
【深井龍之介】ガーシーは歴史上、何度も出現するが、唯一無二の存在だ
取材・構成/古澤誠一郎 撮影/竹井俊晴
日本を変えるイノベーターが仕事の軌跡と半生を語り尽くす新連載「マイヒストリー」。挑戦者たちの原点と未来のビジョンが明かされる。人気のポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信するCOTENの深井龍之介CEOが、世界の未来と自分史を語り尽くす(全30話)。

物事を構造的に理解する視点を持つ
社会を構造的に理解する視点は、ビジネスでも役立ちます。
例えば「スタートアップがこういうフェーズに到達したとき、社長がこういう特性の人物だったら、こういう課題が浮上することが多い」といった経験則がありますよね。
物事を社会構造的に理解する視点を持っていたら、そうしたことにいち早く気付いて対処ができます。
また、「会社がうまくいかないのは社長が無能だからだ」と言っているだけでは状況は変わりません。だからこそ僕は「構造的に理解したらどうですか」と提案しているわけです。

ただ、類似する事例を目の前の現実から探すにも限界があります。
「だったら歴史を学んだらどうでしょうか。歴史ならすべて本に書いてありますよ」というのが僕の提案であり、そうやって学ぶことが、僕にとっての歴史の勉強です。
歴史を学ぶときは例えを使わない
なおCOTENのポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」では、最低限の分かりやすさを担保するために、「信長軍は完全能力実力主義の外資系企業」「創業メンバーを飛び越えて諸葛亮を取締役に」というように歴史をビジネスに例えることを積極的に行っています。
ただし、本来「歴史を学ぶ」ときには、そうした例えを使わないことが重要です。
例えば日本語の「リンゴ」は英語では「Apple」ですが、リンゴとAppleを完全にイコールのものとして対応させている人は、おそらく英語ができない人でしょう。
英語のAppleは、アダムとエバが食べた楽園の木の果実と同一視されるもの、原罪を象徴するものであり、日本語のリンゴとは異なる意味を持った果実です。イコールではない。


それは日本の文化に根付いた「桜」と英語の「Cherry Blossom」がイコールではないのと同じです。


征夷大将軍は「会長」とは異なる
歴史も一緒です。「征夷大将軍」はやっぱり「征夷大将軍」なんです。僕たちは分かりやすさを重視して、「これは会社の会長みたいな立場で」と例えたりしますが、両者は厳密には異なります。

歴史学者はそうした例えはしませんし、僕らも自分たちで歴史を勉強するときは、そうした安易な同定はしていません。
もちろん、「ある程度の抽象化をすると、これとこれは同じ分類に入るよね」という認識を持つことは大事です。
その人・状況の特殊性と向き合う
一方で、「この時代、この状況の特殊性は何か」を考えることが、やはり歴史を学ぶ上では非常に大切です。
それは目の前の人間と向き合うときも一緒です。「この人の今の行動パターンは、あのときのあの人と一緒だ」と一部を抽象化して分類することはできますが、やはり完全には同じではないはずです。
大事なのは、その人、その状況の特殊性と向き合うことです。
例えば連載第7話で「ガーシーのような人物が支持を集める時代は過去にもあった」と述べましたが、それも完全に同じことがあったわけではありません。
「似たようなこと」が過去にあり、その出来事は、ある状況下で高い再現性があるという話です。

だから歴史を参考にしながら今の時代を見たり、近未来を見通すときも、すべてをイコールで考えないことが大切です。世の中で「100%同じこと」は起こりませんから。
では次回は、僕がCOTENを起業して、歴史の事業に取り組むまでの過程について話します。
*本連載は2話ずつ毎日公開します。第24話に続く。