
2022/02/14
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――少し厳しい質問をさせてください。風間さんの「高いレベルに合わせる」という指導は、見方によっては、下を切り捨てていると捉えられかねません。どう思いますか?
風間 遊びで考えたら、わかりやすいんじゃないでしょうか。遊びたくないのにガキ大将に無理やり誘われてやらされたら、苦しいだけですよね。
もし選手自身が本気ですごい選手になることを望めないのであれば、「他にもっと向いていることがあるぞ」と教えてあげた方がいい。それは切り捨てではありません。
筑波大学を指導した4年間で約20人のプロを輩出しましたが、その10倍以上の選手に「プロになるのは難しい」と気づかせたと思います。今、彼らは企業などいろいろな場所で活躍しています。

佐渡島 ポイントは遊べているか、いないかですよね。僕が会社で面倒をみている漫画家には、「毎日、漫画を描いてSNSに投稿してみよう」と言っているんですね。
それができないなら、やめた方がいいんです。結局、売れるために書 くとか、気合入れないと書けないんだったら、漫画家には向いていません。
風間 すごくいいバロメーターですね。
佐渡島 まだ今の漫画業界では、絵を描く才能が最重要視されている部分があるんですが、5年後、10年後には状況が変わっているはずです。
最新のソフトを使うとキャラクターを3Dの中で動かせて、あとは構図を考えればいい、というふうに漫画のつくり方が激変するからです。そうしたら自分の感情をストーリーでどう伝えるかが一番大事になる。

僕の場合、作家を育てるのに平均で5、6年かかっているんですね。その間、毎日描いたら、成長しない人はいないですよ。
でも、ほとんどの人は5年間続けられないんです。それは遊んでないから。遊んでいたら毎日できる。
――今やっていることで遊べないなら、他の遊び を見つけた方が幸せになるわけですね。
佐渡島 そう。昔は遊びの種類が少なかったから、我慢して遊ばなければならないことも多かったでしょう。
でも今は、何でも遊びになる。レストランへ食べに行くのが好きな人は、その紹介で収入を得られるようになった。
山のような数の遊びが仕事として認定され始めている時代だからこそ、本当に楽しんでないと勝負にならないんです。
――作品を時代に合わせようとはしていますか?
佐渡島 僕たちはヒット作をつくることよりも、作家がどうやったら長期間描き続けられるかを大事にしてやっています。
なぜなら何十年間も描き続けていたら、いつか社会のタイミングと合うときが来るからです。自分が社会に合わせに行くと、常に苦しい状態に陥り、創作が商品になってしまう。

社会が待つという考え方。だからこそエージェントをしたい。メディア側の人間だったら、常に「今」を読まないといけないじゃないですか。
作家が自分の問いに答えようともがき、それを答え終わると、また次の問いが見つかる。それを繰り返していくのが大事で、作家には「ほとんど世間を見ないでいい」と伝えています。
つまり自分に問いかけて、プロダクトアウトで作品をつくる。一流の料理人は、まずは自分が何を食べたいかを考え、最後の2割の工程くらいで時代に合わせてマーケットイン的な考え方をするそうです。
風間 要するに自分がおいしいと思ったものをつくる。

佐渡島 作家を育て始めて4、5年間は利益は生み出さず、会社として持ち出しになるので、そこが我慢なんですけども、30年、50年という長期では必ずプラスになると考えています。
なぜなら美意識はずっと上がり続けていくので。画家であれば、傑作の多くは晩年にできる。漫画家の晩年に描くものが傑作になっていないのは、業界の未成熟さのせいだと思っていて。そこを含めて変えたいと思っています。
風間 私は監督をやっていたとき、かなりいろいろなドラマを見ていました。主人公がどう逆境から抜け出すとか、サスペンスでどう謎を解くとか、サッカーに参考になるんですよ。今後、佐渡島さんが手がける作品を楽しみにしています。
佐渡島 今日風間さんと対談して、自分の振る舞いで変えたいと思ったのが、トップランクの作家と、そうじゃない作家を交ぜ合わせて 会議をしていることです。
トップランクじゃない作家に、本気の作家の振る舞いや発言を見せるためだったんですが、その必要はないんじゃないかと気がつきました。
彼らが「定例ミーティングをやってください」と言うまでは、トップランク側だけでミーティングをしてみようと思います。本気の作家はこういう振る舞いだよと教えること自体がおこがましいんだなと。
