
2022/03/17
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インターネット動画やSNSが普及した2020年代前半のいま、世界的に「音声コンテンツ」に注目が集まっているのはご存じだろうか。
「なぜいまあえて音声なのか」という疑問は、音声コンテンツに日頃関わる私がよく聞かれる質問の一つだ。
本連載では、音声コンテンツの成長の背景や世界的な動向を分析し、明日からのビジネスやスキルアップに活かせる実用的な音声コンテンツをカテゴリーごとに合計110番組紹介する。
音声市場を考える上で、海外にも目を向けてみると興味深い2021年の調査データがある。
カナダのHootsuiteが43カ国の16歳から64歳を対象に行った調査によれば、インターネットラジオの一つである「ポッドキャスト」を月1度以上利用するユーザーは、アメリカで44.5%。43カ国の世界各国平均では約44.8%であった。
では、日本はどれくらいかというと9.9%と43カ国中最下位だ。
もちろん、日本では音声アプリなどで音声コンテンツに触れているユーザーもいるので、ポッドキャストの普及率が必ずしも音声コンテンツ全体の利用率を示しているわけではないが、その普及の状況は日本と海外では少し異なる、ということを頭の片隅に入れておく必要がある。

既存のラジオ同様、広告はポッドキャストや音声アプリなどのインターネットの音声コンテンツにおいても重要なビジネスモデルといえる。
IAB(米国広告協議会)のレポートによれば、米国のインターネットの音声広告の市場規模は過去数年間成長を続けており、2020年に媒体社収益で30億ドル(約3300億円)を超えた。
成長率も2019年までは毎年20%以上のペースで成長しており、コロナ禍で成長が鈍化した2020年においても、前年比13%増と引き続き成長が続いている。

一方で、音声コンテンツの別の収益モデルとして「ユーザー課金」にも注目が集まりつつある。
日本でもユーザーが急増している音声SNS「Spoon」では、リスナーから音声配信者へのギフティング(投げ銭)モデルが急成長しており、年間のグローバルの流通額は2020年実績で83億円を超えた。
また、その他のリスナー課金の手法として、SpotifyやApple Podcastといった2つの主要ポッドキャストアプリで、音声配信者がサブスクリプション課金プランを提供できる機能が2021年に開始されている。
実はすでに米サブスクリプション課金プラットフォームであるPatreonでは一部のポッドキャスト配信者がリスナーに対して月額プランを提供しており、トップクラスの配信者では月間売り上げが1500万円を超える配信者もいる状況だ。
音声領域への注目の高さを象徴するように、GAFAと呼ばれる巨大IT企業や大手プラットフォーマーが音声領域への投資を進めている。
Amazonは2020年にAmazon Musicにポッドキャスト機能を追加し、米国3位のポッドキャストのコンテンツ制作企業であるWonderyを買収した。現在はスマートスピーカーのAmazon Echoとの連携を視野にライブオーディオにも参入するとうわさされる。
一方で、インターネット広告の巨人であるGoogleも、2021年にYouTubeに音声広告機能を追加した。
Googleが検索エンジンのアップデートとして、BERTという自然言語処理アルゴリズムを用いて文脈理解を強化したのは、自社のスマートスピーカーであるGoogle Nest上の音声対話のニーズを見越してのものであることは想像に難しくないだろう。
Clubhouseのブームで注目を集めた音声SNSの領域には、Twitterが「Spaces」という音声機能で参入している。
またFacebookも「Live Audio Rooms」で音声SNSへの参入を発表した。ポッドキャストをFacebookページ上で聴ける機能もベータ公開され、既存SNSと音声コンテンツの融合が進みつつある。
音楽ストリーミングサービスであるSpotifyは2019年ごろからポッドキャスト関連企業の複数社の買収に巨額の投資を行っており、Gimret MediaやMegaphoneの買収の際にはそれぞれに2億3000万ドル(約250億円)以上の大型投資を行った。
現在はポッドキャストの生みの親であるAppleと、音楽だけではなくポッドキャストプラットフォームとしても熾烈な戦いを繰り広げているが、そのAppleも2020年にポッドキャストのレコメンドサービス、Scout FMを買収している。
このような大手プラットフォーマーの動きを見れば、「音声」はインターネットにおける「動画」や「SNS」の次のコンテンツフォーマットであると捉えることもできるだろう。
人間の五感の一つでもある「聴覚」へのコンテンツの覇権を巡り、様々なプレイヤーがいままさにその座を狙っているのだ。
(カバーデザイン:武田 雲 写真:Talaj/iStock、stockcam/iStock)