
【深井龍之介】「寂しさ」がより際立つネット社会
取材・構成/古澤誠一郎 撮影/竹井俊晴
日本を変えるイノベーターが仕事の軌跡と半生を語り尽くす新連載「マイヒストリー」。挑戦者たちの原点と未来のビジョンが明かされる。人気のポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信するCOTENの深井龍之介CEOが、世界の未来と自分史を語り尽くす(全30話)。

「寂しい」は一番ヤバい状態
仲間内で作っているFacebookのメッセンジャーグループで、「今の時代はインターネットで“寂しさ”が再生産され続けている」という話題がよくのぼります。インターネットを使えば使うほど、人は孤独になっていく……。
本当にその通りだなと思いながら議論しています。

「寂しい」というのは、ホモ・サピエンスで一番ヤバい状態の一つです。食事に困るのと変わらないレベルで生存本能を脅かしますし、寂しさを感じた人間は周囲に攻撃的になっていく。
ちなみに生物にとっての攻撃は防御反応の一つです。自分を守るために攻撃しているわけです。
背景に資本主義社会がある
インターネットで寂しさが再生産されてしまう背景には、やはり現在の資本主義社会があるでしょう。
市場経済では「人間の本来すべきこと」を無視して稼働し続けます。
そして市場経済の原理からは、「人間はこうあるべき」「こういう社会になったほうが人は幸せになれる」といった話は出てこない。
また「働きすぎ」というのも、市場経済から生まれる悪影響の一つです。

今の資本主義社会では、自分の労働力を無限に売ることができますし、労働力を売るには都市部に住むほうが効率がよくなります。
そして都市部に移動すると親元を離れることになり、隣近所の人が知り合いではない環境では孤独になりやすい。
人間はもっと動物的な生き物だ
さらに、家に閉じこもり、誰とも話さずに行うリモートワークも、ホモ・サピエンスの動物的な挙動ではありません。

さきほどの「ホッキョクグマが沖縄に連れていかれるとつらい」という状態と同じです。我々はホモ・サピエンスが動物として持っているものを忘れ過ぎていると思います。
現代人は、キリスト教の思想を背景に理性を強く信奉してきました。
我々は「何事も計算できる」「未来は予測できる」「投資対象も計算で見極められる」というふうに考えがちですが、ホモ・サピエンスはもう少し動物的な生き物だと思います。
その前提に立って社会設計をしたほうが、多くの人の幸福度は上がると思いますが、それが分かっていてもなかなかできない社会構造になっています。

寂しさをどう解消するかは社会的課題
人の抱える寂しさをどう解消するのかは、大きな社会的課題です。
そして「目的の達成に貢献して喜ばれる」「人から頼られる」という経験をできていて、そうしたコミュニティを複数持っている状態が、ホモ・サピエンスという動物が一番幸せになりやすいのは明らかです。

それを僕たちは認識せず、「人間はもっと理性的なものだ」と勝手に認識し、「お金を稼いだら幸せになれる」という根拠もエビデンスもない信条に従ってひたすら働いている。その状態は、すごく人文知が欠乏している状態です。
「生き物としての人間」を考えるべき
我々は、「人間とはどんな生き物か」をもっと考えた方がいいと思います。
そこにはいろいろな意見があってしかるべきですが、今の資本主義社会での人間のあり方が正解ではないことが分かりきっているのに、いまだに何も考えていないのは問題です。

僕が社会に出てしばらく経ってから、「高校や大学の同級生が今何をしているのか気になって、お互いに近況報告をしたくなった」という話をしました。
人間のそうした側面が今は蔑ろにされていると思います。
ローマ皇帝よりいい暮らしなのに自殺する
現代の日本社会に生きる人の大半はローマ皇帝よりもいい暮らしをしているはずですが、それでも自殺する人がいます。
一方で、外でガムシャラに働いて、家に帰ったら子育てをして、親の介護もして……という生活で疲弊している人もいるでしょう。

しかし本来の人間は、目に見える範囲の人たちと集住して、子育ても介護も複数人でまかなうような生活に適した習性を持った動物です。
次回は、こうしたホモ・サピエンスの基本的な特性を踏まえたうえで、最近の世の中で何かと話題で、僕も近年に集中して勉強してきた「宗教」について話します。
*本連載は2話ずつ毎日公開します。明日の第29話に続く。