携わる南氏は、日本企業の稼ぐ力が「オペレーション力」から「変革力」へと変わる転換期に差し掛かっていると見ている。
優れたオペレーション能力によって、日本企業は利益を維持してきたが、これからの時代には斬新なアイディアで変革を生むイノベーションの力が不可欠になる。
「しかしながら、今の日本企業の上層部に『イノベーションの起こし方』を教えられる人はいないと言っていい。なぜなら、それを経験してきた人はほぼいないからです。
この転換をスムーズに乗り越えるための打開策として、コーチングの可能性は大きい。リーダー自身の変革力を養い、組織全体の変革力へとつなげる効果を期待しています」
