
28歳の若者たちが活躍 インドの勢い支える「若さ」
東 成樹
インドのユニコーン企業は2022年、100社を超えた。電通のプランナー、東成樹さんが2週間、現地で活躍する日本人のスタートアップ幹部やVCに会って実況する。インドで勝つのは誰なのか。日本の未来のヒントがそこにある。
世界的VCも訪れるトップ大IIT
インドは若い。平均年齢(中央値)は約28歳。
中国の38歳、日本の48歳という数字と比べると、1回りも2回りも若い。
日本でも多くの若者が活躍し始めているが、インドの勢いはそれを上回る。それを実感したのが、26歳でベンチャーキャピタルを立ち上げ、現在は28歳だというラヴィシュ・ラトナムさんと話したときだ。

ラヴィシュさんは、IIT(インド工科大学)というインドのトップ大学を卒業した。この大学は、Googleのサンダー・ピチャイCEOをはじめ、経営者や起業家を数多く輩出していることで有名だ。
ラヴィシュさんは在学中、先輩の立ち上げたスタートアップに参加した。マーケットリサーチなどを担当してスタートアップ界にどっぷりとはまった。
2014年には、大学の起業家サークルの代表になっている。
「投資家やファンドとのつながりもここで生まれました。大学には、セコイア・キャピタルやマトリックス・パートナーズなどの世界的なVCが来ていました」
大学の起業家サークルで、セコイア・キャピタルのような世界的なVCと出会う。10年前からインドには、ラヴィシュさんのような「種」がまかれていたのだろう。
ラヴィシュさんは、大学卒業後、投資家と起業家とをつなぐLetsVentureという企業で3年間働いた後、PointOneCapitalというシード向けのベンチャーキャピタルを立ち上げた。現在はシード期のスタートアップに、数千万円程度の規模で出資をしているという。
「バンガロールではいろんな人がスタートアップに挑戦している。大学も、起業を支援している。例えば、就活時期にスタートアップで働いて、もしうまくいかなくてもまた就活に戻れる、という仕組みがある。若いベンチャーキャピタリストも増えてきている。創業者の友人になれることがメリットです」
バンガロールでは起業が身近で、若いうちから挑戦する人が多い。その秘密は、大学の仕組みにある。スタートアップに挑むハードルを下げる役割を担っているからだ。
インドの“東大”へ
IISc(インド理科大学院)を訪ねた。ここは、インドにおける東大理工学部のようなところだ。
ちょうどその頃、日本人のある連続起業家がゲスト講義を行っていた。シンガポールやインドネシアなど数々の大学で起業について教えてきた、スローガン共同創業者、織田一彰さん。起業に関心のある、約50名もの生徒が集まっていた。



講義が終わるのを待ち、織田さんに挨拶をして、ともに向かったのは大学構内にあるSID(“Society for Innovation and Development”)。
ここでは大学の持つ科学の知見を技術起点の企業やスタートアップにいかしてもらい、イノベーションを促進することをミッションにしている。

SIDのディレクターのDravidさんが、インドのスタートアップ業界の説明をしてくれる。
「例えばタタ・モーターズやマイクロソフト、ボッシュなど、多様な企業がSIDと一緒にR&Dをしています。特定のソリューションの開発というよりは、新しい科学的な知見の発見に重きを置いており、研究のタイムスパンも5年程度かかるイメージです。200以上の企業と、多様なプロジェクトを行ってきました」
IIScの卒業生もビジネスの「種」をここに持ち込んでくれるという。学生の就職先は、宇宙、農業、バイオ、再生可能エネルギー、モビリティーなどさまざまだ。卒業生とのネットワークをもとにイノベーションが起こることもある。
「ただ、このネットワークの中に、日本人はまだ少ない。SIDには国内外の企業がやってきて、共同研究をしている。より多くの日本の学生や企業に、このエコシステムの中にジョインしてほしい」
※第7話に続く。次話では、インドの1年が日本の4年分だというスピード感の秘密を明らかにします。