
「育児は○○!」 先輩起業家の流儀に衝撃
構成/宮本恵理子 撮影/林 直幸
女性の起業家が増える中、会社を経営しながらの「いつ産むか」「どう育てるか」は新たなテーマとなっている。事例から「経営×子育て」のシナジー戦略を探るオムニバスシリーズ。シーズン1はYOUTRUST CEOの岩崎由夏さん。

――岩崎さんの子育てマインドに強く影響したという先輩起業家の助言とは?
助言をくださったのは、若手起業家からとても慕われている、とあるスタートアップ取締役の女性の方です。
妊娠が分かったとき、私はまだ「両立できないかも不安」の中にいて、夫の次に連絡したのがその方。「妊娠したのですが、ちゃんとやっていけるのでしょうか……」と弱気のメッセを送ったら、「ランチしよう」と誘ってくださって。
当時、彼女も第2子を妊娠中だったのですが、私の不安を聞きながら「大丈夫。なんとかなるよ」と励ましてくださいました。
そして飛び出した名言が「育児は外注!」(笑)。決して「子育てを丸投げしなさい」という意味ではなくて、「自分がやらなくてもいいことは、どんどん周りに頼っていい。しんどくなる前に力を借りまくりなさい」という教えです。
パートナーや親、友人、保育士さん……借りられる手は全部借りて、一人で抱え込まずにやっていくほうが子どももハッピーで楽しく過ごせるんだから、という言葉にすごく救われました。
――その言葉どおり、“周りを頼る子育て”を実践してきましたか?
はい、頼りまくりです(笑)。夫はもちろんですが、夫婦だけでは回らないときには神戸にいる私の両親、神奈川の夫の両親に交代で来てもらって助けてもらっています。
ありがたいことに、どちらの両親も私の事業を応援してくれていて「思いきり頑張ってね」と背中を押してくれるんです。それに、孫に会えることを楽しみにしてくれるようなので、親孝行にもなっているかなと都合よく解釈しています。

それから、保育園の先生方には感謝と尊敬の念しかありません。
私は本当に育児の知識が足りていないし、成長に合わせた対応も後手に回りがちなのですが、保育士さんが「そろそろ離乳食の準備が必要ですよー」とかタイムリーにタスクを教えてくださるので、すっかり頼り切っています。
ビジネスでもそうですが、経験豊富なプロの知見に勝るものはないです。乳幼児期の育児を熟知する保育士の方々のおかげで、息子は順調に育っています。
あと、育児と並行して抱え込みがちな家事についても、2週間に一度は家事代行サービスをお願いしています。定期的に家の中がきれいにリセットされるので、ストレスがたまりません。その前に、うちの場合は家事の9割は夫が担当してくれているのですが(笑)。

こうやって整理してみると、あらためて私は“周りを頼る子育て”を徹底していますね。根本的に、私が得意でもともと向いているスタイルなのだと思います。
――「もともと向いている」とは?
会社の経営でもそうなのですが、私の基本姿勢は「自分は完璧な人間ではなく、周りの人の力を借りないと何もできない」というスタンスなんです。
中学受験で偏差値上位校と呼ばれる私立に入ったけれど、周りの同級生の優秀さに圧倒されて落ちこぼれた経験が大きいと思います。多感な思春期にずっとコンプレックスを抱えてきたから、「私より優秀な人はたくさんいる」と疑わないし、起業をしたときも今も自分が何でもできるとはみじんも思わないです。
「日本の転職市場を根っこから変えたい! 信頼される人が報われる社会をつくるんだ!」と高い理想を掲げたところで、私一人の力だけでは到底実現できないと分かっている。自分よりはるかに優秀なメンバーを集めて、チームで成果を出すしかない。チームプレーがデフォルトなんですね。
だから「子育ても人の力を借りまくればいい」という考え方はスッと入ってきましたし、「だったら私にもできる!」と自信を持てたのだと思います。
――積極的に他力を頼る子育てを実践中とのことですが、「この部分だけは自分でやると決めている」というこだわりはありますか?
普通に子どもとめっちゃ遊んでますよ。週末はSlackも見ないようにして完全にオフに。コロナ禍で生まれた子なのであまり遠出の遊びには連れて行けていないのですが、近所の公園に出かけたり、家の中で遊んだり。
仕事をするときと家族と過ごすときとで、かなりメリハリをつけて生活しています。
これは子どものためというより、私自身が元気でいるために必要だと思って、意識的に楽しむようにしています。やっぱり子どもは可愛いし、一緒に過ごすだけでパワーをもらえるので。

つい先日、うちの株主でもある南場智子さん(DeNA創業者でデライト・ベンチャーズ マネージングパートナー)にZoomでみっちりお話しする機会をいただきました。
お話の最後に、南場さんがニコニコ笑って「岩崎は顔色が明るくて、元気そうでいいね! 起業家にとって、すごくいいことだよ。元気は利益!」とおっしゃってくださったんです。
「社長が元気でいることは利益につながるの。これ、マジだから」と。「元気は利益」なんて、マッキンゼー出身の超ロジカルな方が言うのかと驚きましたが(笑)、確かにそうかもなと思って。
社長が元気だと社員もポジティブに働けるし、応援してくださる方にも安心していただけますよね。会社が伸びていくためにも、まずは私が一人の人間として健やかに日常を過ごすことが大事。そのためにも本気で子育てを楽しもうって決めています。