
2022/06/12
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リーダーに抜擢されたのですが、どうすれば信頼されるリーダーになれるでしょうか?(女性、20代後半)
今の時代、リーダーになるのは大変ですよね。昔のようにグイグイ引っ張っていくだけがいいとは思われないからです。やりすぎるとパワハラだと言われるし、今の若い人はあまり強く言われるのを嫌いますから。かといって頼りないと思われてもいけません。さて、どうしたものか……。
一つの考え方としては、威厳を持つことだと思います。威厳があれば皆従うのではないでしょうか。雰囲気だけで怖がられている人もいますよね。こういうキャラの人は得だなと思います。別に声を荒げずとも、皆言うことを聞くのですから。
私も若いころ工業高等専門学校で教えていたときは、高校生くらいの年齢の学生たちに、よくからかわれていました。威厳がなかったのでしょう。仕方なく最後は声を荒げていましたが、あまり効き目がなかったのを覚えています。
イタリアの思想家マキャベリが説くリーダーシップ論は、まさにそんな威厳を持つことの勧めだと言っていいでしょう。いわゆるマキャベリズムです。彼は『君主論』の中で、君主たるもの「愛されるよりも恐れられることの方が望ましい」と断言しています。その方が秩序が保てるというわけです。
ただ、怖がらせるだけだと現代社会ではそっぽを向かれる可能性もあります。したがって、狡猾になる必要があるのです。マキャベリ自身、理想のリーダー像を動物の比喩で説明しているのですが、そこではライオンの強さとキツネの狡猾さが必要だといっています。つまり、上手に怖がらせないといけないということです。
例えば、内部の人を叱って見せしめにするのではなく、外部の人に対してビシッとした姿を見せれば、頼りがいのあるリーダーに見えるのではないでしょうか。まさに一国のリーダーが、国内での支持を得るために狡猾に外国を非難するように。
この狡猾さは、ある意味で柔軟性と言い換えることもできます。原理原則にこだわっていては、物事をうまく進めることはできませんから。
これは中国の思想家・孟子も言っていることです。当時、王様のアドバイザーでもあった孟子は、こんなリーダー論を説いています。「大人なる者は、言必ずしも信ならず、行必ずしも果たさず、惟義の存る所のままにす」と。
大人というのは「だいじん」と読むのですが、人の上に立つ者のことを指します。そういう人物は、自分が言ったことや、やりかけたことを必ずしも実行しなくていいから、その場で求められる道義に従いなさい、ということです。
とはいえ、決して場当たり的な態度を取れというのとは違うと思います。そうではなくて、原則にこだわることなく、その時々で最善の道を選べということでしょう。そうしていれば、たとえ失敗しても、人は付いていくように思います。
信頼されるリーダーの条件とは、毎回最善を尽くしているかどうかなのかもしれません。
日本の哲学者・和辻哲郎は、信頼とは時間によって形成されるものだと説いていました。つまり、一回いいことをしたからではなく、常に最善を尽くしてきたという事実が大事なのです。何度失敗したとしても。集団における信頼は、そうやって長い時間をかけて築いていくものなのです。
とりわけ若くして抜擢されたということですから、やっかみもあるでしょう。年上の部下もいるかもしれません。そんな中でリーダーとしての信頼を勝ち取るのは簡単ではないはずです。
私がお勧めするのは、逆に部下を信頼することです。部下の方が自分より経験が豊富だったり、年齢が上だったりした場合、相手を立てるということもありますが、それ以上に実際に彼らの能力や経験を信頼して、任せるということです。
リーダーに抜擢されると、何かと自分でやってしまいがちです。気を使うからなのでしょうが、かえってその態度が不信を呼びかねません。あのリーダーは自分たちを信頼していないのではないかと。
そうならないようにするためにも、リーダーである自分がまず部下を信頼する、そして任せる。その代わり、すべての責任を取る。それを繰り返していれば、和辻の言うように、ある一定の時間がたった時に自然と信頼を勝ち取ることができるに違いありません。
着任早々、華麗に大事件を処理して一気に信頼を勝ち取るリーダーは、テレビや映画の世界だけの存在です。ぜひ焦らずいいリーダーになっていただきたいと思います。
そういえば、マキャベリはローマの歴史についての本も書いています。あの「ローマは一日にして成らず」という格言の通り、彼の言うリーダーの威厳も、決して短い期間では育めない代物なのかもしれません。
*本連載は毎週日曜日に更新します。第20話は6月19日に公開します。「話一覧」の左上の星をクリックすると、更新時に自動で通知が届きます。