
2022/02/01
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――この連載では、組織作りのプロたちに、「組織の普遍的な法則」、いわば、「組織のサイエンス」について聞いていきたいと思っています。
麻野さんは、リンクアンドモチベーションで10年以上、組織コンサルを行い、モチベーションクラウドという組織診断のクラウドサービスを生み出しました。そして今は、起業家として自らの組織を作っています。その経験を踏まえて聞きたいのですが、組織はサイエンスできるのでしょうか?
僕は、ある程度のところまでは組織もサイエンスできる、つまり、普遍的な理論で捉えられるのではないかと考えています。
特に、どういう組織を作っていくべきかという理想や、組織においてどんなことが起こるのかという課題は、おおむね3つのファクターで定まってきます。
まず「組織ステージ」、そして「事業モデル」、最後に「経営者タイプ」です。
この3つを考慮して構築された組織は健全に運営できるし、逆にこれらをないがしろにすれば、健全な組織は作れないのではないかと思います。
1つ目の「組織ステージ」について説明しましょう。
“10人の壁”、“30人の壁”、“100人の壁”などという表現があるように、どのような組織でも、それが置かれている段階によって共通した課題が生じます。そしてこれを理解していれば、そのような問題を高確率で回避できます。
“10人”、“30人”、“100人”というのは非常に良くできたチェックポイントで、実際、組織がおおよそその3つの大きさになった時に、ストラクチャーが変化します。そして、それぞれに固有の対処法があるわけです。
――その3つの壁を乗り越える具体的な方法については、連載の第2話以降で聞いていきますね。2つ目の「事業モデル」とはどういう意味ですか?
「事業モデル」については、その企業が持つ「価値の源泉」を踏まえることが重要です。
その会社の仕組みに価値がある場合は、「オペレーション型」の組織を作っていかないといけないですし、一方で人に価値がある場合は、「プロフェッショナル型」の組織を築く必要があります。この2つでも、全然違います。
世の中にはびこっている「良くない組織の作り方」の典型は、有名企業の猿マネです。
Googleがこんなことをやっているから、スターバックスではこれをやっているから、などの施策だけを自分の会社に当てはめる、というものがあります。これは一番失敗しやすいパターンだと思います。

――『How Google Works』なんかをそのまま適用するのは危ないということですね。
そうです。
現状の組織人事の領域における非常に大きな問題の一つが、“事業の議論を全くすることなく組織の議論をする”というケースの多さです。
本当に重要なのは、事業モデルと組織がリンクしているということです。「オペレーション型」の事業をやっていながら、「プロフェッショナル型」の企業の施策をまねしようとしたり、その逆をしようとしたりする場合がたくさんあります。
スタートアップ界隈での失敗の多くは、このようなケースにあたります。
――「プロフェッショナル型」組織というのは、コンサルティングファームなんかが典型でしょうか。
はい、その通りです。
――「オペレーション型」というのは、製造業が典型的でしょうか。SaaSモデルのスタートアップの場合、どちらになるのでしょうか。
SaaSは、「オペレーション型」組織と「プロフェッショナル型」組織との間くらいですね。少しだけ、「プロフェッショナル型」寄りかもしれません。
――では、同じエンジニアに関する制度でも、会社の事業モデルによって「プロフェッショナル型」にした方が良かったり、「オペレーション型」にした方が良かったり、ということがあるんですね。
まさにその通りです。
一般論ですが、Eコマースは「オペレーション型」になりやすい。会社のバリューを見ても「仕組み化」などをうたっている会社が多い。
――Amazonもそれに近そうですね。
そうかもしれないですね。

――逆にPIVOTみたいなコンテンツカンパニーは、典型的な「プロフェッショナル型」でしょうか?
コンテンツを作る側の組織は、完全に「プロフェッショナル型」だと思います。
――第3のファクターである「経営者タイプ」について教えてください。
すごく分かりやすく言うと、ソニーとパナソニックは、元々やっていたビジネスの「事業モデル」はかなり似通っていますが、組織の雰囲気は違いますよね。
それはやっぱり、「経営者タイプ」に影響を受けた結果だと思うんですよね。
実は、私自身の実体験に基づく好例もあります。
ソーシャルゲームを展開する会社とEコマースを展開する会社を、同時期にコンサルしていたことがありました。当時は両社とも、国内でもトップクラスの成長率を誇る企業だったのですが、組織という観点からは全く違ったんですよ。
例えば、僕がそのEコマースの受付で経営者を待っていたら、僕のことを知らない社員の方がみんな笑顔で挨拶してくれるんですよ。でもミーティングが始まったら、経営者の発言が多く、他の社員の方はあまり意見をおっしゃらないんですよ。
一方のソーシャルゲームの会社では、挨拶は特にありませんでした。でも、ミーティングが始まると、経営者に対してもみんなが意見を言っている。そして、そういうふうに全然異なる組織を持っている企業が、両方とも成功していたわけです。
これを紐解いていくと、2つのファクターが見えてきます。
一つは先ほど説明した「事業モデル」です。
Eコマース企業は事業のモデルが、少数の人が仕組みを作って多数の人がそれを動かす「オペレーション型」なんですよね。
でも、ソーシャルゲームの事業などでは、オペレーションの発生する部分が非常に少ない。ゲームプロデューサーやエンジニアが、プロフェッショナルの立場で作るという感じなんです。
意思決定プロセスがトップダウンなのかフラットなのか、あるいは、情熱と論理のどちらを大切にするか、などといったところで、やっぱりカラーが変わってくるんですよね。
ただそれだけではなくて、組織内のいろいろな判断というのは、つまるところトップが下すことが多いんですよね。そこで人間の“好み”が現れるのだと思います。
もしも佐々木さんが組織を作るとなった場合、「事業モデル」との整合性も大事ですが、佐々木さんのキャラクターに合うかというのも同じくらい大事です。
もしかしたらパナソニックとソニーの違いは、松下幸之助さんと井深大さんのキャラクターの違いによるものだったかもしれません。
だから、スタートアップが良い組織を作ろうと思ったら、やっぱり経営者自身が自分のキャラクターを理解しておくことが重要になってきます。
――第2話では、スタートアップが最初にぶつかる「10人の壁」の典型症状と、その乗り越え方について話を聞かせてください。