
プロ型とマネジャー型。CMOの2つのタイプ
聞き手/佐々木紀彦 撮影/林 直幸
マーケティング分野のプロとして注目が高まるCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)。CMOとはどんな仕事で、どんなスキルセットが必要なのか。第1回は、リクルート、ヤフーなどを経て、現在、イーデザイン損保のCMOを務める友澤大輔氏のスキルセットを解読する。
会社を変える“ナマズ人材”の生かし方
――リクルートで濃密な時間を過ごした後、楽天を経て、ヤフーに移っていますね。
ヤフーもまさに井上さん体制から宮坂さんの体制に変わるタイミングで入社しました。ヤフーの広告プロモーションと全サービスのマーケティング責任者として7年間過ごしました。リクルートとヤフーの時代が、自分のキャリアの中の大きな柱になっています。本当に感謝をしています。
ヤフーに移った理由は、変わっていく会社にもう一回自分が関わってみたかったのと、自分のマーケティングの専門性をどう生かせるかを試してみたかったからです。

――当時のヤフーも宮坂さんを筆頭にスターぞろいでしたね。
前社長の川邊さんや、今年社長になった小澤さんなど、いろんな人がガッと入って、ガラガラと変えていった時代ですね。
会社を変える人材として“ナマズ人材”という言葉を使うんですが、意味を知っていますか?
――知らないです。
イワシって沖合から港まで運ぶ間にほとんどが死んでしまうらしいんです。でも1匹のナマズを同じイケスにいれると、イワシは見たこともないナマズに驚き、緊張して勝手に動き回り、ピンピンして港までたどり着くらしいです。
ナマズは気負うことなく、自分がやりたいことをやればいい。そしたら、勝手に周りのイワシが焦って動き始めて、イキイキとしていく。これがナマズ人材の役割です。

リクルートにはナマズ人材がたくさんいますが、私自身もいろんな会社でナマズにされることがよくあります。
ナマズ人材の中には、商品開発をする人もいれば、事業開発をする人もいます。私の場合は、マーケティングによって、自分たちの商品をどう世の中に魅力的に見せて、市場を作っていくか、どう会社を変えて、どう人を変えていくか、を求められるケースが多いですね。
――そうしたナマズ人材として、PERSOLや東京海上といった大企業で働くことになったのですね。
実はそれまでの仕事はほぼすべてメディアなんです。ベネッセもニフティもリクルートもヤフーもメディアサービスです。特にインターネット分野でいろんな経験を積むことができたのが、スキル面でも専門面でも大きなプラスになりましたね。

次は、メディアを超えて、日本のいろんな産業でインターネットやデジタルの専門性を生かしたい、そしてもっとインターネットやデジタルの可能性を解き放ちたいと思い、PERSOLに転職しました。
PERSOLではCDO兼グループデジタル変革推進本部長として移ることになりました。いわゆるDXの担当として、グループ全体のデジタル変革を3年間ほど担当しました。
当時から一部副業で、東京海上やイーデザイン損保に関わっていたのですが、2021年4月から正式にイーデザイン損保のCMOに就任しました。東京海上ホールディングスにも所属していて、デジタル戦略部のシニアデジタルエキスパートを兼任しています。

CMOの役割とは何か?
――友澤さんはいろんな企業でいろんな役職を経験していますが、CMOの役割をどう定義しますか?
CMOにとって、対外的なセールスプロモーションやマーケティングコミュニケーションはもちろん大事ですが、社内向けのインターナルな活動も同じくらい大切です。
顧客創造こそがマーケティングや企業経営に求められることですが、顧客を創造していくためには、社員がイキイキしていて、社員がコミットしている必要があります。だからこそ私は、会社を変革する際に、“対外的なマーケティングコミュニケーション”と“社内的なマーケティングコミュニケーション”の両方をやるようにしています。
――CMOの定義は人によって結構違いますね。
大きく2つのアプローチがあります。
一方は、率先垂範で自分がプレーヤーとして何かをやっていくタイプ。これはプロフェッショナルとして、CXOなどの役職で個を突き抜けさせていく形です。
もう一方は、ピープルマネジャーとして周りとうまく協働しながらやっていくタイプ。こちらは、専門家というより、マネジャーとして執行役員などの役職に就く形が主流です。
――元USJで刀CEOの森岡毅さんや、元スマートニュースの西口一希さんが前者のタイプでしょうか。

そうですね。CMOタイプは独立して自ら経営者になるのもいいと思います。独立を選ぶにしろ、社内でCXOに就くにしろ、自ら人事決定権などのボールを持っている状態を作って、事業を研ぎ澄ませていけるかが勝負です。
逆に、自分の強みが言えない人は、人を生かすピープルマネジメントの道を進んだ方がいいかもしれません。個よりも組織全体をチアアップして、下からグーッと引き上げていく方がいいですね。その役割のトップとして執行役員になるイメージです。
それぞれ魅力的なキャリアプランですので、自分に合った方向を選ぶのが大切です。私の持論として、35歳までなら自らの弱点は克服できますが、35歳を超えると無理になってきますので、35歳くらいにはどちらが向くかが分かってくるはずです。
*第3話に続く