
2022/06/27
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これまで引き合いに出してきたAxie InfinityもSTEPNも、一度崩壊してしまったと言われています。
しかし、Axie Infinityがつくった GameFiの骨組みの中に学びになることは多くあります。

少し専門的な話ですが、Axie InfinityがやっていたGameFiのトークン価値コントロールについて説明します。
暗号資産には「ミント(mint:鋳造)」と「バーン(burn:焼却)」という操作があります。Axie Infinityでは、ミントは「バトルで勝った報酬をプレイヤーに渡す」ときに行われ、バーンは「ブリード(繁殖)でプレイヤーが消費する」ときに行われます。
Axie Infinityでは「バーン/ミント」の割合が管理されています。共同創業者であるSky Mavis社のJihoは、その平均値は58%だと明らかにしています(2021年8月23日時点)。

プレイヤーにとっては暗号資産の価値が上がるほど報酬(所得)が増えるのでうれしいのですが、ミントされることで供給が多くなると、暗号資産の価値は下がり報酬も減ります。
一方、バトルに勝つには、カードを強くするブリード(投資)が必要です。ブリードするために暗号資産がバーンされるので、暗号資産の価値は上がり、プレイヤーにとっての報酬も増えます。
しかし、ブリードのコストが上がりすぎてしまうと、プレイヤーにとってはブリードへのハードルが上がります。そこでバトルばかり行われると、勝った報酬を渡すためのミントが行われ続け、負のスパイラルになります。逆に、ブリードコストが安すぎると、ブリードに行動が偏り、暗号資産の価値が上がり続けてしまいます。
ゲーム経済圏のバランスを保つためには、ブリーディングのコスト(費用)を適切にコントロールすることが求められます。それができてこそ、健全な経済圏が維持されるのです。
また、この割合についても公開しているところも、透明性が高く、オープンなカルチャーを感じます。
Axie Infinityには、2種類のトークンがあると第4話でも触れました。ゲームの報酬に使われるペイメントトークンである「SLP」と、ガバナンストークンである「AXS」です。
AXSを持つAXSホルダーたちは、AXSを預ける(ステーキング:Stake AXS)ことで、下側に位置する「COMMUNITY TREASURY」(公庫の位置づけ)から報酬を得たり、コミュニティの意思決定に対する投票券を得たりすることができます。

AXSは、ブリードするときにも必要となるため、ユーティリティ(使用)の価値もあります。つまり、より稼げるようになるためにブリードしようとすると、AXSを購入しなければならない仕組みです。

上の図・表はAxie Infinityのホワイトペーパーに記載された、ガバナンストークンを誰にどれだけ割り当てるかを示したものです。Sky Mavis社には21%の割り当てがあることが分かります。
そのほか、プレイヤー(Play to Earn)に20%、AXSの持ち主が預けた報酬(Staking Rewards)に29%など、それぞれに上限の設定がされています。また、下の図からは、65カ月(5年5カ月)の長期に渡って段階的に配布されることが分かります。

つまり、開発・運営するSky Mavis社が中心になるのではなく、ガバナンストークンに基づきユーザーが一体となった「DAO(自律分散型組織)」として、独立した経済圏をつくろうとしたのです。
「ゲームして稼ぐ(Play-to-Earn)」が備わったNFTゲームすべてが、GameFiと呼べるわけではありません。
GameFiはゲームと金融(+DeFi:分散型金融)が合わさった造語。金融だけではなく、DeFiから得たエッセンスこそ重要です。
GameFiとは、ペイメントとガバナンスの機能を持つトークンを用いて、ゲーム経済圏を柔軟にコントロールし、「ユーザーが自発的に動く経済圏」をつくることを意味する、と私は考えています。
この考え方と、Axieが行っていた暗号資産のコントロールというテクニカルな手段は間違っていないのですが、いろいろな理由によりそのバランスが崩れてしまいました。また、Axieはゲーム自体のファンが少なく、ゲーム性における課題も崩壊の一因でしょう。

STEPNは、Move-to-Earnをコンセプトに、歩くことをゲーミフィケーションしている点でAxieより進化しました。新規流入のコントロールに関しても、最初にSolanaチェーンでスタートした際には、アクティベーションコードで制限することでうまくいっていました。しかし、新チェーンで展開した際に、新規流入のコントロールに失敗し、崩壊してしまいました。
これらの例から私が強く思うのは、GameFiは、利回りや投機性よりも、ゲームの「体験価値」で消費が起きるようにしなくてはならないということです。
今、Axie Infinityは、モンスターNFTを育ててバトルをするだけでなく、パズルやシューティング、レースなどの他のゲームでも使えるプラットフォーム戦略を打ち出しています。ゲーム性を高め、飽きさせない施策に力を入れています。
今後は、スクウェア・エニックスやサイバーエージェントなどが、この領域への参戦を決めています。ゲームの面白さを持ったGameFiがやってくるのです。
今のGameFiは利回りや投資行動に重点を置いた、ある意味未完成なGameFi 1.0でした。これが、ゲームとしての中身で争うGameFi 2.0の世界に進みます。

スクウェア・エニックスのような、ゲーム業界の大物が参入するなら、新規プロダクトが入り込む隙はなさそうに感じますが、私は新規参入のプロダクトやプロジェクトにも勝機はあると思います。旧ゲーム人口以外の50億人にアクセスしうる、新しいマーケットを作れる可能性があるからです。
投機ではなく、ゲームとしての体験価値に重きを置いたGameFi 2.0は、必ずやってきます。目まぐるしい変化で先は読めませんが、エンタメ体験のアップデートに向けて、DEAも頑張っていきます。