
親力トレーニング①:食卓でビジョンを語ろう
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
ビジョンを語るってカッコいい
第3話では親力の重要性を語りましたが、その出発点となるのが、学ぶ姿勢であり、ビジョンです。
あなたは親として、大人として、学び続ける姿勢やプロセスを子どもに見せられているでしょうか。ご家庭の食卓でどれだけビジョンを語れているでしょうか。
子どもたちが、「あ、学習ってこうやっていくんだ」「大人になってもビジョンを語る姿って格好いいな」と思える姿を見せているでしょうか?

ビジョンを語るのは、日本だと“意識高い系の少し気恥ずかしいもの”と受け止められがちです。
しかし、スタンフォード大学では、そこら中で皆がビジョンを語りに語っていました。授業の自己紹介でも、「こんな課題意識を持っていてこんなことに取り組んでいます」と自信を持って語ります。いわば、“ビジョン競争”が毎日繰り広げられているのです。
どんなビジョンでも構いません。壮大なビジョンでなくても、自分が仕事の中で感じているワクワク感やチャレンジを日頃の食卓で話すと、「目標に対して頑張ることへの魅力」を子どもに感じてもらえるはずです。
ビジョンをしっかりと描き、その姿を見せる。これが1つ目の親力トレーニングです。
夫婦アラインメントのススメ
さらにこうしたビジョンや方向性は、夫婦間できちんとすり合わせることが重要です。
中学受験でも「私は子どもの将来を考えてこんなに勉強を見たり、お弁当を作ったりしているのに、夫は全然理解してくれない」というような、夫婦間の教育方針や意識のズレをよく耳にします。
他に、夫が英語教育を早期からやりたいと思っていても、妻は「外国語なんて日本語もできる前からやっても意味がない」と、真っ向から対立してしまうこともあるでしょう。
しかし、夫婦の方向性が統一されていないと、子どもは両親のダブルスタンダードに挟まれてしまいます。
また、方向性は一致している夫婦でも、「なんかこうしたいよね」と漠然と思っているだけで、何も踏み出せずに終わることもあります。
人は忘却の生き物です。「こうしたい」という思いが浮かんだなら、早いうちにそれを実行する計画へと落とし込まなければなりません。
日常に流されて、ビジョンが未実行に終わらないためにも、夫婦間でその思いを言語化する機会を意識的に作りましょう。
これを僕は「夫婦アラインメント」と呼んでいます。
マーケティングとセールスに相違がないように、連携や整合性を取ることをアラインメントといいますが、夫婦にだってアラインメントが必要なのです。
僕自身も、夫婦会議を週に1回程度行っています。かしこまったものである必要はありませんが、曖昧に流れて終わらないように互いにグーグルカレンダーに日程を入れています。
おすすめは『世帯経営ノート』
夫婦アラインメントのために、僕が最近使っているのは「世帯経営ノート」です。
これは、家事、子育て、仕事、お金、住まいから自由時間や家族関係まで、質問に答えながら埋めていくことができるノートです。


ノートを通じて、出会いの記憶や結婚前の記憶、子どもを妊娠時の記憶、出産時の記憶、家事分担や子育ての方針などの価値観をチェックできます。
このワークをやり始めると、意外とパートナーの知らない一面があることに気づきます。幼少の頃の体験などをお互い話すと、互いの育った教育環境や価値観が明らかになり、楽しいです。

こうしたツールを使うかは自由ですが、家庭内の重要な大黒柱2人がアラインできるように意識的に夫婦間で話して、価値観をすり合わせることをお勧めします。
本連載のテーマである英語教育や進学に関して何より大事なのは、夫婦のビジョンが一致していることであり、それを子どもが納得できるように話していることです。「俺は海外がいいと思うから海外へ行かせよう」とか「子どもの教育はお前に任せるよ」ではダメなのです。それでは、子どもが一番困ってしまいます。
ここで強調しておきたいことは、夫婦でアラインした教育方針を、子どもの教育方針として確定させてはいけないということです。あくまで主役は子どもです。子どもとしっかり対話をして、主体性を引き出していくことが何よりも大切なのです。
子どもとの対話を始める前に、夫婦としてアラインメントをつくる。そしてそれを子どもにビジョンとしてきちんと見せていく。それが、大人と子どもの信頼関係の基盤になっていくはずです。
家庭の空間全てを学びに
繰り返しになりますが、食卓でどんどんビジョンを語ってください。大きな話でなくても構いません。今何を学んでいるのか。どんなチャレンジをしているのか。なぜそれにのめり込んでいるのか……。熱苦しく語らなくてもいいので、食時のテーブルトークとして話をしてみてください。

子どもが相手でなくても構いません。子どもに語ると上から目線の重苦しい感じになりがちなので、夫婦の会話でもいいのです。夫婦の会話を子どもが程よい距離間で聞いていると、そのうち興味を持ったり質問してきたりするかもしれません。
とにかく空間全てが学びになる。そんな環境を育てる親力を持ってほしいと思います。コロナ禍でテレワークになって家で仕事をしているのであれば、「働くって楽しい」という姿を子どもに見せられるだけでも、ポジティブな印象を子どもに与えられるようになるでしょう。
今回は、家庭でビジョンを語る重要性について語りました。それでは、親としてどんな姿を見せていけばいいのか、次回はその問いに答えていきます。