
スタートアップが「成長を仕組み化」するためのカギ
聞き手/佐々木紀彦 撮影/林 直幸
「オセロの4隅×金融」を押さえよ
――4年近くの苦闘の後の2年間で、「成長の仕組み化のカギ」をつかんだそうですが、それは何ですか?
それは「商流を突破していく」ということです。
――それはどういう意味ですか?
やっぱり「良いものを作っていれば、使ってもらえる」ということはたぶんないと思うんです。

例えば、「お~いお茶」が日本で一番おいしいお茶かどうかは分からない。でも、目の前に置いてあって信頼できるブランドだからこそ、みんなに買ってもらえるわけです。
僕らもそうだったんですが、スタートアップは、良いプロダクトを作ろうということに集中しすぎて、商流の部分を多少軽視しているところがあると思うんです。
例えて言うならば、僕がオフィスの施主だとして、この部屋のライトはパナソニックのものですが、私が選んだわけではありません。オフィスにトイレも必ずありますが、TOTOとLIXIL以外は見たことないですよね。これも勝手に決まってしまいます。

防犯カメラも同じように、お客さんが選ぶわけではないですよね。お客さんがカメラが欲しいと思ったときに、最初に声をかけるのが誰なのかが大事なんです。
それをオセロの四隅に見立てて、「オセロの四隅×金融」を押さえようと社内では言っています。

防犯カメラの場合、警備会社、カメラメーカー、通信会社、設備会社が4隅です。だからこそセーフィーは、セコム(警備会社)、キヤノングループ(カメラメーカー)、NTTグループ(通信会社)と提携しているんです。
4つ目の設備会社の隅も押さえるためにも、今後は、ディベロッパー、ゼネコンなどとのパートナーシップを強化したいと思っています。
そしてモノを大量に出していくためにも、金融機能が大事になります。だからこそ、リースナンバーワンのオリックスと組んでいるのです。
基本は「無敵の三方よし商売」
――見事な戦略ですね。組む側のメリットは何でしょうか?
商流のパートナーのみなさんも、もうかってなんぼの世界ですが、我々は価格破壊をして商流を突破したので、お渡しできる粗利は限られます。
すると、他に我々が渡せるものはエクイティになります。だからこそパートナーの皆さんと資本業務提携を結んで、出資してもらう代わりに各社から出向者をどんどん送ってもらうんです。
そうして会社の枠を超えた仲間を作って、仲間とともにプロダクトをもう一回作り直して送り出していく。それをひたすらやっています。このプロダクトマーケットフィットの基本サイクルを「無敵の三方よし商売」と呼んでいます。

具体的なサイクルとしては、「創って、作って、造って、売る」という4段階があります。
まずは、プロダクトアウトでサービスを「創る」。
次に、徹底的に顧客フォーカスして、お客さんのジョブ解決に役立つところまで磨き込んで、お金を払ってもらえるプロダクトを「作る」。
例えば、建設なら鹿島建設、小売ならファストファッション大手メーカーと一緒に手触り感のあるところまで一緒に作り込んでいく。
その上で、パートナーと一緒にもうかる仕組みを「造る」。パートナーといっても、売る人だけでなく、工事をする人、AIを作る人、物流を作る人、アプリケーションを一緒に開発する人といった、あらゆるパートナーを含みます。そうしたあらゆるパートナーがもうかる仕組みを「造る」のです。
そうすると、パートナーのみなさんが進んでプロダクトを「売る」という流れができます。
そうしてパートナーとお客さんからどんどんフィードバックをもらいながら、このサイクルをとにかく超高速で回すのが、PMFの一番のポイントだと思っています。
――いたずらに敵を作らずに、「敵も味方にしていく」というのもポイントですね。
そうです。
例えば、技術を自社に囲い込むのではなく、キヤノングループにも我々のファームウェアを渡すことで、そのOSを基にサービスが立ち上がるようにしています。キヤノンと競り合うのではなく、仲間にしていくことで、マーケットシェアを上げていく戦略です。現在のシェアは50%ぐらいまで上がっています。

販売においても、日本のSaaSスタートアップは直販が多いですが、我々は、全体の6割をパートナーに売ってもらっています。我々が最初に、超トップ企業と小さい個人の両極で販売事例を確立してしまえば、その間にある大きなマーケットは攻略しやすくなります。そこをパートナーに売ってもらうのです。
――そうした大人のプレーができるスタートアップは珍しいですよね。
それが大人だと言われると確かにそうかもしれないですが、結局は、わらしべ長者的な話ですね。
我々は自分たちで工事部隊を持とうと思っても持てない。売ろうと思っても離島の銀行まで売りに行けない。自分たちでできないからこそ、弱者の戦略を立てたんです。弱者だけれども、クラウドでビデオストリーミングしたり、ハードウェア制御できるOSは作れたりはする。
そうした強みに特化して、パートナーが協力したくなるようなプロダクトを作ることに集中しているんです。