
日本はまだまだイケる! モメンタムを底上げしたい
取材・構成/宮本恵理子、宮本香奈 撮影/林 直幸
――インターネットの技術を使って、情報を開放し、フェアなトレードを可能にする。「ブロックチェーンと世界観が近い」という話に納得しました。
とはいえ、個人がどこまで情報を公開できるかという課題はなかったのでしょうか?
YOUTRUSTというサービスを通して、壮大な実験をやっているという感覚です。
まず「転職意欲を社内の人に見せる」なんてあり得るのか? というのが、最初の実験でした。
サービスを始める前にヒアリングをしたときには、ほとんどの人から「転職意欲なんて公開しない」と言われましたが、私自身は公開したかったのです。
自分が転職活動するときに、Facebookに「転職したい」と書いてしまおうと思ったのですが、DeNAの人事という立場でそれはできず、でもそういうことを書ける場所をつくりたいと思ったのが始まりでした。
サービスをローンチしてみると、12%くらいの人が「転職を考えている」というステータスにしているのを見て、これならみんな転職意欲を公開してくれると確信できました。
(知人のプロフィールに推薦文を投稿する)「紹介コメント」の機能も同様で、「お金がもらえるわけでもないのに、わざわざ書く人がいるのか?」という疑問はありました。
でもリリースしてみると、紹介コメントを書く人たちはいて、書いてもらったら書き返す人が大多数だったため、予想以上に盛り上がっています。
こうやってひとつずつ、実験しながらプロダクトを出してきてきたことの蓄積です。そして、これから証明していくこともまだまだあります。
――岩崎さんは新世代の起業家としても注目されています。ご自身の実感と、起業家のあり方をこんなふうに変えていきたいというお気持ちがあれば教えてください。
まず、日本の起業家の数は10倍に増えるべきだと思います。
アメリカなどの諸外国と比較すると、日本だけが時価総額ランキングTOP10の顔ぶれが30年変わっていません。1990年代以降に誕生した会社は一つも入っていない。
生物であれば血がめぐっていない状態で、日本はじわじわと死んでいく国になってしまう。
私はよく組織や体を池にたとえるのですが、池は新しい水が入って、古い水が出て、循環しているからこそきれいに保たれます。日本は今、よどみ始めていると思います。
また、人間は「進捗していること」に幸せを感じる生き物です。
たとえば、「昨日100円だった売り上げが今日1,000円になりました」という話と、「先月3億円あった売り上げが今月は2億円でした」という話では、前者のほうが幸せだと思います。
絶対値の比較ではなくて、進捗や成長と共にある勢いや弾みに幸せを感じるとしたら、日本は今とても不幸せな状態です。
すでに仕上がっている会社が、じわじわ終息していくのを見ているだけでは、息子たちの世代に対して「日本には希望がないから海外に行きなさい」という教育をすることになってしまう。
それではあまりにも悲しいですし、面白くない。
「オレたち、まだイケる!」と日本のモメンタムを上げていく活動をしたいです。
そして、スタートアップはその大きな突破口になれると思っています。
今の日本は起業家の数が少なすぎるので、逆に考えるとポテンシャルもまだまだあるということ。
「起業なんて考えたくもない」というタイプの人間だった立場から、私が起業を勧めることにも意味があるのかなと思います。
――起業家って、楽しいですか?
会社員として骨を埋めようと思っていましたが、起業は楽しいです!
自分が人生でした選択の中で一番良い選択だったと思います。
自分の人生をコントロールしている感覚があり、常に「自分で何とかできる」という楽しさがあります。

逆も然りで、何とかできなかったら自分のせいという気持ちもありますが、他人のせいにせずにすべて自分で引き受ける充実感は、ひとり旅の感覚に近いです。
――たくさんの人の人生を背負うプレッシャーは感じませんか?
自分の会社のメンバーが増えるのは、仲間が増えた感覚で単純に嬉しく、あまりプレッシャーは感じていないです。
それに正直、「社員を養っている」という感覚はなくて、皆で同じビジョンを目指して走っているという感じでやっています。
私は自分でなんでもできると思っていないのでメンバーを本当に頼っていますし、彼ら彼女らも「我々もちゃんとしなくては、共倒れしてしまう。だから全力でやる」というポジティブな緊張感を持って働いてくれていると思います。