
【深井龍之介】世の中を人間ドラマとしてではなく構造的に見よう
取材・構成/古澤誠一郎 撮影/竹井俊晴
日本を変えるイノベーターが仕事の軌跡と半生を語り尽くす新連載「マイヒストリー」。挑戦者たちの原点と未来のビジョンが明かされる。人気のポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信するCOTENの深井龍之介CEOが、世界の未来と自分史を語り尽くす(全30話)。

「歴史思考」はビジネスに役立つ
僕の考える「歴史思考」とは、一言でいえば「歴史を知ることにより社会を構造的に理解する(メタ認知する)思考」です。その思考は、ビジネス上では自分が置かれている状況を客観的に理解することに役立ちます。
前回に述べたようなビジネス上の危機的な状況では、「そんなこと言っても、それは俺のせいじゃないでしょ」「怒っている人に何か言い返してやりたい」みたいな感情が湧いてきます。

しかし、そこでは感情に振り回されずに、「今どういう状況下に僕たちは置かれていて、何をしなければいけないのか」を冷静に判断することが必要です。
埋め込まれた文脈から脱却
人は生きている限り、何らかの文脈の中に埋め込まれています。過去の歴史を知ることにより、その埋め込まれた文脈から脱却して、俯瞰的に、構造的に物語を見るのが歴史思考です。
「このままだと絶対に死ぬ」と分かるような本当に極限の状態のとき、人は埋め込まれた文脈の中だとやっていられなくなります。
しかし歴史思考を使うと、埋め込まれた文脈から脱却した状態でもう一回思考ができるので、「まだ終わっていない」「怖がる意味が論理的にない」と考えられるようになります。

人間ドラマではなく構造的に物事を見る
なお僕が歴史について話すときに一番伝えたいメッセージは、「人間ドラマとして歴史を見たり、ファクトを並べて『良い』『悪い』と倫理的なジャッジメントをしたりする前に、社会を構造的に捉えて理解していこうよ」ということです。
歴史というと人間ドラマばかりが注目されがちですが、「人間ドラマだけではなく構造的に物事を見ないと、世の中は理解できない」というのが僕の考えです。
その見方は歴史学的ではなく、すごく社会学的なものの見方です。
ソフトバンクの成長は孫さんの実力か?
この話は会社に置き換えて話すと分かりやすいかもしれません。
例えば、「孫正義さんの実力がすごかったからソフトバンクは大成功した」という話は非常に分かりやすいですが、ソフトバンクの成長にはほかにもさまざまな因果関係があり、時代的な背景があります。

企業の成長は、必ずしも経営者の意図の通りに進むものではありませんし、想定外のことも山ほど起こっています。
それは歴史も同じです。歴史上の人物でも、すべて計算通りに成功した人は存在しません。その人の人間性や人間ドラマはあくまで歴史の一因子なわけです。
侵略はプーチンの個人的な理由か?
もちろん「織田信長がこういう考え方の人物だからこういう事件が起きた」といった説明しやすい事例もあり、その人物や行動が良い・悪いという判断も当然あります。
現在のロシアによるウクライナ侵略についても、「プーチンの個人的な理由で戦争が行われた」という見方をする人はいますし、もちろん個人的な理由は存在するでしょう。しかし歴史はそれだけでは説明できません。

歴史には再現性がある
また歴史には「社会がこういう状況と構造の時期に、こういう性質の人間をこういう場所に置くと、こういうことが高い確率で起こる」という再現性があります。
そのように社会を構造的に理解することが僕は大切だと思っています。
「社会を構造的に見る」のは非常に大事なことだと僕は考えているので、次回は別の例も提示しながらさらに内容を掘り下げていきます。

*本連載は2話ずつ毎日公開します。明日の第23話に続く。