
2022年8月20日
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ここまで、インドのスタートアップの熱気や、成長の理由を見てきた。最後に「もしも日本企業がインドに興味を持ったなら、何から始めるべきか?」を考えてみたい。
Beyond Next VenturesのCEO、伊藤毅(つよし)さん。日印合わせて約70社のスタートアップに投資し、その2割がインドに拠点を置いている。取材時、バンガロールに長期滞在中だった伊藤さんに話を聞いた。

取材を行ったのは、バンガロールのレストラン“Windmills Craftworks”。室内にジャズ音楽が流れる空間だ。

――Beyond Next Venturesは、日本とインド、両方のスタートアップに投資されています。2019年ごろからインドに本格参入されましたが、どうしてですか?
インドには2つのポテンシャルがあると考えました。1つは、日本のスタートアップの商品や、サービスを売り込んでいく国として。もう1つは、インド国内の投資そのものです。インドの経済発展とともに所得が上がり、市場が拡大しています。
特にディープテック領域については、まだまだインドのVCでも投資していない。だからこそ、外国人VCでも入り込む余地があるなと。
日本で、この10年で見たディープテック領域の発展がインドでも起こるはず、そう考えてインドに飛び込みました。
――まるで、タイムマシンですね。伊藤さんは日本で、長期目線で技術系のスタートアップに投資をして、それが今、花開いている。インドも同じく、「10年スパンで成長していく」と思われているんですね。
そうです。
――実際にバンガロールを見られて、いかがですか?
スタートアップが身近ですね。例えば、私たちが投資している「グルメガーデン」というサービスですが、農薬なしの新鮮な野菜を、自宅までデリバリーしてくれます。実は、私自身、初めはこのサービスのユーザーだったんです。オンラインデリバリーはもちろん、スーパーにも売り場を持っています。

――たしかに、スーパーに、しっかりと棚を持たれていましたね。私はここでトマトを買いました。
自社でハウスを保有しており、野菜は農薬を使わない水耕栽培で育てています。
Incubate Fund Indiaも投資をしており、村上矢(なお)さんも、投資前からご家族で愛用されていたそうです。スタートアップのサービスが、生活に入りこんでいるんです。
――インドに興味を持ったビジネスパーソンは、インドに近づくためにまず、何からすればよいでしょうか?
3つあります。まず1つ目は、インドに来てみることですね。
例えば、インドのスタートアップと会ってみて、実際の現地の状況を知ること。そして、国の成長そのものを感じることです。インドは、たった半年の間に、新しい駅ができたり道路が整備されたりなど、国の成長スピードを肌身で感じられるんです。
――高度経済成長期ですね。
まさにインド人の方も時々言うんですよ。インドは今、日本が高度成長期だったころの状態にあるんだって。
旅行でも何でもいいのでインドに行くのは、本当におすすめします。自分が20代に戻れるんだったら、20代の頃の自分にそう言いたい。今でもやっぱり遅いなと思っていましたからね、もう5年、もう10年早ければって思いますよ。
若ければ若いほどいろんなことを刺激として吸収するでしょうし、本当にその後の人生を変えるような経験になると思います。とにかく行ってみて、いろいろ感じる、経験してみる。
2つ目は、よく企業の方々にお伝えするのですが、若手社員をインドに連れてきて新しいビジネスを立ち上げさせる、ですね。
急成長している新興国で事業を立ち上げる経験は、必ず日本でも活かせるはずです。
若くて多少のリスクも気にしないぐらいの年代の人材にこそ、既存事業の延長線のビジネスではなくて、本当にゼロイチでのビジネスを経験させるべきだと思いますね。
それは、本人にとっても良いことだし、日系企業にとってもすごく良いことだと思います。インドって、最先端のテクノロジーが必ずしも求められないところもあるんですよね。例えば、最先端のものは値段が高すぎて売れないみたいな。
けれども、日本企業の持っている枯れた技術でも充分なフィールドっていっぱいあるんです。これを使って新興国のいろんな課題を解決するようなビジネスを企画すれば、自分たちの会社の資産も活かせると思います。
3つ目は、会社のシステム部門やソフトウエア開発部門の拠点をインドに作ることですね。日本国内だけではエンジニアが枯渇してしまう中、大企業すべてに共通して取り組める余地があることかなと思います。
インドに近づくための一歩として、まとめると以下の通りになります。
①まず、行ってみる
②新規事業を立ち上げる
③エンジニア人材を雇う
――インドに行こうか迷っているPIVOT読者にメッセージはありますか?
インドにそこまで注目していない、という投資家さんもいらっしゃいます。むしろ「やめておいた方がいいんじゃないか」と、おっしゃる方も。
でも、みんなが「インドはいいよね」と言っているころにはもう、遅いはずだから、「やめといた方がいいんじゃないか」と言われるころに行くのがちょうど良いのではないかと思います。
――世界でスタートアップといえば、シリコンバレーを想起することがこの数年では多かったです。シリコンバレーとインドを比べるとどうですか?
今、シリコンバレーで投資するのは遅い、という話があります。向こうで活躍しているベンチャーが実は、もともとインドで生まれているというケースがあるのです。だからアーリーで投資するなら、インドで発掘する必要がある。
「インドは、シリコンバレーのアーリーステージ」ということです。
※第10話に続く。次話では、これまでの9話を総括しながら、日本出身のビジネスパーソンがインドで勝つための方法を伝えます。