
2022/02/01
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岩本 烏龍茶を重点開発していく理由の一つは、緑茶よりも製法がシンプルでエネルギー効率もよい形で生産ができるから。
もう一つは、これから世界のマーケットのマスになるのは烏龍茶だと確信があるからです。
入山 ちょっと意外です。なぜそう思うのですか?
岩本 世界の食のトレンドがどんどんヘルシー志向になり、低糖質・低脂肪の方向へと進んでいるという背景があります。
結果、食事で味わえるボディーや余韻が物足りなくなり、食事中に飲むお茶には刺激を補う意味で「香り」がより求められるようになっているんです。
これはいろいろなシェフと話をしながら得ている確信です。
入山 たしかに、お茶のトレンドは食文化の変化と密接に関わりますよね。
烏龍茶って、僕が子どもの頃に急速に浸透した記憶があって、あれは日本の食卓の多様化を反映したものだったのですね。
岩本 おっしゃる通りで、どの料理とも相性がよく、ペアリングできるという利点が烏龍茶にはありますね。
カフェイン抽出率も低く、うま味はほとんど出ませんが、それがかえって「香り高い白湯」のように飲める。「世界の常飲ドリンク」になれるポテンシャルが高いんです。
入山 うーん、面白い! ここまでの話を整理すると、今のTeaRoomの事業としては、日本のお茶の産地を承継するために工場を買収し、サプライチェーンを統合して商社機能も持って「お茶のSPA」を目指すということですね。
そこから先は、世界に対して自分たちで売っていくという計画ですか?
岩本 そうですね。グローバルでは、今はアメリカの大きな商社と協業していて、私も来月は現地に行く予定です。
アジア圏のスパイス・ハーブ類の輸出額で最大のBtoB商社と組んで、今後いろいろな展開を予定しています。
入山 僕は8年前までアメリカに住んでいたんですけれど、当時はティバーナ(Teavana)というお店でよくお茶を飲んでいました。あのお店とも関係がある商社ですかね?
岩本 あります。Teavanaは今はスターバックス・グループに入っていて、スタバで飲める「ゆずシトラスティー」「ほうじ茶ラテ」といったお茶系のメニューに使われていますね。

そういったアメリカのお茶需要のほぼすべてに関わっている商社との取引を当社も始めています。
入山 例えば、TeaRoomブランドとして全米で店舗展開していくイメージですか?
岩本 いえ、そのイメージは全くありません。プロダクトとして売るというより、消費につながる文化を一緒につくっていきたいと考えています。
先ほどまでお話ししていたSPAが“川上”の戦略だとすると、同時に“川下”、すなわち需要をつくっていく戦略も必要だと考えていまして。
入山 なるほど。詳しく聞かせてください。

岩本 「体験消費」と言いますか、文化を共にした消費スタイルを需要側でつくっていくことが重要だと考えています。
面白いエピソードが一つあって、20万円の宇治茶をアメリカに輸出させていただいている中で、「次は、20万円のお香が欲しい」とリクエストが来たんです。
これは大きな気づきでした。20万円のお茶を買う人は、20万円のお香を求める。つまり、「格」を合わせる消費行動。それをきっかけに茶器も買っていただけるようになったのですが、これこそ文化の力による需要だなと。
「日本のお茶の様式とは、こういうものです」と丁寧にプレゼンテーションをすると、素直に理解していただける。
入山 カルチャーを売ることで、結果として単価が上がるということですね。
岩本 はい。単なるプロダクト消費にとどまらず体験として売るビジネスモデルで海外には売っていこうと思っています。
入山 海外で体験型のマーケティング展開はしないんですか? 例えば、お茶の体験をしてもらって販売につなげるとか。
岩本 協業先が現地で展開する可能性はありますが、TeaRoom本体の戦略として海外で体験型のビジネスをやることは考えていないです。どちらかというと「内にこもる」戦略を選びます。
入山 へぇ、そうなんですね。その意図を知りたいです。
岩本 日本茶の体験は日本国内に来てもらって味わってもらうほうが、はるかに体験価値が高まるだろうと考えているんです。結果、より単価の高い消費につながるはずだと。

入山 なるほど。それ、かなり本質ですね。
たしかに、ワイナリーも自分たちがビストロを経営したり、販売店舗を持っていたりするわけじゃないですもんね。売るのはエノテカにお任せして。だから、店舗を握るかどうかについてはあまり気にしていないということですね。
岩本 気にしていないですね。僕たちの戦略としては、国内に体験型施設をどんどんつくっていく。特に、ニセコや京都、屋久島のような海外の富裕層が集まるスポットでアピールしていきたいです。
お茶をファストドリンクとして消化するのではなく、「ゆっくり心を休めたい」「深い文化体験をしたい」というニーズを満たすディスティネーションとして売っていきたいんです。
入山 僕、京都市の戦略アドバイザーなので、京都ならいくらでもおつなぎします(笑)。すごく面白い発想ですし、非常に納得しました。