
2022年7月5日
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2人目にご紹介するのは、ミライロの垣内俊哉(かきうちとしや)さんです。

垣内さんは生まれつき骨が弱く折れやすい遺伝性の病気があり、幼いころから車いすで生活してきました。同じ障害のあるご家族もいます。そのような背景を持つからこそ、「世の中を変えたい」という思いは非常に強いものがあります。
かつては何とか自分の足で歩きたいと願い、障害を克服しようと志して手術やリハビリに励んだそうです。しかしその願いがかなわないと分かったとき、「歩けなくてもできること」を探し始め、そして「歩けないからこそできること」に行き着いたのが起業の原点になっているのだといいます。

「ミライロは、障害のある方やご高齢の方、そのご家族の方が生活するうえで、不便と感じることや不安に思うことを取り除くことを目指し、環境・意識・情報の『3つのバリア』と向き合っていくことを主たる事業としています。その礎となっているのが『バリアバリュー』という企業理念です」(垣内さん)
一般によく使われる「バリアフリー」という言葉は、「バリア(障害)」がない社会を目指す考え方といえます。
一方、ミライロが掲げる「バリアバリュー」は、人それぞれの弱点や短所、苦手なこと、トラウマやコンプレックスなどの「バリア」を、「克服したり取り除いたりすべきもの」とは考えず、考え方や周囲の向き合い方次第で「バリュー(価値)」に変えることができるものとしています。

「歩けないからこそ、見えないからこそ、聞こえないからこそ、気付けることや伝えられること、生み出せることがあります。『バリアバリュー』の企業理念のもと、障害のある方や周囲の方がもっと社会で活躍できるようにしたい。
いま国内で働いている障害者は80万人超。平成元年時点では19万5000人しか働いていなかったので、4倍近くに増えていると考えれば状況は改善しつつあるといえます。しかし障害者全体で見た場合、就労している人は1割に満たないのです。
これをもっと改善していくためには、障害のある人たちがもっと『買い物へ行きたい』『食事に行きたい』『旅行に行きたい』と思うことが必要です。そのような思いがあってこそ、人は『頑張って学ぼう、働こう』と思うものだからです。
私たちは、『3つのバリア』の解消を実現することで、障害のある方の外出意欲や消費意欲を高めることを目指しています」(垣内さん)

ミライロが創業時から手掛けてきたビジネスは、法人や自治体に向けたユニバーサルデザインのソリューションの提供です。障害のある方たちをどうサポートするのがいいのか、施設のつくりをどのようにすればいいのかなど、レストランやホテルといったホスピタリティを必要とする企業などに向けてコンサルテーションするのです。
また、ミライロは「ハードは変えられなくても、ハートは変えられる」をコンセプトに、障害者や高齢者のサポート方法をレクチャーするユニバーサルマナー研修事業も手掛けています。
2013年には、「日本ユニバーサルマナー協会」を設立。障害者に適切に声掛けをしたりコミュニケーションを取ったりするためのマインドとアクションを体系的に学べるよう、「ユニバーサルマナー検定」を作り、検定の普及にも取り組んでいます。
ミライロの事業の中でも特に注目を集めているのが、2019年7月にリリースしたデジタル障害者手帳「ミライロID」です。

「障害者手帳を出すときの枕ことばは『すみません』なんです。毎日『すみません、障害者手帳を持っています』と言いながら、前を向いて明るく生きていけるはずがありません。
問題の一つは、障害者手帳の発行権限が国から地方行政に移されているために国としてのフォーマットがなく、全国各地で内容もデザインもバラバラの状態だということ。公共交通機関など事業者側が障害者手帳をチェックするのに手間がかかり、ユーザー側の心理的な負担にもなっています。
障害者手帳がスマホで利用できればユーザーが気軽に提示しやすく、外出時の物理的・心理的ハードルが下がると考えました」(垣内さん)

ミライロIDのリリース時の導入企業は6社だけでしたが、SDGsを重視する世の流れやDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進という時流にマッチし、2022年5月時点で導入した事業者数は3500を超えています。
ミライロIDは障害者手帳の代替手段として無料で使用できるだけでなくさまざまな機能があり、例えば「ミライロクーポン」では、企業が障害のある方を対象に電子クーポンを発行することができます。
ミライロIDは企業が幅広く多くの障害者に情報やサービスを届ける販促ツールにもなっており、今後の展開次第ではダイバーシティにリアルにつながっていく商品やサービスのプラットフォームになる可能性を秘めています。

*第15話に続く。本連載は2話ずつ毎日公開します。