
SO、退職金、相続…数千万円の資産が入ったときの運用鉄則は「4つのポケット」
構成/加々美 翼 撮影/稲垣純也
スタートアップが盛り上がる中、SO( ストックオプション)によってまとまった資産を手にすることも夢ではなくなっている。他にも、早期退職や相続で資産が急に手に入った場合、正しい運用を知っている人は少ない。住宅購入などの大きな支出はどう考えるか。IFAの長谷川学氏が事例を元に解説する。
「まとまった収入」の知識がない
資産運用に関する相談、と聞くと、支出をいかに抑えて、収入との差分をつくるかという話、またはiDeCoやNISAなどを活用して積み立て投資を行う…というイメージをされる方が多いと思います。これはいわゆるキャッシュフローの話で、定期的に入る収入や日々の生活の支出を前提としています。

しかし、「急にまとまった資金が手に入った場合」に誰に相談すべきなのか? 実はあまり知られていません。
特に転職が盛んになると、スタートアップに転職してSO(ストックオプション/新株予約権)を得ることも現実的になります。また、早期退職の退職金を得る人もいるでしょう。相続によって、急に資産が入ることもあり、機会は様々です。
しかも、最近増えているパワーカップルといわれる、夫婦両方がしっかり稼いでいるケースでは、そのような資産を得る機会も2倍になります。
いざお金を手にしたときに誤った選択をしてしまう人も多くいます。蓋を開けてみると「保険に入りすぎて運用効率が悪いがやめにくい」「ポートフォリオの不動産比率が異常に高まっている」状態になっていることも多々。
そこで、活用してほしいのがIFAです。

IFAとは、証券会社に所属することなく、複数の証券会社の代理店として中立の立場で資産アドバイスができる、Independent Finance Advisorの略称です。顧客の人生のニーズに合わせてキャッシュフローだけでなく、主にバランスシート(BS)に対してアプローチをする資産運用のプロです。
一般的に、40代くらいまでは、収入・キャッシュフローに対してうまく運用したいというケースが多く、IFAが相談相手の選択肢に入ってこない。資産形成をある程度していてIFAのところへたどりつきますが、その多くは紹介です。
IFAのメリットは、転勤制度がないため生涯担当することができる点。会社の販売方式やノルマに縛られず、フラットに資産運用を考えられるということです。
私は2021年5月にIFA Leadingを立ち上げ、資産5000万円以上を持つ方を対象にアドバイスを行っています。証券だけでなく、保険や不動産をワンストップで扱います。400Fが運営するお金のチャット相談プラットフォーム「お金の健康診断」というプラットフォーム上で新規顧客と出会うこともあります。IFAは顧客の人生に長く寄り添うことになるので、このようなマッチングサービスで相性を確かめてから契約できるのはメリットです。

私の顧客で、SOによって2億円程度の資産をつくった夫婦の事例を第2話で紹介する前に、資産がある人の基本的な資産運用の考え方を解説します。
運用は4つのポケットに分けて
4つのポケットという考え方で方針を決めていきます。まず1つ目は”余裕資金”。
流動性が最も高い現預金を指し、半年から2年分の支出に相当するキャッシュは手元に残しておいてもいいです。例えば、毎月の支出が30万なら、最低でも180万円くらい、多く持ちたい場合なら720万円を何かあったときのために手元に残しておきます。
2つ目は”インカム資産(インカムゲイン)”。資産から生まれる収入のことを指し、不動産でいう家賃収入、債券の固定利回りなどが当てはまります。
米国10年債の利回りが3.4%として、1000万円分回していたら、34万円が毎年必ず入ってくる。その34万円はインカム資産となります。普段のキャッシュフローとは別にプラスで入ってくるものなので、旅行やちょっと高い買い物などの贅沢に充てることができます。
ここで考えるのは、それが毎年どのくらい欲しいかということ。年間34万だと毎月使えるのは2万円強。月に10万円使いたいとなれば、年間120万円のインカムをつくる必要があり、利回りが4%のもので3000万円を運用に回すことになります。
4%の運用を何で行うかの代表例は債券運用です。不動産もこの部類に入りますが、社債を購入することが多いです。会社の債券だと為替リスクに加え、会社のクレジットリスク、倒産リスクがあるので、格付けが高いものでも利回りは4〜5%と高い。格付けが低いものだと6%を超えるものもあります。
約3%でも安定的な米国債を選ぶか、多少のリスクを許容して社債4〜6%で運用するかは、その人の考え方に応じて組み立てます。

戦略資産は長期投資で増やす
そして、残りの大半を3つ目のポケット”戦略資産(キャピタルゲイン)”に回します。
これは主にETF(上場型投資信託)などに分散投資して、資産を増やす方法です。株価の変動によって、アップダウンがありますが、長期投資にリスクを減らすことができ、複利効果も増します。
価格変動のリスクを背負うため、戦略資産の組み立ては慎重に行う必要があります。私は値動きの違う資産を組み合わせて、「提案したポートフォリオを実践したとして、仮に今リーマンショックが起こったとすると、一時的に何%保有資産が下落する可能性があるか」というシナリオテストを共有し、顧客が一時的な株価ショックなどに耐えられるかどうかを見ながら決定していきます。
きちんと分散投資ができていれば、株価が暴落して一時的に資産が目減りしても、世界経済が成長し続ける限り、長期で持ち続けることでまた資産は回復していきます。しかしそうはいっても合理的な判断ができるかどうかは別。
「1億円あったのに一時的に3000万円も減ってしまった」と、夜も眠れなくなる性格の人なら、リスク許容度を超えていると考え、価格変動をより抑えたポートフォリオを再度提案します。
株は最後に「積み上げる」
4つ目は”積み上げ資産”。3つ目までで安定的に増やしている資産に、「積み上げる」という意味で、最もリスクが高い投資です。
代表例は個別株式や暗号資産です。1つの会社の株式に投資した場合、大きなリターンを得る可能性も高まりますが、当然リスクも高い。10分の1になるかもしれないし、企業が倒産した場合ゼロになってしまいます。SOも実はこれに当たります。
リスクを理解した上で、それでも応援したい、将来的に絶対成長すると思う、という思いから投資を行います。
3つ目の”戦略資産”の運用シミュレーションをすると、10年後、20年後の想定資産金額が見えてくるため、「このくらい将来的に増えるのであれば、余剰資金を応援したい個別の企業の株式投資に充てたい」と考えられます。
自分らしい投資にチャレンジをする、応援したい会社にお金を融通する”意思ある投資”を実践するためには、全体資産のコアとなる1から3の部分を的確に配分する必要があります。
この4つのポケットの考え方は一般にあまり知られておらず、たいていは2~4が混ざってしまい、「投資は怖い」「難しい」となってしまいがちです。何を目的とする投資なのか、ポケットを分けて考えることで、投資への恐怖心が軽減します。
※2話は21日公開予定。SOで2億円を手にした例を紹介します。