
ハーバード合格に導いた課外活動。始まりは違和感から
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」。第11話からのシーズン2は、実践編として具体的な解説を行う(5日連続で10話公開)。

コンテキストを語れない課外活動はいらない
課外活動とは、自分で考えて自分で行動する力を示す1つの証明です。そこに動機の伴わない賞や肩書きをいくつくっつけてもそこにコンテキストはありません。模擬国連やスピーチコンテストなどみんなと同じものをやっていても差別化できないのです。
自分の仮説を作って検証し、主体的に一歩踏み出すというトレーニングを小さい頃から積み重ねているからこそ、中高時代にそのステップを踏んでいくことができるのです。他者とは違うその子だけのコンテキストが見て取れる課外活動は、その子の勲章となるのです。
原発問題をドキュメンタリーで描く
<Case Study2:ハーバード大学進学 矢座さん>
ケーススタディ2人目は、ハーバード大学で現在哲学と映像を学んでいる矢座さんです。
彼は、他にもイェール大学とコロンビア大学にも合格していました。柳井正財団から奨学金を取得し、学費だけでなく生活費もカバーされているので、日本の大学に行くよりも遥かに軽い経済負担でハーバードに留学しています。

彼の強みは、違和感を大切にしてきたことです。
幼少期にアメリカに4年間住んで、8歳で帰国。公立の小学校に入学した彼は、学校に馴染むのに非常に苦労しました。小学校に馴染めなかったことから中学受験をし、東京学芸大学付属国際中等教育学校に進学。世界中の様々な場所からの帰国子女が多く、のびのび過ごすことができたそうです。
そんな中、中学校の総合学習の授業で2011年に置きた福島原発事故について賛成派と反対派に分かれてディスカッションをする機会がありました。賛成派も反対派も結局は当事者ではないのに、議論が白熱してしまい、その結果人格否定のようなことまで飛び出す熱いディスカッションに発展。
そこで彼が感じたのは、当事者でもない双方の人間がなぜ分かり合うことができないのだろうかという違和感でした。
賛成派はロジック一辺倒で、反対派は感情論に走ってしまう。理論と感情の間で平行線になってしまう。この状態をどうにかできないだろうかと彼は考えました。そこで行き着いたのが、当時から好きだった映像や映画の手法を活用するというアイディアでした。
彼は中学3年生頃から高校にかけて原発問題に関するドキュメンタリーを作り始めます。作品の中では、賛成派、反対派の両方にインタビューをし、双方の意見を組み込みました。

さらに実験的に両方の視点を組み込んだ映像を上映し、その後にディスカッションをしてみたところ、より建設的な話し合いが生まれました。賛成派と反対派が相手の立場や背景を知ることによって、互いの思いや背景をより理解しやすくなったのです。
そうした様子をまとめたドキュメンタリーが『日本一大きなやかん』という作品です。東京の福島映像祭をはじめとする複数の映画祭で上映され、高校生のための映画甲子園の賞も受賞しました。

映像を作り、映画祭への出展や多くの場所で上映をし、さらにワークショップを全国で行う。それが矢座さんにとっての課外活動になったのです。
この課外活動を通して、彼の中で映像技術と対話が重要なテーマとなり、「海外の大学で映像と哲学を学びたい」というパッションへとつながりました。
すべては情熱から始まる
矢座さんは、最初からスーパースターだったのではありません。ただ彼は自分の中に抱いていた違和感に対して正直になり、徹底的に向き合ってみたのです。それが徐々に情熱となって課外活動で社会を動かしていくようになりました。
情熱があれば、自然とリーダーシップを発揮するようになります。逆に、自分の好奇心や内発的動機から始まっていなければ、情熱が持てず、つまらなくなりますし、インパクトは出ません。
それは大人にも言えることです。好きなものをやっていったほうが絶対エネルギーが湧きます。学ぶ意欲も出るので、自分で情報を集め、成長していくのです。

まずは参加、次に探究、最後にリーダーシップ。これが王道のルートです。
時間はかかりますが、最後のフェーズになると、自ら何かを立ち上げたり、リーダーシップをとって人を動かしたりするようになります。
行動にまで至る一連の課外活動は、高校2、3年生からのスタートでは間に合いません。小学生のうちから、興味あることに参加したり、追求したりするチャンスを得て、中学生の間に、探求フェーズを終えておきたいところです。
もちろん、課外活動は海外進学のためだけではありません。その主体性が情熱へとつながり、人を突き動かします。その最たる例が、矢座さんのケースなのです。
さて、次回はいよいよシーズン2の最終回です。茨城の公立高校からハーバードに合格した松野さんのケーススタディをお届けしながら、僕からの最後のメッセージをお伝えしたいと思います。