
日本vs.世界。年収格差は2倍以上へ
構成/岩辺みどり 撮影/林 直幸
英語圏の名門大学に進学するには、小中学時代からの準備が欠かせない。自らハーバード、スタンフォードで学んだ、起業家の松田氏が創る「海外進学の決定版ガイドブック」
平均年収3000万円の米国トップ企業
第1話では、テクノロジーがもたらす「時代の波」について語りました。
もう一つの大波が、年収格差の波。言うならば、グローバルレベルの経済格差の波です。
前回、過去30年間に世界時価総額ランキングのトップ15から日本が消えたことに触れましたが、日本は米国企業や中国企業だけに負けたわけではありません。
多くの国や企業は、テクノロジーの活用によって生産性を高めて、経済を大きく成長させました。その中で日本だけは、実質賃金が20年前と比較しても減少しています。主要先進国の中でも、唯一、賃金が下がった国になってしまったのです。

もちろんお金だけが豊かさの指標ではありません。
しかし、グローバル企業の平均年収は賞与込みで3000万円を超えていると聞いたらどうでしょう? 日本では高収入と言われる商社や大手メディアでも、平均年収は1500万円程度です。しかもその水準はほとんど上昇していません。海外トップ企業との年収格差がどんどん開いているのです。

私がさらに深刻だと思っているのは、保有しているスキルが同じにもかかわらず対価に差が出てしまうことです。
エンジニアを例に挙げると、Scala、Python、Ruby、Java、C言語などのプログラミング言語を使える場合、アメリカで働くのか日本で働くのかによって年収が倍くらい異なります。プログラミングは世界共通言語であり、母国語はそこまで関係しません。
つまり、エンジニアの立場で考えると、「同じ言語やスキルがあるのに、日米で平均年収が倍も違うのであれば、米国で働いた方がいい」となるのです。エンジニアのようにリモートワークがやりやすい職種であればなおさらです。
つまり、シンプルに考えると、日本で働くよりも米国で働いた方が高い給料が得られる。であれば、米国で働けるように、大学から海外進学をした方がいいということになるのです。
ROIの高い「子どもへの投資」
「そうは言うけれども、海外進学にはお金がかかりすぎて現実的ではない」
そう反論する親も多いでしょう。実際、海外進学の話をすると、最初に出る悩みは学費の高さです。
確かに、学費は日本の大学に通うよりははるかに高い。多くの大学では奨学金が出ますが、奨学金が得られないと、生活費と学費で1年間に800万〜900万円もかかります。大学4年間で合計すると、3500万円前後になります。
でも、考えてみてください。
プログラマーの平均年収は、日本とアメリカで年間約600万円も違います。人生100年時代と言われますが、単純計算でも大学卒業後に働く年数は50年、もしくはそれ以上あります。
すると、単純計算で生涯年収では「600万円×50年=3億円」の差が生じかねません。今の流れが続けば、日米の年収格差がもっと広がってもおかしくありません。
3500万円という学費を5、6年で回収できると考えれば、ROI(投資利益率)は非常に高い。すなわち、3500万円を投資して3億円以上のリターンを得られる可能性があるということです。
教育をグローバルな視点、投資という視点で捉えると、このままではいけないことがよく分かります。
日本人は、目先のコストで考える人も多いですが、教育への投資は単年度で考えるべきではありません。いかにファクトに基づいて教育を長期的な投資として考えられるかが、今後の大きな差を生むことになるのです。
100億人マーケットで勝負するために
もう一つ、子どもの将来を考える上でポイントになるのは、日本の人口減少です。
日本の人口は現在約1億2000万人ですが、2060年には9000万人を割り込むと予測されています。高齢化率は現在の30%くらいから40%くらいに上がっていきます。
しかもこれはコロナ前の総務省の人口統計予測です。年間103万人くらいだった子どもの出生数も、コロナ禍の2021年は年間80万人程度にまで落ち込んでいます。少子化がさらに加速する可能性もあります。

こうした中で、20年、30年後に現在の生活水準を保てるでしょうか?
お金だけで豊かさは測るることができないとはいえ、世界との年収格差を無視できるでしょうか?
人口減少で国内市場が縮小していくマーケットに誰が投資しようと思うでしょうか?
投資が減れば、イノベーションが起こりにくくなり、成長力がさらに低下して、市場が縮小していく。日本はそうした縮小スパイラルに陥る危険性があるのです。
僕は生活の拠点を東京とニューヨークの双方に持っています。ニューヨークが理想的な世界だとは思っていませんが、アメリカから発信したほうが圧倒的にグローバルマーケットにアピールできます。
1億2000万人のマーケットで勝負するのか、現在75億人、さらに100億人と増えていくグローバルマーケットで勝負していくのか? 世界で勝負する選択肢があるか否かによって、人生は大きく変わるのです。
勘違いしないでほしいですが、私は「日本を見捨ててほしいと」言っているわけではありません。
しかし、国内の教育だけを受け、国内しか見ていなかったら、仕方なく日本に残って国や政府に依存する人生になりかねません。
圧倒的に成長できる環境、チャレンジできる環境にアクセスする選択肢があるのであれば、それをつかめるように子どもを誘うことが大切ではないでしょうか?
しかも、これからは人生100年時代です。医療が進歩すれば130年時代、150年時代もあり得ます。そんな時代において、制約条件がある日本だけで長い人生を過ごしたいですか。
こうした不都合な未来を知れば知るほど、今の学校教育に対して疑問が湧いてくるはずです。今の学校教育を受けていて、子どもがグローバルマーケットで人生やキャリアを切り開いていけるのだろうかと。
それでは、子どもが広い選択肢を得られるように、親はどのように教育をリードしていけばいいのでしょうか? まず変わるべきは、子どもではなく、親です。次回からは、「親力」の重要性について語っていきます。