
英語は好きなことから。プリキュア、YouTubeもOK
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
子どもの興味を無視しない
世界で活躍している起業家のインタビューを読むと、幼少期に受けた家庭教育には共通点があります。
子どもの頃から、本人の興味を伸ばし、探究できるよう、親がうまく導いているのです。Googleの共同創業者セルゲイ・ブリンやラリー・ペイジ、Amazon創設者のジェフ・ベゾスなどが典型です。
セルゲイ・ブリンの父親は数学教授で、母親はNASAの研究員。彼は幼い頃からコンピューターに囲まれていたので、自然と興味を持つようになりました。ラリー・ペイジの父親は計算機科学や人工知能の教授で母親もコンピューターサイエンスの先生でした。

ここで着目したいのは、2人とも「家庭の教育では何も強要されたことがない」と言っている点です。
さらにモンテッソーリ教育で子どもたちの主体性を尊重する教育を受けていることです。両親とも忙しくてなかなかかまってもらえないが、家にはパソコンがある。そして学校では主体性を育む教育があったのです。
親だからといって完璧な必要はありません。第4話で話したように食卓でビジョンを語り続けて、子どもが何かに興味を持ったときには伴走してあげればいいのです。
しかし、この「伴走する」ということが、何か高尚なことでないといけないと思っている人が多くいます。例えば、英語や数学の勉強ならいいけれども、プリキュアやYouTuberはダメだと決めつけていませんか?

ここで大事なことは、「プリキュアになりたい」「YouTuberになりたい」という子どもの興味を無視しないことです。「プリキュアなんてやってもしょうがない。大人社会では英語が大事だから、英語のほうが断然ワクワクするよ」と言うのは、子どもを無視していることにほかなりません。
つまり、子どもがプリキュアを好きならば、プリキュアから始めればいいのです。
子どもがプリキュアを好きならば、「なぜプリキュアに興味があるのか」を親がきちんと分析してみてください。ストーリーが好きなのか、衣装が好きなのか、キャラクターが好きなのか、歌やダンスが好きなのか……。子どもにとっての「好き」を、大人がもっと細かく言語化してあげてほしいのです。
そのためにも、もし子どもがYouTuberを好きならば、「好きなYouTuberは誰なのか」を知るためにも、一緒にYouTubeを見てみてはどうでしょうか。一緒に見ながら、字幕の入れ方やストーリー構成の巧みさに気づくかもしれませんし、子どもが映像を見るだけでなく、自分で作ってみようと思うかもしれません。
信頼がなければ子どもには届かない
親が伴走するメリットは他にもあります。子どもとの信頼関係ができるのです。
親子であっても大前提は信頼関係です。もちろん教師と生徒でも同じです。信頼関係がない中で、何かを働きかけても子どもは反応しません。どんなに素晴らしい指導者であっても、信頼関係がなければ子どもは学ばなくなってしまいます。
日本人は、この信頼関係を醸成するのが極めて下手です。これが、いびつな親子関係や教師・生徒関係が生まれる大きな原因になっています。その結果、子どもたちは大人のことを基本的に信用しなくなってしまっているのです。
興味関心を否定するところから始めてはいけません。その子がなぜそこに興味を持ちたくなったのかを単純に知りたいと思う気持ち、それが信頼関係のスタートであり、愛情です。
大人が「子どもに英語に興味を持ってもらいたい」というゴールを持つのは構いません。しかし、それを押し付けるのはNGです。
子どもがプリキュアを好きなら、プリキュアを一緒に理解して、一緒にエキサイトしましょう。まずはプリキュアから入って、そこから興味を少しずつ広げていけばいいのです。
プリキュアが世界への扉になるとき
日本のYouTuberの中で、子どもに圧倒的に人気があるのはヒカキンさんです。他の人気YouTuberでもフォロワー数は200万程度なのに対し、ヒカキンさんは1000万人を超えています。

なぜこれほどフォロワー数が多いのか。それは、ビートボックスで発信する海外向けの別チャンネルを持っているからです。「I’m Hikakin. Japanese beat boxer! Follow me」とメッセージを出して、海外ユーザーを惹きつけているのです。
プリキュアの衣装が好きなら、世界の様々な衣装やファッションを調べてみたらいいでしょう。そうして、「ファッションを勉強するなら海外がいい」と気づき、そこから英語を勉強し始めるかもしれません。
アニメが好きならば、日本のアニメだけでなく、他の国のアニメやストーリーも見てみると、新たな魅力に気づき、英語にも興味を持つかもしれません。
好きなことをきっかけにいろいろな体験をしたり、海外に旅行をしたりしながら世界観を広げていけば、プリキュア以外にも興味が自然と広がるはずです。そうしたプロセスを大事にしながら、本人のペースで焦らずに進めさせてあげられるかが、親の腕の見せどころです。
この話は英語だけに当てはまる話ではありません。子どもが興味を持ったことを伸ばしていく「成長マインドセット」を育てることにもつながります。つまり、新しいものに果敢にチャレンジするマインドセットです。逆に、英語のテストの結果ばかりに目を当てると、固定的なマインドセットが育ってしまいます。
この成長マインドセットと固定マインドセットの違いについては、次回から詳しくお話しします。