
なぜインドはスタートアップ大国なのか?
東 成樹
インドのユニコーン企業は2022年、100社を超えた。電通プランナーの東成樹さんが2週間、現地で活躍する日本人のスタートアップ幹部やVCに会って実況する。インドで勝つのは誰なのか。日本の未来のヒントがそこにある。
ユニコーン企業は世界3位のインド
インドと日本を比べるとき、「10倍」がキーワードです。
例えば、以下の数値をみてください。
・インド人口は、日本の約10倍(約14億人)
・インドの国土も約10倍
・ユニコーンの数は、10倍以上
特に私が注目するべきだと思うのは、ユニコーンの数です。2022年5月、インドではユニコーン企業*が100社になりました。アメリカ、中国に続く世界3位のスタートアップ大国として注目されています。現在も100社からさらに増え続けています。

ではなぜ、インドではスタートアップが活況なのか? その秘密を、早速現地で聞いてみました。
インドにスタートアップが多い3つの理由
まず、インド最大級のスタートアップ互助団体Headstartの幹部のUjjwal Trivediさんに話を聞きました。Headstartは、2007年以来、アーリーステージのスタートアップの支援を行っているボランティア団体です。
Ujjwalさんによると、インドでスタートアップが育ちやすいのは、現地の人材に3つの特徴があるからだそうです。
①英語が話せる人が多い
②理系教育が盛んで、優秀なエンジニアが多い
③人件費に価格優位性がある
さらに、「1990年代からインターネット企業に強い人材が育ってきている」というのがUjjwalさんの見立てです。実際、バンガロールにはグーグル、マイクロソフト、アマゾンを筆頭に、世界の著名なIT企業が大規模な拠点を構えています。
Ujjwalさんによると、1990年ごろからアメリカのIT企業を中心に、インドにシステム開発や運用の一部を委託する企業が増えてきたといいます。
(1)人件費の削減につながるほか、(2)インドとアメリカの約12時間の時差(*地域によって違う)が、アメリカの企業にとっては魅力的だったからです。
特に(2)の時差のポイントは「なるほどな」と思いました。
例えばアメリカの会社で社員が退社するころに、インドのエンジニアにシステム開発などの仕事を頼めば、インドでは日中に作業ができます。インドのエンジニアが1日かけて仕事を終わらせたあとには、アメリカの会社の翌日の勤務時間につながる流れです。
それぞれが仕事が終わったころに、仕事が始まる相手に引き継げるというスムーズな連携となります。
こうした「時差」を活かした仕事を請け負っていくうちに、インド人にノウハウやスキルが溜まってきたそうです。

「世界」が国内にあるインドの強み
さらに、日本発のアグリテックスタートアップ「サグリ」のインド法人で、最高戦略責任者を務める永田賢(さとし)さんにも話を聞きました。
永田さんは、「インドの多様性」というキーワードでインドの強みを語ってくれました。
とにかくインドは多様です。国内に約14億人が住んでいますが、民族や言葉、食習慣はさまざま。
地方に足を運べば、数十キロメートル離れている地域同士で「言葉が通じない」ということさえあります。いわば「世界」が国内にあるので、インドで成功すれば、多様な価値観を持つ人に受け入れられることを意味します。
ここで新しいサービスやビジネスがうまくいけば、他の地域でも成功する確率が高い。そのため、アメリカやヨーロッパの企業がこぞって“Global Capability Center”を現地に立ち上げ、インドの市場でテストしています。そして、うまくいった製品を本国へ逆輸入するケースが出てきているのです。
何より力強い内需を背景に、インド国内でスタートアップが次々と立ち上がっている。成功したスタートアップ経営者を見た若い世代の人が「自分でも起業しよう」と思う。こうした良い循環が起きている、というのです。
ところで、永田さんとは別に、私がどうしても話を聞きたい日本人がいました。
インドのスタートアップ界が盛り上がりを見せていた2014年、インドに渡った村上矢(なお)さん。Incubate Fund Indiaのファウンダーです。
※第3話 「村上矢さんに聞くインド市場への入り方」は2022年8月17日公開予定