
2022/02/01
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大企業が社内の新規事業としてソーシャルビジネスに取り組むときには、さまざまな障壁にぶつかる。
それは、ソーシャルビジネスが「利益を求めて効率化を追求するビジネスから“取り残されがちな人々”の課題を解消する」という前提に立つものだから。
企業の社会的責任がますます問われる時代の中で、大企業はどんなステップでソーシャルビジネスを立ち上げるといいのか。
ボーダレス・ジャパンが2年前から伴走支援をしているセブン&アイ・ホールディングスの伊藤順朗常務取締役との対話から、そのヒントを読み解こう(文中敬称略)。

鈴木 伊藤さんから初めてお声かけをいただいたのは、もうかれこれ2年前のことですよね。
「今度、セブン&アイのグループ内でソーシャルビジネスをゼロから立ち上げる企画に取り組みたいので、力を貸してほしい」とご相談を受けました。
そもそもなぜその問題意識に立ったのか、教えていただけますか?
伊藤 私たちはもともと「小売業」という地域密着型の商売をしておりますので、地域社会にもっとお役に立てる存在にならないといけないという課題意識は、ずいぶん前からありました。
「CSR統括委員会」という堅苦しい名前の組織は以前からあったのですが、これはどちらかというと“守り”のCSR(Corporate Social Responsibility, 企業の社会的責任)の意味合いが強かったんですね。
これからは守りだけでなく“攻め”。
(アメリカの経営学者の)マイケル・ポーターが提唱するCSV(Creating Sharing Value, 共通価値創造)も必要なのだと強く意識するようになったのが、5年ほど前のことです。
つまり、私たちの事業を通じて社会課題を解決していくことで、地域にポジティブな価値を提供できる企業へと進化していく。
そんなコンセプトのもとにCSR統括委員会の中に「社会価値創造部会」を新たに立ち上げました。

事業として売り上げを上げながら、社会的な価値も生み出していく。
「1アクション、2バリュー」という視点で、各社が行っている事業を洗い出し、整理してみることから始めて、そこから見えてきたCSVにつながる取り組みを促進する努力は、この2〜3年で進めてきました。
鈴木 SDGsというスローガンが今ほど聞かれなかった時期から、すでに取り組みを始めていたのですね。
伊藤 始めてはいたのですが、既存事業の一部を取り出して促進するだけでは、どうしても一過性のプロジェクトで終わってしまうんですよね。
始める目的も、「事業のコスト削減につながる」といった視点で設定されるので、根本的な社会課題の解決に結びつきにくいというジレンマがありました。
鈴木 具体的にはどんな取り組みをなさっていたのですか?
伊藤 たとえば、そごう西武という百貨店では、ビルにかける広告の懸垂幕を再利用してバッグを作るという取り組みをしていました。
渋谷の店舗だったので、渋谷のデザイン学校の学生さんにデザインを依頼しましてね。
そういった取り組みは積み上げてきたのですが、本気で永続的にやるには中心となるリーダーが中長期の視点で向き合わないといけないんですよね。
既存事業の中から掘り出した「1アクション2バリュー」を持続していった延長に、CSVがあると思っていますが、別の切り口のアプローチも同時並行で進めていくことで、より取り組みが促進されるのではないかと考えました。

より本質的なネクストステップに進むにはどうしたらいいのかと考え続けていたときに、ボーダレス・ジャパンという社会起業家を育成する会社があると知り、まず社員向けのご講演をお願いしたのがきっかけでしたね。
鈴木 見つけていただけて嬉しかったです。
伊藤 講演していただいた内容のインパクトは本当に大きくて、40以上のソーシャルビジネスを事業化しているというモデルに感銘を受けました。
グループ内でうまく連携する仕組みによって、ソーシャルインパクトを出しながら収益性も高めている。
「こんなことが実現できるのか」と驚くと同時に、「同じことをうちの会社でやるにはどうしたらいいのか?」と関心を持った社員は多かったようです。
鈴木 私も非常に話しやすかったです。
「これからはソーシャルビジネスが重要になる」と一貫した姿勢を見せ続けてきた伊藤常務というリーダーがいて、実際に試行錯誤しながら続けてきた取り組みがあり、その文脈の中で話をさせていただいたので、社員の方々の耳にもなじみやすかったのだと思います。

その後にすぐ、「ボーダレス・アカデミーのイントレプレナー版をやりましょう」という話をいただきました。
ボーダレス・アカデミーというのは、ボーダレス・ジャパンが2018年から始めた事業で、社会課題の解決に本気で取り組みたい人に対して、自信をもってスタートできるソーシャルビジネスプランをつくり上げるためのビジネススクールです。

普段は個人向けにやっているものですが、これをセブン&アイさん向けに企画してプロジェクトを立ち上げていただいたんですよね。
伊藤 はい。グループ内に広く公募する形で、ソーシャルビジネスのアイディアを募集しました。
正直、「果たしてどれくらい来るだろうか」と心配もあったのですが、ふたを開けてみれば26件も応募がありまして。それも、セブンイレブンやヨーカドーなど6社から。
中には東北中心に展開するスーパーマーケット「ヨークベニマル」の郡山本社の社員からの応募もありました。
「原発事故の風評被害で困っている地元の農家さんの力になりたい」と。若い社員ばかりかと思ったら、ベテラン社員も結構いて。
まさに案ずるより産むがやすしでした。しかし、ここからが本番でしたね。