
キャリアのチャンスを すべての人のものに
取材・構成/宮本恵理子、宮本香奈 撮影/林 直幸
――先ほど「未来が解像度高く見えるようになった」というお話がありました。
岩崎さんには今、どのような未来が見えているのでしょう。
「私は当面はキャリアを変えない」と100%決めている人を除くすべての人が、YOUTRUSTのアカウントを持っていて、「仕事のことをYOUTRUSTに記録で残そう」「副業を考え始めたからステイタスを変えよう」「転職をしたくなったら、まずYOUTRUSTに意欲を書いて、スカウトの連絡を待ってみよう」と考えてもらえる未来です。
「採用のインフラ」と言われるくらい、すべての社会人のキャリアのすぐそばにある場所になりたいです。
今までだと、転職活動をしようと思ったときに初めてどこかのエージェントに登録するというアクションを起こすのが常識でした。
でもこれからの世界は、終身雇用を信じるわけでもなく、かといって今すぐ辞める決断をするわけでもなく、「今の仕事は楽しいけれど、5年後はこの会社にはいないだろうな」とぼんやり考えながら働く人が大半になると思います。
今の日本の転職市場は「する」か「しない」かの二択で、いつ飛んでくるか分からないキャリアのチャンスを逃さずキャッチする場所がありません。
自分のキャリアオポチュニティを逃さないでいられる場所がないのが現状です。
採用に感度の高いごく一部の人たちだけが、つながりの中でチャンスをキャッチできている状態ではないでしょうか。
でも本来は、日本全国のすべての人が広くチャンスをつかめる居場所があるべきです。
その居場所をつくらないことには、日本の人材の流動性は上がらない。だから、私は成し遂げたい。YOUTRUSTをもっともっと広げていきたいんです。
――まさに“転職活動の民主化”ですね。特に「この業界を変えると面白い」と狙っている業界はあるのでしょうか。
これまで「絶対安泰」と思われてきた業界の人たちにアプローチしていきたいですね。
なぜなら、これだけ世の中が変化しようとする中で、今めちゃくちゃ“ビビっている”はずなので。
不安から解放され、本来の力を発揮できるチャンスを知ってもらえたらいいなと思います。

私は30代前半ですが、大企業で係長になっている同級生たちは「定年間際の先輩のようにはなりたくない」と言っています。
「彼らは逃げ切れるけれど、自分たちはずっとこの会社にいられるかも分からない。でも年齢を重ねてから慌てても転職もできない」と不安を感じています。
でも副業は禁止されているし、エージェントに登録すると後ろめたい気持ちになる。
「登録=転職の意思表示」ではなくて、ゆるく網を張っておける場所を欲しています。
アメリカでは「LinkedIn」がその場所にあたり、常に全員が転職スタンバイ状態の世界です。
全員が「明日Fire(解雇)って言われたらどうする?」という危機感の中で、自分のキャリアやアセットを貯金して見せておいて、オポチュニティが来るようにネットを張っているという環境です。
日本も、市場としては同じ危機感を持たなくてはならない状況なのに、ネットになれるサービスがないというのが課題でした。
そして、私たちがそのネットになれる自信はあります。
ユーザーの皆さんが定期的に自分のプロフィールを見たり、投稿したり、友達とつながったりしておくことで、いざという時にキャリアオポチュニティの連絡が来るような世界をつくりたいと思っています。
――今までは、リアルに近くにいる人に声をかけることで実現していたチャンス獲得の機会を、テクノロジーの力でもっと広げていくということですね。
そうです。今まで実際に転職や副業につながっていたご縁は、ポテンシャルの1%程度ではないでしょうか。
自分の友人や元同僚たちでさえ、直近のステータスや経歴を知らないことも多いのではないかと思います。たとえば「あの人、広告営業だけじゃなくて、記事の編集もできるんだ」といったことが常にオープンになっていたら、つながるご縁はもっと増えるはずです。
企業側にもメリットは大きいはずです。
過去内定者の「いつか採用したい人リスト」の人たちと日替わりでランチして「最近どう? 転職考えていない?」と聞けば、10人に1人くらいは「実は考えています」となるかもしれませんが、あまりにも非効率的でコストもかかります。
転職意欲や副業意欲、今どういうことに悩んで、どういう価値観で仕事をしているのかなどが、コミュニティ内で常にオープンになっていれば、確実性の高い採用につながります。
――YOUTRUSTのサービスで使われている「転職意欲」という言葉も絶妙ですね。意志の少し前の意欲から、発信できる。
YOUTRUSTを使い続けることで、働き方をより幸せなものに変えていけるというイメージはありますか。
日本全体が少子化で労働人口が減っていくことは明らかなので、「日本で生まれ育った日本人で、かつ働く人」はどんどん減っていきます。
では日本としてもう成長しなくていいのかというとそんなはずはなくて、どの会社も成長に向けて頑張っている。だから採用のニーズが減ることはないと思います。
すると需給バランスはどんどん崩れていき、“超”売り手市場化が加速します。
「1億総オーディション」状態がおきて「私を欲しい会社ありますか?」と誰もがスカウトを待つ世界になる。
結果、個人が企業にエントリーするのではなく、企業側が個人に「うちの会社はどうですか?」とアプローチするのがスタンダードになるはずです。
今までは名声のある人にしか起きなかったFA(フリーエージェント)が、ごく普通の人にも浸透する。それはきっと、今より「幸せに働く人」を増やしますよね。YOUTRUSTは、その変化を応援していきたいです。
――たとえば、派遣社員で突出した能力のある“売れっ子”の情報は派遣元のエージェントが握って独占していましたが、これからは個人に直接オファーがいく時代になる。ということは、人材業界のプレーヤーもかなり変わると見ていますか?
変わらざるを得ないと思います。なぜなら、人材の市場は「情報」によって動くもので、情報が集まる場所が変わるからです。
人柄も含めたその人の能力や特性についての情報は、一緒に働いた経験がある人が一番知っています。
その個人にひもづいた情報をオープンにすることで、採用のあり方はまったく変わってくるはずです。
たとえばYOUTRUSTには「紹介コメント」という機能があり、Aさんを知っているBさんから「プロジェクトをご一緒できて楽しかったです! また一緒に働きましょう」と書かれたコメントが公開されます。
すると、それを見たCさんが「え? あの優秀なBさんに『また一緒に働こう』と言われているAさんってすごい。アポイントをとってみよう」という導線につながるんです。
つまり、その人の仕事ぶりに関して一番情報を持っている人が、情報を出せる仕組みになっている分散型世界観と言えるかもしれません。
派遣元や勤務先だけが評価を持っていた世界から、個人個人がお互いの評価をする世界が可視化され、個人にたまった情報価値が交換できるという世界は、ブロックチェーンの世界観にも非常に近い。そんなイメージを持っています。