
【深井龍之介】この会社は絶対潰れると確信 後漢後期のように腐敗
取材・構成/古澤誠一郎 撮影/竹井俊晴
日本を変えるイノベーターが仕事の軌跡と半生を語り尽くす新連載「マイヒストリー」。挑戦者たちの原点と未来のビジョンが明かされる。人気のポッドキャスト「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を配信するCOTENの深井龍之介CEOが、世界の未来と自分史を語り尽くす(全30話)。

「この会社はこの先の戦いに勝てない」
僕は大学生の頃から実家の本棚にあった中国古典の本を読み始めて、歴史の勉強をしていました。
新卒で入社した会社で働いているときは「歴史を仕事に生かそう」とは意識していませんでしたが、考えていることは今とそう違わなかったと思います。
当時から僕は会社の中で「この会社はこの先の戦いに勝てない」と言っていました。「なぜ勝てないのか」も構造的に解説しながら。
ただ社内では22歳の若造の戯言としか思われず、誰も僕の話なんて聞こうとしませんでした。

この話は友人たちにもよくしていて、「潰れるわけないじゃん!」と言われていました。
しかし後に粉飾決算の問題が起きます。
事実認識ができなくなる→組織崩壊
当時のその会社では、それぞれの社員が自分の出世や派閥の利益のための権力闘争に終始し、互いの足を引っ張り合っていました。
自分の利益や派閥の利益のために行動をする人は、自分にとって都合のいい視点で事実認識を始めます。
そうした人間が増えると、目の前で起きているファクトを受け取らずに経営判断がなされるようになるので、組織が腐り始めるのです。
この「事実認識ができなくなる」「その状態で政治を行うから崩壊する」という構図は、後漢後期そのものでした。

マーケティングができない
当時は、意思決定プロセスが完全に腐敗していて、満足なマーケティングも行えず、お客様のことを考えない組織になっていました。
世の中では、Appleのような生産施設を自社で持たないファブレス企業が力を伸ばし始めていました。

そうしたファブレス企業の肝になるのは、マーケティングの強いプロダクトを持っていることです。
膨大なエンドユーザーに支持されるプロダクトを持っているからこそ、超大量の部品発注をメーカーにかけられて、自社に有利な契約を結べるわけです。
コストメリットを出せない
一方その会社の強みは、「前工程から後工程、販売まで一気通貫で自社で行えます」というものでした。
ファブレス企業の成長を横目に見ながら、東南アジアに工場を建設していましたが、20年前に作成した人件費の増加予測が現状と大きくズレてしまい、コストメリットを出せない状態になっていました。

コストメリットが出せず、マーケティングもできていない会社にとって、絶対に勝てない状況に陥っていたのです。
経営陣は抽象的な指示だけ
しかし経営陣は、僕も出席していた会議で「何とかしろ!」と抽象的な指示だけを出していました。
周辺のそこそこ偉い人たちは、経営陣に必死にゴマすりをしている。さらに各部署が権力闘争で足を引っ張り合っている。
その様子を見て、「この会社は絶対潰れるな」と確信しました。そして新卒で入社した会社を2年で退職します。

*本連載は2話ずつ毎日公開します。第20話に続く。