
2022/07/01
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「Web3でできること」というと、NFTがブームとなり、これからトークンを媒介としたコミュニティーであるDAOが広まりそうだ。だが、より個人生活に密着した投資として、DeFiの一つ、セキュリティトークン(以下、ST)の拡大の兆候が見えている。
セキュリティトークンの「セキュリティ」は「証券」という意味。つまりトークン化された有価証券のことで、ブロックチェーン上で発行される。
日本ではすでに社債や不動産、株式のトークン化が一部で進んでいる。2021年からはSTOと呼ばれるSTによる資金調達が、複数の金融機関を通して実施された実績が出てきた。
STの特徴は、小口証券化した特定の不動産などを、株式のように購入できる点だ。これまでは不動産に投資しようとすると、多額の元手が必要だったが、小口化された少額投資が可能になる。
この仕組みに、日本の大手金融機関が続々と参入しており、スタートアップへの投資も集まっている。今後は個人間での売買が可能な市場の整備計画もあり、取引の拡大とユースケースの多様化も見込まれているのだ。
個人投資家にとっては、暗号資産よりもリスクをおさえた投資先のひとつとなる新しい概念であり、いち早く知っておきたい。また、資金調達したいビジネスのオーナーにとっても、有力な方法となる可能性がある。
STに関する基礎知識、業界の現状について、日本セキュリティトークン協会代表理事の並木智之氏、増田剛氏に話を聞いた。


ブロックチェーン技術を活用した資金調達といえば、暗号資産の新規発行によるICOが広く知られている。「ICOとSTOの一番の違いは価格の理屈付け」と、並木氏は言う。
ICOにおけるコインの売り出し価格は発行体が決めるもので、そこに理論的な裏付けはない。
一方で証券をトークンで表したSTには、基本的に資産の裏付けがある。不動産の場合は専門家による意見が反映され、株式の場合はPBRをもとに設定されるなど、理論的な裏付けがある。
「裏付けとなる資産の価値は大きくは変化しないため、暗号資産に比べてボラティリティーが低く、安定した資産の形成に向いているのもSTの特徴といえます」(並木氏)
STは金融商品取引法上の証券のひとつであり、金融庁の監督下で取り扱われる点も一つの特徴。ICOが分散化されたブロックチェーン上で行われるのに対して、中央管理されたブロックチェーン上で行われる。そのため「詐欺などのリスクもICOと比べると圧倒的に小さい」(並木氏)といえる。
増田氏は、「資産管理の観点からも、暗号資産とは違う」と指摘する。
「デジタル証券としてのSTOでは目論見書の作成が義務付けられていますし、本人確認(KYC)やテロ資金対策(CFT)などの各種コンプライアンスの順守が必須となります。ビットコインのような暗号資産は購入資格も特に存在せず、KYCの担い手がいません。トラブル発生時の責任主体も明確化されていません」(増田氏)
日本では、STOで主に活用されているプラットフォームが大きく3つある。BOOSTRYが開発した「ibet」、三菱UFJ信託銀行が開発した「Progmat(プログマ)」、米国発の「Securitize(セキュリタイズ)」だ。「ibet」と「Progmat」は複数の管理主体が存在する「コンソーシアム型ブロックチェーン」を採用している。
BOOSTRYには野村ホールディングス、野村総合研究所、SBI証券の3社が出資。Progmatにはケネディクス、SBI証券、野村證券等が協業。SecuritizeにはKDDI、三井不動産、MUFGイノベーションパートナーズ、野村證券、SBI証券、ソニーフィナンシャルグループが出資。日本の金融機関が続々参入しているのだ。
「コンソーシアム型のブロックチェーンは、複数のプレイヤーが参加することで互いにモニタリングし合う機能はあります。何か問題が発生した際は外部から監査も行えます。STOで利用されるブロックチェーンのプラットフォームは、ブロックチェーンの良さを生かしながらも、セキュリティ・コンプライアンス面からの要求に対応している点が特徴といえます」(増田氏)
STOは、クラウドファンディング、ICO、IEOなど「金融の民主化」の流れに沿った資金調達の手法ともいえる。
分かりやすい言い方をしてしまえば、STO はネットを介して、マスから資金調達している点とコンプライアンス、管理、開示などにコストをかけている点から、『高級版クラウドファンディング』といえるでしょう。その分、投資家保護の仕組みは強固となっていますから、安心して投資に参加してもらえると期待しています」(並木氏)
なお、日本のように大手の金融機関が中心となり、STOの取り組みを進めている国は「実は世界的には珍しい」(並木氏)とのこと。暗号資産では出遅れたが、STOに関しては日本人の慎重さがいい方向に働いているといえそうだ。
「金融当局に近い金融機関が取り組んでいる安心感もありますし、プライベート型ブロックチェーン上にあるSTの場合は万が一のトラブル発生時も発行主体側が責任を持ってくれる。投資に慎重な人が多い日本人に向いていると感じます」(並木氏)
一方で海外のSTOは「大手金融機関ではなく暗号資産側の企業から始まったものが多い」と増田氏。
「海外のSTOはICOの延長線上で行われたものも少なくないのが実情で、コンプライアンス重視の機能を後付けした『レギュレーテッドICO』的な存在ともいえます」(増田氏)。
日本では2018年のコインチェック事件以降、暗号資産に対する忌避感は根強い。そこで、STOも従来の証券の法規制の中で、きちんと枠組みをつくろうとする機運があるという。
第2話では日本のST業界の現状を、より具体的に解説する。