
キャリアSNSで取り戻す 「人間らしい転職活動」
取材・構成/宮本恵理子、宮本香奈 撮影/林 直幸
――岩崎さんは「リーダーの仕事は、決めることであり、”北極星”を示すこと」とおっしゃっています。
リーダーとして成長する過程で、決める基準や決断の仕方に変化はありますか。
二つあります。一つ目は、ゴールから逆算して意思決定するようになったこと。
目標とするゴール、描く未来のスケールが大きくなったので、その“大きな未来”から逆算する形で今やるべきことの判断をするようになりました。
二つ目は、自分で“わがまま”に忠実に決められるようになったこと。
自分自身の意思で決めて、責任を引き受ける覚悟ができたという意味です。
以前は、身近な人たちを幸せにすることを重視するあまり、「一緒にいる人たちがどういう顔色で働いているか」に意識が向いていたのですが、目線が一段上がってからは、「今の身近な人たち」よりも「5年後の日本で働く人たち」がいい顔をしているかに照準を合わせるように。
結果、いい意味でわがままになれたんですよね。「今は少し嫌な顔をされてもいい」と覚悟を決めて、「申し訳ないけど、そちらの方法ではなくこれでお願いします」とブレずに伝えられる自分に変われました。
また、未来を描くときの解像度も高くなったと思います。
信頼をベースにゆるやかにつながっている人たちが、然るべきタイミングでプロジェクトベースで集合したり、解散したり。短期的な関係性にとどまらず、10年、20年の長いスパンでずっとつながっていたり。
そんな「仕事と人がめぐり続ける流動世界」が、日本にとって絶対に必要なものになると確信を持てるようになりました。
――実際にユーザーの方が増え、YOUTRUSTを通じて信頼の先にある転職を実現する姿がどんどん見えてきたことも影響していますか。
それも大きいです。事業を始めた当初からもちろん、副業や転職が決まったというお声はいただいていたのですが、この1年でその声を何十倍もいただくようになりました。
それも「転職決まりました」だけではなくて、日常のいろいろなシーンで使われている具体的なお話を聞けるようになったのです。
リアルに誰かの人生に影響するサービスを提供できているのだという実感から、一層責任の大きさを感じています。
――SNSとしてのYOUTRUSTの成長はどう感じられていますか。
起業した当初は想定していなかったような、SNSとしての価値が広がったことは嬉しいですね。
この1年で、副業や転職を目的に使っていただくだけでなく、「キャリアSNS」として皆さんに親しんでいただく機能に向き合って、プロダクトバリューを磨くことに重点を置くようになりました。
FacebookやTwitterのような既存のSNSは、ライフイベント寄りで、仕事の話がしづらいイメージがあります。
一方で、日本のビジネスマンは、四六時中仕事をしていて、人生の半分かそれ以上働いていると考えると、悩みも基本的に仕事の話になるはずです。かといってブログに書いて発表するほどの明確な結論があるわけでもない。
誰かの役に立つノウハウとも言えないとりとめのない悩みや迷いを、みんなどこかで吐き出したい。その受け皿になれたらいいなと思っています。

「副業を探してみたいけれど、よく分からないから誰かやっている人いないですか?」といったポジティブな投げかけから、「最近体調が悪くて、自己肯定感も下がっている」「子どもが熱を出しちゃって全然働けてない」という本音まで発信できるのは、心理的安全性の高い場所ですよね。
そういう発信はとりとめのない話のようでいて、実はその人の仕事の哲学や、未来への願いや、大切にしているものの片りんが表れるもの。
採用する企業側がスカウトをする前に、対象者の「脳内メモ」のような投稿を閲覧すれば、経歴だけでは分からない“人となり”の部分を見ることができます。
そして一緒に働くには、過去の経歴よりもそういう人間性の部分のほうがきっと重要になる。
これまで実現できていなかった、本質的なコミュニケーションの基盤をつくりたいと思っています。
――リラックスして仕事の話題ができる場であり、より希望に合うキャリアを見つける場にもなるということですね。
SNSは、その人の考え方だけでなく、その人がどういう点に違和感を感じて、どういう点に喜びを感じるのかといった人柄が表れ、それが蓄積されていきます。
つまり、フローとストック、どちらの資産価値もある。
従来型の転職活動は、履歴書と職務経歴書を書いてエージェント経由で公開し、興味を持ってくれた会社に面接行って……とステップが多く、ハードルが高いと感じます。でも本来は、「2年前に一緒に働いていたAさんを誘ってみようよ」「あ、Aさんいいね」と仲間うちでまとまる話のほうが、みんなハッピーだし、話が早いはず。
たとえば、私が信頼する仲間から「岩崎さんに絶対合うと思うから、あの人に一度会ってみてよ」と言われたら、直接の知り合いでなくても、経歴関係なく一度会います。
そういう「人間らしい転職活動」を、インターネット上で実現しているのがYOUTRUSTです。
――実際、転職の成立は増えているのでしょうか?
マッチング数は1年で13倍に伸びています。
転職を含めたキャリアチェンジを促進してきたインターネットサービスは、これまではTwitterやnoteが主流だったかもしれません。企業の人事担当者がこれらのアカウントをリサーチしてスカウトするという事例も耳にしたことがあります。
でも肉厚な内容を伴う発信を続けることは、“何者でもない人”にとってはすごくハードルの高い行為です。
「自分なんて書くほどのネタはないです」と感じる方がほとんどですから。
だから、私たちはとにかく発信のハードルを下げることに注力しています。
たとえば、「脳内メモ」という呼び方で投稿を応援するアクション。形式ばったものでなくていいというメッセージを伝えています。
今は実装工数が低いのでハッシュタグを使ってやっていますが、今後はタイムラインのアルゴリズムやフォーム画面などを工夫して、もっと気軽に「安心安全に楽しめる場所」だと感じてもらえるように頑張っていきたいです。