
【深井龍之介】失敗続きのスタートアップ 極限状態では他人事が有効
取材・構成/古澤誠一郎 撮影/竹井俊晴
日本を変えるイノベーターが仕事の軌跡と半生を語り尽くす新連載「マイヒストリー」。挑戦者たちの原点と未来のビジョンが明かされる。人気のポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信するCOTENの深井龍之介CEOが、世界の未来と自分史を語り尽くす(全30話)。

超漠然と「何かデカいことやりたいね」
新卒で入社した会社を2年で退職したあと、経営コンサルタントとして独立しました。その独立は何の計画性もないものです。
コンサルとしての実力もゼロだった僕がいきなり独立できたのは、就活時代に出会った大学の先輩のおかげです。その先輩は12歳年上で、仕事はITコンサルタントでした。
僕はその先輩と「何かデカいことをやりたいね」という超漠然とした話でチームを組むことになり、さまざまな企業の新規事業立ち上げを手伝うようになりました。

その先輩は、当時の僕にとって師匠的な存在で、一般的なビジネススキルの基礎から、コンサルとしてのターゲティング、マーケティング、ロジカルシンキングの方法、お客さんとの対峙の仕方まで、本当にいろいろなことを教わりました。
最初は何の実力もなかったので苦労しましたが、先輩のもとで根性を出して頑張ることで、何とか収入を得られるようになりました。
派手な失敗を連発
コンサルの仕事をしていたのは3年ほどです。その後は福岡のスタートアップで働きました。

入社後、すぐに取締役になりましたが、派手な失敗を連発します。
当時の福岡には先輩と呼べるようなスタートアップの経営者はほとんどいませんでした。資金調達してお金が入っても、使い方のノウハウがないんです。
例えば、ある案件の適性がない人を採用してアサインし、顧客に怒られたり、そこそこの大企業とタッグを組んで怒られたり。資金ショートして自分の給料を止めただけでなく、内定者に土下座をして内定を取り消したりもしました。
極限状態を「他人事」のように捉える
深刻な失敗の連続でしたが、すべてをシリアスに考えて落ち込んでいたらメンタルが持ちません。
実際に自分のせいだとしても、極限状況のときは、いったん今の自分を取り巻く状況を他人事のように捉えることが有効です。
無責任に見えるでしょうが、落ち込むより何をすべきかを考え行動するほうがより責任ある行動だと思っています。

一歩引いた場所から客観的に今の状況を見れば、物事を冷静にさばけますし、「あのときのあの行動がよくなかった」という分析もできます。
そうした「状況をメタ認知する」方法は、僕が今「歴史思考」と呼んでいる「歴史を知ることによるメタ認知」とも共通するものです。
なおメタ認知は歴史の知識がなくても行えますが、「歴史の知識を活用することで、強力なメタ認知が可能になる」というのが僕の考えです。

仲間割れの原因
結局、福岡で最初に勤めたスタートアップは、最後は仲間割れのような形で離れることになりました。
本気で取り組んでいた仕事だったこともあり、僕はバーンアウト症候群のような状態になり、「ほかにやりたいことが何もない」という気持ちになっていました。
仲間割れの原因を振り返ると、「僕は社長に正論をぶつけ続けるNo.2だったし、その言動が原因で最後は社長を怒らせてしまった」という反省点が明確になりました。

自分のことばかり考えていた
そこで、「次に働く企業では、No.2として社長に対してどれくらい愛情を持てるかというチャレンジをしてみよう」と決めて、また別のスタートアップに就職しました。
そこで働いている時期は、とにかく目の前の業務と自分の課題解決に集中しました。すると、仕事がうまく回るようになり、会社も僕と社長の2人の状態から社員60人の規模にまで成長しました。
社会人として遅まきながら、「自分のことばっかり考えていたからダメだったんだな」と深く理解しました。
次回は、「失敗の連続」から学んだことと、失敗の中で「歴史を学んだ経験」が生きたことを語ります。

*本連載は2話ずつ毎日公開します。明日の第21話に続く。